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人気音楽ユニット「Def Tech(デフテック)」のMicroとして活動する西宮佑騎さんが、麻薬取締法違反(所持)の疑いで、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部に現行犯逮捕された。

報道によると、麻薬取締部は2月2日、東京都渋谷区にある西宮さんの自宅を家宅捜索し、乾燥大麻を発見したという。Def Techの公式サイトによると、2月8日に日本武道館で予定していたライブは、逮捕を受けて中止すると発表された。

麻薬取締部は通称「マトリ」と呼ばれる。最近では、不起訴処分となったが、俳優の米倉涼子さんについても捜査し、書類送検したとの報道があった。

そもそも、警察官ではない厚生労働省の職員が、なぜ家宅捜索や逮捕といった強制的な捜査をおこなうことができるのか。マトリの仕事内容や警察との違いについて、澤井康生弁護士に聞いた。

●約300人、おとり捜査が認められている

──麻薬取締部、通称「マトリ」はどのような組織なのでしょうか。

マトリは厚生労働省の職員(国家公務員)で、地方厚生局に設置された麻薬取締部に所属しています。定員は約300人です。

小型武器の携帯が認められており(麻薬及び向精神薬取締法54条7項)、拳銃や特殊警棒を所持することができます。

特筆すべき点は、法律上、おとり捜査が明文で認められていることです。

マトリは、厚生労働大臣の許可を得て、違法に流通している薬物(麻薬やあへん)を譲り受けることができます(麻薬及び向精神薬取締法58条/あへん法45条)。

つまり、自らが薬物の買受人、いわゆる「おとり」となって売人を検挙することができるのです。

これに対し、警察には、薬物犯罪について、おとり捜査を明文で認めた規定はありません。

●マトリは海上保安官などと同じ「特別司法警察職員」

──マトリはなぜ事件を捜査したり、被疑者を逮捕したりできるのでしょうか。

マトリの根拠法は「麻薬及び向精神薬取締法」です。

同法54条には、一定の薬物犯罪(大麻、麻薬、あへん、覚せい剤等)の捜査について、刑事訴訟法の規定により司法警察員として職務をおこなうことができる旨の規定が定められています。

マトリはいわゆる特別司法警察職員(刑事訴訟法190条)に該当します。

一般司法警察職員(警察官)とは異なり、特定の法律違反についてのみ犯罪捜査をおこなう権限を持つ捜査官です。マトリのほか、自衛隊警務官や海上保安官などが挙げられます。

したがって、マトリは一定の薬物犯罪について、司法警察職員として任意捜査をおこなうほか、家宅捜索や逮捕といった強制捜査を実施することもできるのです。

●マトリの「おとり捜査」協力者を警察が検挙したことも

──警察が捜査する麻薬事件と、マトリが捜査する事件に違いや棲み分けはあるのでしょうか。

警察とマトリは、基本的には別の組織ですが、必要に応じて協力し、合同捜査をおこなうこともあります。

ただし、警察とマトリの間に、法的な棲み分けがあるわけではありません。

また、常に日常的に情報共有がおこなわれているわけでもないため、同一の対象を別々に捜査していたという事態も起こりえます。

過去の裁判例では、マトリのおとり捜査に協力していた人物を、都道府県警察が別件で検挙した事例もありました(大阪地裁平成29年4月12日判決)。

【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/