日本とドイツでこんなに違う「残業」対応。友人との約束の方が大事、それでも出世はできる
「休むことは仕事以上に大事」。そんな国民性をもつドイツですが、いまや日本のGDPを追い抜き、世界第3位の経済国家に。平均収入は日本の1.7倍というデータもあります。週末や休暇を大切にしながら、なぜ仕事でも高い成果を出し続けられるのでしょうか。そのヒントは“休みの過ごし方”にあるかもしれません。今回は、ドイツ企業の日本支社でマネージャー陣のアシスタントとして働いていたドイツ人女性・ウテさん(40代)の休暇の過ごし方を紹介します。
※ この記事は『ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

「バルコニア」で過ごす休暇
「休暇が取れると遠出をすることが多いのは確かだけれど、でも休暇だからという理由で、どうしても遠出しなければいけないとはじつは考えていないの。ドイツ語にはBalkonieren(バルコニーレン)という便利な言葉もあるしね」と言って笑うウテさん。
“Balkonieren”とはバルコニーを意味する“Balkon”を遊び心で動詞にしたもので、「休暇中に出かけず、自宅のバルコニーで過ごすこと」を指すドイツ語の俗語です。日本語への直訳は「バルコニーで過ごす」なのかと思いきや、ウテさんは“Balkonieren”の意訳は「縁側共和国」だと言います。さすが翻訳家!
ちなみにドイツ語でバルコニーはバルコーン(Balkon)ですが、バルコニアと言うほうが「国っぽい名前」になるため、ドイツのダジャレ好きな人は「休暇をバルコニアで過ごすんだ」という発言することもあります。
もしドイツ人に「休暇はどこで過ごしましたか?」と聞かれて「バルコニア」と答えたら、ちょっぴり場がなごむかもしれません。
友達との約束を破ってまで仕事をしない

ところでドイツ人は「約束という約束は、友達との約束であっても、仕事の約束と同じぐらいに大事にする」人が日本よりも多い気がします。
あるドイツ人男性が、かつての自分の体験を話してくれました。
「僕は90年代の半ばに日本に住んでいた時期があったんだけど、そのころはまだ携帯電話があまり普及していなくて、僕も携帯電話を持っていなかったんだ。そのときは18時に終わる仕事をしていたので、19時に友達と新宿で待ち合わせをしたんだ。ところが当日の18時少し前になって、日本人の上司が『今日は残業をしてほしい』と言ってきた」
このとき、彼は友達との先約があるから断ったそうです。
「だって、携帯電話がある今の時代とは違って、当時は友達に連絡をする手段はなかったから、僕が残業をしてしまうと、友達との約束を実質上『すっぽかした』ことになってしまう。当時、『友達と18時に待ち合わせがあるから無理です』と上司に伝えたら、上司はあっけに取られていた(笑)」
でも間違ったことをしたとは思っていません。
「今なら『友達との約束』とバカ正直に言わないと思うけど、『外せない事情がある』と言ってやっぱり友達との先約を優先させると思う」と言いきりました。ちなみにこの男性は出世しています。
ウテさんが会社をやめた理由
さて、ここで「ウテさんが会社を見限った背景」について、じっくり聞きます。
「会社はね、福利厚生はよかったの。それでも会社を辞めたのは、やっぱり人間関係が理由。会社の上のほうの人たちは長年にわたって私の仕事を正当に評価しなかった。会社は業務上、専門用語も多かったから、『社内用の翻訳アプリをつくろう』という話になって、私が社内で使う専門用語の日本語、ドイツ語、英語の辞書(翻訳アプリ)をほぼひとりでつくったの。上司たちは大感謝で『ありがとうね〜』と大喜び。…でもね『それだけ』なの」
昇給もなければ、特別にボーナスが出たわけでもありません。
「笑っちゃったのは『翻訳アプリ、ありがとうね。とっても助かった!Traubenzucker(=ラムネのこと)をたくさん用意するね』と言われたこと。私はラムネに本当に失望したし、上司も『ボーナスの額を上げるね』と口先では言うんだけど、『いつか』みたいな話で、具体的にお金という形で私の仕事が評価されたことはいっさいなかった」
「調子のいいことを言っているのは全部『男性』よ」と当時の状況を説明してくれました。
そんなウテさんは2022年に日本の企業に転職。なんと年間の有休の数は30日から13日に減りました。でも仕事は楽しいようで、その表情は満足げです。
「日本の会社は休みがないってみんな言いがちだけれど、お盆は数日間、会社が休みだったし、お正月だって数日間休み。そう考えると、日本は祝日の数も多いし、お盆やお正月には(有休を取らなくても)会社が休みだし、夏休みは7月と9月の間に5日間取れるし、有休が約2週間で、とくに今のところは問題ない」
