『豊臣兄弟!』藤吉郎と小一郎の初恋の結末…史実から直(白石聖)と寧々(浜辺美波)の真逆の運命を辿る

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ついに始まった2026年NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。同じ時代を生き、同じ貧しさから這い上がり、天下を獲った豊臣秀吉(池松 壮亮)と、豊臣秀長の兄弟(仲野大河)。

けれども、二人が若き日に経験し人生に影響を与えた “初恋”は、まったく異なる結末を迎えます。

弟・秀長の初恋の人、直(なお/白石聖)。その恋は穏やかに芽生え、ずっと続くかと思われたものの、結ばれることなく静かに消えていくようです。

一方、兄・秀吉の初恋の人は、のちに正室となる寧々(ねね/浜辺美波)。彼女は秀吉の無名時代を支え、生涯を共に歩む伴侶となりました。

大きく異なる運命をたどった兄弟の初恋。ドラマと史実を比較しつつ辿ってみたいと思います。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

若き貧乏時代の豊臣兄弟がときめいた初恋の女性二人

秀吉といえば、無類の女性好きとして有名です。本妻や側室のすべてを合わせると20人以上にもなるとか。実際、ポルトガルの宣教師で貴重な資料『日本史』を記したルイス・フロイスも、秀吉の女癖を記録し、囲った娘の数は、“300人”とも記しています。

なんと側室300人!豊臣秀吉の女性選びが、他の戦国大名とちょっと違った理由とは?

一方、秀長の女性関係の史料はあまり残っておらず、正妻や側室についてもその伝承は数少ないそうです。ドラマではこれから「慶/のちの慈雲院(吉岡里帆)」が正妻として登場します。

そんな兄弟二人がまだ若き貧乏時代で、藤吉郎(秀吉)と小一郎(秀長)と名乗っていた頃、初恋の女性となったのが直と寧々です。

ドラマの初回、すでに二人の初恋の女性が登場し、そのキャラクターを印象付けていました。彼女らの存在を通じて、これから兄弟の考え方や性格の違いも浮き彫りになっていくでしょう。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

芯が強くしっかりしている幼馴染「直」

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

兄弟の故郷・尾張中村の土豪・坂井喜左衛門(大倉孝二)の娘・直は、ドラマのオリジナルキャラクターです。

元々は永野芽郁さんが演じるはずでしたが出演を辞退したため、白石聖さんが代役となりました。最初からこの役が決まっていたかのように、本当にぴったりですね。

直は、小一郎とは幼馴染で、息の合う悪友同士のように仲がいい様子。 “直が何か頼み事をして小一郎が実行したらお礼に小銭をあげる”という関係を楽しんでいる二人は、恋愛未満のキャッキャッしているまだ幼い関係のようにみえます。けれども、お互い自分の恋心は気がついているでしょう。

芯がまっすぐで逞しい直は、きちんと意思を持ち嫌なことは嫌だとはっきり伝える気丈な女性。第一回では、野党に襲われ羽交い締めにされるという危機に直面しました。

普通の女性なら恐怖で動けなくなってしまいそうですが、思い切り「嫌だって言ってるでしょっ!」と、野党に強烈なビンタをするシーンは、気持ちよかったですね。

次回の予告では、直の婚礼の衣装が登場していましたが、相手はもちろん小一郎ではないでしょう。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

派手さのない芯の強さが小一郎と似ている直

小一郎が直に「俺と結婚してくれ!」と言えないのは、“極貧”だけではありません。

兄・藤吉郎が直の実家に盗みに入り(ついでに喜左衛門の妻も盗んだ様子)村から逃走したことも原因です。盗人の弟の分際で「直を嫁にくれ」などとは、小一郎の性格では、口が裂けても言えないでしょう。

ドラマでは、戦が起こり村人たちが現場に出向くなか、直は小一郎に「あんたは行かないのか」と聞きました。「俺は行かない、畑仕事のほうが性に合っている」という返事に、ほっとした表情を浮かべた直。“想いを寄せている”のが伝わる場面でした。

興味深いのは、派手さのない芯の強さを感じさせる直は、後年「秀吉の名補佐役」と称される秀長の人物像と、静かに呼応しているようにも見えるところです。

秀長は、ドラマでも史実でも、秀吉ほど野心を前面に出す人物ではありませんでした。常に一歩引き、現実を見つめ、周囲との調和を重んじる……その性格は、初恋においても同じだったようです。

二人のやりとりを見ていると、燃え上がるような恋というより、日常の延長線上にある穏やかな恋として育っていく感じがします。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

小一郎が「素の自分」に帰れる相手

直は、秀長の野心を煽り出世へのモチベーションをあげるタイプではありません。むしろ、秀長が「何者でもない素の自分」でいられる時間を与えてくれる存在だったのではないでしょうか。

