60代、パリ暮らしで変わった「服選びのルール」。衣替えはせず、プチプラ服より一生ものを選ぶ
夏でもコートを準備し、服の衝動買いは決してしない…日本とフランスで異なる「服の選び方」は、スタイリスト兼コーディネーター・鈴木ひろこさん(60代)のおしゃれ観に大きく影響を与えたそう。“チャコさん”こと鈴木さんが30年のパリ暮らしで培った、上品かつ自由なファッションスタイルを紹介します。
※ この記事は『パリが教えてくれた私らしいおしゃれ』(宝島社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております

衣替えをしない

最近は世界じゅうの気候がずいぶんと変わってきています。それでもやっぱり日本には、日本ならではの四季折々の装いとか、季節感を大事にする風習は残っていますよね。パリにいると、それが感じられないのが寂しいところ。
1年をとおして湿度が低いので、東京とは比べられませんが、パリはお天気が読みづらい傾向があるのです。たとえば、初夏のような陽気が続いて、ようやく春になったと思った途端に冬に逆戻りして、4月なのに冬のコートを着て出かけることがあったり。日本人的にはリネンは夏の素材だけど、こちらでは真冬にリネンを着る人もいる。
情緒がないと感じる半面、季節やルールに縛られず、他人の目を気にしない自由なところが、パリらしさでもあると思います。そういう気候と思考の土地に暮らしていて、いわゆる衣替えというものをしなくなりました。
●季節にとらわれず、着たいものを着るようになった
クローゼットには夏でも、トレンチやステンカラーコートをはじめ、少し厚手のアウターやレザージャケットは、いつでもスタンバイ状態です。季節にとらわれず、その日の気温に合わせて、着たいものを着るようになったのは、パリに来てからですね。
ただし、いくら自由とはいえ、だらしなく見えることは避けたい。きちんとアイロンをかけて、ぱりっと真面目な装いがしたいわけではなく、清潔感や品のよさはキープしつつ、ほどよくこなれたカジュアルを目指したいと、いつも思っています。
ファストファッションに走らない

5000円のシャツを10枚買うなら、5万円のシャツを1枚買って、大切に着続けたい。パリに長く暮らすなかで学んだこと。私のおしゃれの心得のひとつです。
こう考えるようになったのは、以前、取材でマリー=フランス・コーエンさんにお会いしたのがきっかけ。子ども服の「ボンポワン」や、コンセプトストア「メルシー」を立ち上げた方なのですが、彼女が「本当によいものを持ちなさい、私は祖母からそう教えられました」と話した言葉が、強く心に響いたんです。
●フランス人は納得のいくものだけを手に入れる
私はごく普通の家庭で育ちましたが、思い出してみると、母もよく同じようなことを言っていました。仕事柄、さまざまな世代のパリジャン、パリジェンヌにお話を聞く機会があります。その経験をとおして実感するのが、フランス人は老若男女問わず、本当にお財布のひもが固いということ。よいものに出合っても決して衝動買いはしないし、吟味を重ねて、納得のいくものだけを手に入れるんです。こういうフランス人のライフスタイルに触れるたび、自分もそうありたいと思います。
でもね、気分を変えたいとき、なにか新しいものをとり入れたくなる気持ちは、すごくよくわかります。何年か前までの私ならそういうとき、ファストファッション店で目についたものを、ぱっと買っていましたから。
だけど、そういう服って、愛着がもてないから、結局は手にとらなくなるんです。そんな失敗をくり返して、ようやく今の心境に至ったという感じですね。
<着用アイテム>
シャツ:ザ・ロウ
パンツ:マディソンブルー
スカーフ:エルメス
バッグ:ルレ・アッシュ
