胗俊太郎が強烈な“ショボい男”に 『冬のなんかさ、春のなんかね』が見つめる“過去の恋愛”
2月4日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第4話は、文菜(杉咲花)のトーク&サイン会に、彼女が小説を書くきっかけとなった人物――大学時代の元恋人である小林二胡(胗俊太郎)がひょっこりと現れる。文菜がトークイベントで口にした“ショボい男”というフレーズを自ら名乗っておどけてみたり、どこか飄々として掴みどころのない雰囲気の二胡。現在の文菜の恋人であるゆきお(成田凌)だったり、曖昧な関係の先輩小説家・山田(内堀太郎)とも似たところがあり、要するに文菜の男の趣味は一貫しているのだろう。
参考:細田佳央太、『冬のなんかさ、春のなんかね』出演 杉咲花の大学3年生時代の元恋人役に
それはそうと、交際当時から小説家として活動していた二胡は、いまや売れっ子作家となっている。彼と軽くお酒を酌み交わしながら、別に喜ぶわけでもなく再会のひとときを淡々と過ごす文菜。帰り道に彼女が、夜も開いている本屋で二胡の新作を手に取るところから、物語は2019年10月――文菜が二胡と出会った大学時代へと遡ることとなる。エンちゃん(野内まる)に連れられて行ったにぎやかなクラブで、小説を読んでいた二胡を見かけ、彼が小説家であると知り、作品の掲載誌を見つけ、そして大学の先輩(留年して同学年だが)であると知る。
自らの“恋愛”について思案を続ける文菜の過去に触れる物語が展開するという意味では、前回のエピソードと共通しているかもしれない。前回は、彼女が富山に帰郷し、高校時代に付き合っていた柴咲(倉悠貴)と別れるに至ったできごとが、友人たちや柴咲本人と共有する思い出話として描かれていた。あくまでも現代の時間軸から動くことなく、会話の種として。それはあたかも現在の文菜自身にコミットしているように見えて、実際のところはほとんど無風であったのだが。
しかし今回の場合、高校時代よりも現在に近いできごとである大学時代の恋愛が、時間軸を遡った“回想シーン”として綴られていく。描かれ方としては、こちらのほうが完全なる過去に見えなくもない。現在の時間軸において文菜は、ゆきおの家のソファで二胡の新作をずっと読んでいるだけ。しかも思い起こされるのは、二胡との出会いから恋人になるまでの流れと別れの時――すなわち彼との恋愛の“はじまり”と“終わり”だけ。それでもこの回想の一連は、単に思い出に耽るでもなく、二胡と出会い交際し別れたという事実のみをもって、如実に現在の文菜自身に強く結びついていることが窺える。
2人が出会った時に話す、「好きだから自分で作ろうとする人と、好きだから自分では作ろうとしない人」の違い。おもしろい小説を互いに教え合ったり、お互いにまだ読んでいない本を選んでクリスマスに贈り合ったり(しかもそこで2人は、町田康の『告白』で一致する)。このどことなく『花束みたいな恋をした』の主人公たちを想起させるやり取りと、二胡から突きつけられたなんとも身勝手な別れの理由だけが、文菜のなかで彼との記憶として定着しているのであろう。
あの頃、二胡が書いた小説に惹かれた文菜が、現在の二胡が書く小説にはまったく心が動かされない。その反面、“ショボい男”のショボさをとことん煮詰めたような別れの理由が、当時よりも理解できるようになっている。たった数年で文菜も変わり、二胡も変わったけれど、結局のところ、2人はすれ違う関係でしかない。それは前回の柴咲と同じかもしれない。過去の恋愛というのは、現在の自分自身を作りだす要素のひとつであるが、その相手自体もそうとは限らないのだ。
(文=久保田和馬)
