ご外遊先は?

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 天皇皇后両陛下は2月、国賓として来日するアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領を夕食会でもてなされ、今年の皇室外交を本格化される。そのメインイベントとなるのが国際親善のためのご外遊だ。両陛下には例年、世界各国から数多くのご招待状が届けられているが、国賓として諸外国への公式訪問を取り仕切る、外務省大臣官房儀典総括官室を中心に、政府内でご訪問先として水面下で検討が進められているのが、ベルギーである。

 日本とベルギーは、1866年8月に日白修好通商航海条約を結んで外交関係を樹立。王室と皇室の関係は極めて親密で、今年は日・ベルギー友好160周年の記念すべき年だからだ。両陛下は皇太子夫妻時代の1999年に、同じくまだ皇太子だったフィリップ国王とマチルド王妃の結婚式に参列されており、ご親交が深いことも外遊先の有力候補となった背景にあるとみられる。

ご外遊先は?

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友好議連会長が重要閣僚

 宮内庁関係者によると2025年9月、当時は官房長官で現在は総務相という重要閣僚を務めるだけでなく、日・ベルギー友好議員連盟の会長を務める林芳正氏が、訪日中だったダヴィッド・クラランヴァル・ベルギー副首相兼雇用・経済・農業相、マキシム・プレヴォ副首相兼外務・欧州問題・開発協力相、ヴァネッサ・マッツ行政現代化・公営企業・行政・建築・デジタル化・連邦科学施設担当相と面会。160周年に向けて2国間の人的交流と関係強化に取り組むことで合意しており、政府内でも両陛下の公式訪問へむけた環境整備は着実に進められてきている。

 フィリップ国王の結婚式は99年12月4日、首都のブリュッセルで執り行われた。市役所で同国の民法に基づいた結婚式を行い、その後、サン・ミシェル大聖堂でキリスト教式の結婚式を挙行。これに出席した皇后雅子さまは、ブルーのスーツと、同じ色の羽根つき帽子をお召しになり、集合写真を撮影する部屋へ天皇陛下と共に入られると、リラックスした様子で参列者と笑顔で会話される姿が、日本でも報道された。翌2000年の9月には、新婚の国王夫妻が来日し、両陛下が葛西臨海水族園に案内されるなど、交流を深められた。

 昨年6月10日、両陛下は来日したベルギーのアストリッド王女夫妻を、お住まいの御所に招き、1時間半にわたって歓談されている。アストリッド王女はフィリップ国王の妹で、その3年前に来日した際にも、両陛下はこの日と同様に長女の愛子さまを同席させて私的に懇談されており、雅子さまはこの時以来となった王女との再会を、フランクなチークキスで喜ばれていた。

 実は天皇陛下は、独身時代にも皇太子として2度にわたってベルギーを訪れられている。

 最初は1989年、ヨーロッパ最大規模の文化芸術祭「ユーロパリア」で、非欧州圏国として初めてテーマ国に選ばれた日本の文化を紹介する「ユーロパリア日本祭」の開会式出席のため、ブリュッセルをご訪問。歌舞伎や能、茶道、浮世絵などの伝統芸術を世界に発信する場面に立ち会われた。また、翌90年には国際経済史学会に出席するため、ベルギーへ足を向けられている。

ボードワン1世との友情

 皇室とベルギー王室の関係を深化させたきっかけは、1882年の有栖川宮熾仁親王のベルギー訪問だ。ロシア帝国(現・ロシア)の旧都モスクワで行われた、アレクサンドル3世の即位式に明治天皇の名代として出席し、その帰路でベルギーを訪れ、両国関係の礎を築いたとされる。

 日本とベルギーの友好親善を目的として1969年に発足した日本・ベルギー協会には、翌70年に高松宮さまが名誉総裁に就任。83年からは常陸宮殿下が2代目の名誉総裁を務められている。

 ただ、皇室とベルギー王室の絆を最も強固なものにしたのは、やはり上皇陛下のご存在だろう。上皇陛下は皇太子時代の1953年、英国女王・エリザベス2世の戴冠式に出席するため、3月30日から10月12日まで欧米をご訪問。この時にベルギーを表敬訪問しており、これが初めてのご訪問となった。この際に出逢われた国王のボードゥアン1世と、旧来からの親友のように意気投合したというわけだ。

 71年に昭和天皇もベルギーを訪問すると、2年後の73年には父への歓待に対する返礼を込めて、スペイン公式訪問に伴い、上皇后美智子さまをお連れになってベルギーに立ち寄られている。お立ち寄りは外遊の度に繰り返され、79年、81年、84年にも皇太子夫妻として再訪していた。

 この間、天皇陛下も昭和天皇の孫として76年と83年の2度にわたりベルギーをご訪問されている。上皇陛下が即位されると、ボードゥアン国王が89年に執り行われた昭和天皇の「大喪の礼」と、翌90年に挙行された上皇陛下の「即位の礼」に参列している。

 また93年には9月にベルギー訪問が予定される中、ボードワン国王が62歳の若さで急死したことから、上皇上皇后両陛下は急遽、8月6日から9日の強行日程で国王の葬儀にご参列。いったん帰国した後に再び渡欧し、ベルギー、伊、独の3か国歴訪を実現されている。これはアルベール新国王にとっても初めての国賓接遇となる記念すべき機会となった。宮内庁OBは「上皇陛下にとって、旧友亡き後も、弟で新国王のアルベール2世が大切な“友人”である事実を改めて実感するご経験ともなったようです」と振り返る。

トランプ氏の存在が壁?

 ボードゥアン元国王の后(きさき)だったファビオラ元王妃は2014年に亡くなったが、皇室からは“友情”を示す意味もあって、12月11日から13日のタイトなご日程ながら元王妃と昵懇の仲だった美智子さまが、単身でベルギーに向かわれて葬儀に参列されている。

 また、アルベール2世の長男のフィリップ国王は2016年10月、国賓として夫妻で来日。歓迎式典では上皇上皇后(当時は天皇皇后)両陛下が皇居で出迎えたが、これは日本とベルギーとの友好150周年を記念したもの。皇太子夫妻として天皇皇后両陛下もご一緒に国王夫妻を出迎え、歓迎式典に臨まれた。

 前出の宮内庁OBは語る。

「上皇陛下は国際親善を行う上で、国の大小や日本にとっての政治的、経済的重要性を徹底的に排除してこられました。ようするに、平等に分け隔てなく接してこられたわけです。そのお考えは天皇陛下にも受け継がれていることは間違いありません」

 一方で前出の宮内庁関係者は、「日本の最も重要な同盟国である米国のトランプ大統領は1期目の2017年に国賓に次ぐ待遇の公式実務訪問賓客として来日し、生前退位前の上皇陛下とお会いになり、2019年には天皇陛下が最初にお迎えした国賓として来日しています。昨年10月の来日でも陛下は大統領と会われており、高市政権は天皇陛下の国賓としての訪米を返礼にしたいのではないかと噂されています」と指摘した上で、こう警鐘を鳴らす。

「しかしそれはまさに皇室の政治利用です。それをしてしまっては旧民主党政権が中国の習近平氏を特別扱いして、上皇陛下との面会を無理やりスケジュールに割り込ませたことと同じになってしまいます」

「国民の象徴」としての天皇の外遊は、閣議決定が必要となるが、果たして天皇陛下のご訪問先はベルギーか、米国か。それとも政府内部の不和を避けて、別の選択がなされるのか。注目だ。

朝霞保人(あさか・やすひと)
皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。

デイリー新潮編集部