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テメラリオGT3のコンセプト

ご存知のとおり、ランボルギーニ・テメラリオは1万rpmまで回るV8ツインターボエンジンをミドシップマウント。3モーター方式のプラグインハイブリッドシステムによりトルクベクタリングを行い、ウラカンを上回るドリフト時のコントロール性を実現したランボルギーニの最新モデルである。

【画像】メルセデスAMGを追従!ランボルギーニ・テメラリオとGR GTのGT3マシン 全86枚

ただし、GT3の車両規則ではハイブリッドシステムが禁止されているため、テメラリオGT3はノンハイブリッドの後輪駆動モデルとしてデビューする。そのコンセプトについて、ランボルギーニのレーシングカー開発を担当するエンジニアに語ってもらった。


ランボルギーニ・テメラリオGT3    ランボルギーニ

「基本的なコンセプトはウラカンGT3とよく似ています。ただし、ウラカンが自然吸気エンジンを搭載していたのに対して、テメラリオは低回転域でのトルクが強力なターボエンジンを積んでいます。このため、ジェントルマンドライバーにとってはテメラリオのほうが扱い易く、デビュー初年度から好成績を挙げてくれるものと願っています」

その一方で、ルーベン・モールは初年度の成績に対して過大な期待は無用と語った。

「テメラリオGT3が優れたポテンシャルを有しているのは間違いありません。ただし、レース主催者はデビューしたてのGT3車両に対して保守的な考え方を有しており、しばしば必要以上に厳しい性能調整(BoP)を課すことがあるので、予断は許されないと考えています」

GT3の成績はBoP次第

BoPとは、各メーカーのGT3車両の性能を近づけることにより拮抗したレースを生み出すための措置で、具体的なBoPの内容はFIA(国際自動車連盟)やSRO(ステファン・ラテル・オーガナイゼーション。GT3規定を考案した国際的なレース主催者でもある)などが中心となって決められる。

そして、もしも特定のメーカーのGT3車両が一方的に速いようであれば、例えばエンジン出力を絞るとか、空力性能を制限するなどの措置が採られる。従って、どんなに自動車メーカーが苦労して開発したところで、GT3車両の成績はBoP次第という側面がなきにしもあらずだった。


東京オートサロン2025で展示された『GR GT』。    大谷達也

同じことは、先ごろトヨタ自動車が発表した『GR GT』と『GR GT3』についてもあてはまる。

GR GTは、『レースで勝てるGT3車両』のベース車となることを目標として開発されたGRブランドのフラッグシップスポーツカーである。その素性を磨き上げるため、GR GTは軽量、高剛性、低重心などを主眼に置いて開発。

トヨタとして初となるオールアルミニウム骨格、肉厚を様々に変化させた複雑な形状のパーツを製作できる砂型低圧鋳造といった技術を取り入れた点に、GR GTの特徴はある。

一方で、ヨー慣性モーメントを小さくできるミドシップレイアウトについては、『極限状態でのコントロール性がシビアになる』ことを理由に採用せず、ヨー慣性モーメントがむしろ大きくなるフロントエンジン&トランスアクスルレイアウトを敢えて採用。ジェントルマンドライバーにも扱い易い操縦性に留意したという。

GRはどのような姿勢で臨んだのか

そうした施策がスポーツカーとしてのポテンシャルを向上させるのに役立つことは間違いないが、前述のとおり、BoPに縛られるGT3車両はそれだけではレースに勝てない。

何しろ、エンジン性能が他を圧倒していると判断されればエアリストリクターの装着が義務づけられたり、ターボの過給圧を細かく規制されるほか、シャシー性能が優れていると見なされれば最低車重を引き上げたり空力性能に足かせをはめられるのがBoPだ。


GR GTはトヨタ初となるオールアルミニウム骨格を採用。    大谷達也

すなわち、どんなに高性能なスポーツカーを作ったところで、それがそのままGT3車両のアドバンテージにはつながらないところが、GT3規則の難しさであるといってもいいだろう。

こうした状況に対して、GRはどのような姿勢で臨んだのか。

東京オートサロン2026の会場で取材したGRの技術者によれば、BoPによってピークパフォーマンスが制限されるのはやむを得ないものの、ピークパフォーマンスを発生する領域から離れた領域でもパフォーマンスの低下を防ぐことで、BoPの影響を最小限に留める考えだという。

さらにいえば、ピークパフォーマンス周辺の性能低下を小さくすれば、ジェントルマンドライバーにとっての扱い易さにつながることも開発陣の狙いだった模様。また、GT3車両でしばしば行われる、エボリューションモデル投入についてもできるだけ控える方針だと語った。

メルセデスAMGが採用し、GRが追従する戦略

エボリューションモデルはパフォーマンス向上に役立つ一方で、チームにとっては車両の買い換えを意味し、多大な経済的負担を要する。これと同じ方針はメルセデスAMGも長年採用してきたが、その結果、彼らはGT3市場でもっとも多くのシェアを獲得することとなった。

そして、多くのチームから選ばれればレースで勝つチャンスが増えるのは自明のこと。また、無闇にエボリューションモデルを投入してもBoPによってパフォーマンス向上は水泡に帰する可能性があるのだから、メルセデスAMGが採用し、GRが追従しようとしている戦略は実に理に適ったものといえるだろう。


東京オートサロン2025で展示された『GR GT3』。    大谷達也

いずれにせよ、GT3レースで勝利を積み重ねれば、そのブランドの知名度やバリューが向上するのは間違いのないところ。そのためにも、ランボルギーニが、そしてGRがGT3レースで成功を収めようとするのは当然のことと言えよう。

(後編に続きます。1月22日木曜日昼頃公開予定です)