戦国という苛烈な時代において、直と過ごす時間は小一郎にとって何より貴重な安らぎだったでしょう。

けれども史実でも、秀長は「慶」(※智雲院とも)という女性と一緒になります。実際、出自などの詳細は謎に包まれているのですが、ドラマの公式サイトの紹介文では、

〜小一郎の正妻。のちの慈雲院(じうんいん)〜
激動の時代をたくましく生き抜き、やがて兄嫁の寧々とともに豊臣兄弟を支える存在となる。夫の秀長が大和国の統治を任されると、ともに大和郡山城に入り、夫の晩年まで連れ添う。

とあります。

かたや直は、

〜小一郎の幼なじみ“初恋のひと”〜
小一郎と藤吉郎の故郷である尾張中村の土豪の娘。小一郎と同い年の幼なじみ。男勝りな性格だが、小一郎のことをひそかに慕っている。乱世に翻弄される悲劇のヒロイン。

最後の「乱世に翻弄される悲劇のヒロイン」の一文が気になりますね。いずれにしても、小一郎と結ばれることはなさそうです。

兄を支え豊臣家を盤石なものにするために、自身の人生を捧げていく小一郎は、個人的な恋を優先する余地はほぼなかったのかもしれません。

けれども、直との初恋があったからこそ、秀長となっても人の心の機微に敏感であり続け、権力に溺れることなく理性的な立場を保てたとも考えられます。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

“戦国のファーストレディー”として上り詰めていく寧々

 

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

一方、兄・藤吉郎の初恋の相手は、寧々(のちの北政所)。のちに豊臣政権の正室となり、「天下人の妻」として名を残すこの女性のストーリーは、ここで出自を紹介するまでもないほどあまりにも有名です。

公式サイトの紹介文では

〜夫の秀吉とともに天下人への階段を昇りつめる〜
豊臣秀吉の正妻。秀吉が関白に就任したのちは北政所と称される。負けず嫌いの性格で、夫の秀吉とともに出世街道を駆け抜ける。やがて庶民の娘から“戦国のファーストレディ”へと昇りつめる。

けれども、寧々は、最初から特別な存在だったわけではありません。

初回でも描かれていたように、若き日の秀吉は、身分も財産もなく、将来の保証などどこにもない男。けれども、そんな秀吉の将来性を、寧々は早くから見抜いていたようです。

ドラマの中では、気軽に藤吉郎と小一郎とともに茶店で団子を美味しそうに頬張り、小一郎に「藤吉郎さんにはいつも励まされております」と屈託なく言う寧々。

「励ます?」と小一郎が聞き返すと

「だって、みんなにどんなにひどいことを言われても平気で笑っているんですもの。私も見習わなきゃなと思います。」と、「そこ?」と思うような返しをする、お茶目な寧々。

「わしなんか見習ってもしょうがない。寧々さまは見た目も中身もお美しいのじゃから」という藤吉郎に、「そんな〜」と否定したり遠慮したりせず、

「そうやってお殿様にも取り入ったのでしょう?だまされませんよ!」と、即座に軽妙な憎まれ口を返すところが、藤吉郎にぴったりだなという印象でした。

調子がよくておおらかに笑っていている藤吉郎の、心の奥にある野心や人を惹きつける不思議な力をわかっていたのでしょう。もしかしたら、小一郎が感じた兄の「恐ろしさ」の部分すら本能で察知し、魅力に思ったのかもしれません。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

寧々は秀吉にとって「最後まで失わなかった存在」

寧々は、秀吉を諫め、支え、ときに叱る存在だったといいます。

ただ夫の影に控えていて黙々と尽くすだけではなく、暴走を止め、現実へと引き戻す役割を担っていました。この関係性こそが二人の絆を強固なものにしていったのでしょう。

秀吉の初恋は、結婚へと至り、寧々は生涯をともにする関係へと変わっていきます。「初恋成就の相手」ではなく、天下人へと上り詰める過程で、精神的な支柱となり続けた寧々。

多くの側室を抱えながらも、秀吉が最後まで特別な敬意を払ったのは寧々でした。そこには、若い頃の初恋の記憶と、共に困難を乗り越えてきた時間が、確かに刻まれているからでしょう。

寧々という女性は、秀吉にとって「初恋の女性」であると同時に、「最後まで失わなかった存在」でした。

まだ初回の登場は少なかったですが、これからどのように“戦国のファーストレディー”となっていくのか、ドラマではどう表現していくのか、が楽しみです。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』公式サイトより ©NHK

最後に

自分が前に出るよりも、誰かを支えることに価値を見出す弟の生き方は、恋においても同様。直との初恋を人生の中心に据えることはなく、静かに胸の内へと仕舞っていったのでしょう。

一方、「上」を目指す兄は、野心を実現するためには、共に歩む存在が必要でした。自分の気質や夢を理解し、ときに制し、ときに支え、人生を共有する覚悟を持っていた寧々はぴったりのパートナーでした。

小一郎と直が “記憶として心にしまわれた恋”なら、藤吉郎と寧々は “初恋を実らせ生き続けた恋”。

二人の女性の存在が、ドラマで描かれる豊臣兄弟をより人間らしい存在として見せてくれるでしょう。

※第2話放送内容の考察:

『豊臣兄弟!』小一郎(仲野太賀)と直(白石聖)、身分違いの結婚?絶望から武士の道へ…第2回放送を考察