フリーアナウンサー・神田愛花『年末年始のドイツ&ルクセンブルク旅行 〜ナメんなよ!編〜』

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初めてのドイツ&ルクセンブルク

毎年、年末年始は母と二人旅をしている。これまで二人で年越しを迎えた地は、アメリカのニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルス・フォートワース、イギリスのロンドン、そしてオランダのアムステルダムだ。それぞれカウントダウンイベントの規模や人々の盛り上がり方に違いがあり、知見を広げる貴重な経験になってきた。「さて、今回はどこにする?」という私の問いに、母から「長距離移動が辛くなる前に、まだ行ったことのない出来るだけ遠くの国に行きたい」「電車旅も入れてほしい」という二つのリクエストが返ってきた。

う〜ん、と地球儀と睨めっこ。電車旅を組み込むならヨーロッパだろう。ドイツはまだ行ったことがないようだし、フランクフルトには私が大好きなJALの直行便が飛んでいる。ということで今回の旅の起点はフランクフルトに決定。そこから電車で移動するなら、首都ベルリンやミュンヘンがワクワクする。だが、冬の様子をネット検索すると、両都市ともそこそこ雪が降り積もるようだった。

母は現在75歳。旅慣れているが雪には慣れていない。万が一、現地で転んで骨折でもしたら大変なので、ドイツでの滞在地はフランクフルトだけにし、隣国に目を向けた。ドイツと接している国でまだ母が行ったことがないのはポーランド、デンマーク、ルクセンブルク。ポーランドの首都ワルシャワまでは、電車で約11時間。デンマークのコペンハーゲンまでは約9時間かかる。帰りもフランクフルト空港から発つので往復にはその倍の時間が……と考えると気が引けた。

残るはルクセンブルク。調べると、雪もそんなに降らないようだし、移動も片道約5時間で済むことが判明。「ここだ!」と″街の中心にある橋の上から花火が見られる″というルクセンブルクで年越しをすることにした。フランクフルトに4泊、ルクセンブルクに2泊という旅程だ。

14時間のフライトを経て、母娘揃って人生初のドイツに降り立った。空港から電車に乗り、フランクフルト中央駅に到着すると早速、面食らうほど感動した。ヨーロッパの駅はどこも歴史を感じさせる造りで美しいが、この駅はそれに加えて驚くほど大きく、深い威厳があり、大変な迫力だったのだ。パリのリヨン駅のような繊細で煌(きら)びやかな華やかさとは真逆の、無骨で力強さが生み出す重たい華といった感じ。思わず「うぉ〜」と声が出て、ぐるーっと一周見渡した。

そして、想像以上の凍てつく寒さの中、ホテルまで歩いて向かった。今回のホテルは、母が一緒なのでかなり奮発。各国のスターや要人が宿泊したという、現地でとても有名なホテルにした。

正しい言葉よりも気合が大事

チェックイン時、英語圏であれば「もっと上層階のお部屋は空いてない?」「窓の前に建物が隣接していないお部屋にして」「母が音に敏感だからエレベーターから遠いお部屋にして」とリクエストを出しまくるが、ここはドイツ。私の下手な英語は通じないし、ドイツ語なんてもっと話せない。鍵を渡されるがままチェックインした。

すると、窓が磨(す)りガラスになっている、2階の眺望ゼロのお部屋に通された。(え? 何故?)このホテルの中でもランクが上の方の部屋を予約していたのに。(どういうこと!!)と、お腹の底から怒りが込み上げてきた。そして「お母さん! 荷物を持ち直して! フロントに戻るよ!」と、鼻息荒くフロントへ。もう、(通じなくてもいいから私の話を聞け!)だ。先ほど対応した若いイケメンフロント担当に、お部屋のカードキーを強めに返却し、「ディスルーム! スモークガラス! ノー! ルームチェンジプリーズ!」と言った。そして無事、6階(8階建て)の透明な窓ガラスのお部屋をゲットした。

駅の感動なんてどこへやら。その夜は悔しくて眠れなかった。これまで、海外でのチェックイン時に様々な経験をし、対面でしっかりリクエストを伝えないとこういうことが起きると、散々学んできたはず。それなのに、言葉が通じないからと少しでも弱気になった己が情けない。(私は一体何をしてるんだ!)と自分を責めた。そして明日から過ごすドイツに対し、(マジでナメんなよ!)と心の中で宣戦布告。朝方4時頃にようやく1時間だけ眠り、本格的にドイツ&ルクセンブルク旅行がスタートしたのであった。

かんだ・あいか:1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中

『FRIDAY』2026年2月13日号より

イラスト・文:神田愛花