子どもが不登校になったとき、親がやってはいけないNG対応とは何か。不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうさんは、「親が献身的だと問題が長引きやすい。お子さんをかえって追い込んでしまうので、注意が必要だ」という――。
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■「いいお母さん」だと不登校は長期化する

お子さんが学校に行かなくなったとき、親御さんは「将来、この子が自立して生きていけるように」と願い、必死に行動を起こします。通えそうなフリースクールを探して見学に行ったり、学校に戻れる方法をネットで検索し続けたり、「この子の個性にはこんな場所が合うんじゃないか」と奔走したり。

それは親としての深い愛情であり、傍から見れば、子どものために尽くすとても「いいお母さん」の姿です。しかし、残酷な現実をお伝えしなければなりません。残念ながら、その「いいお母さん」であろうとする献身的な関わりこそが、不登校やひきこもりを長期化させてしまうことが本当によくあるのです。

もちろん、「では、放任して見守っていればいいのか?」というと、それもまた違います。ただ見守っていても子どもが動き出す気配がない中で、「どこまで関わり、どこから引けばいいのか」と途方に暮れている親御さんも多いはずです。

今回は、過保護・過干渉でもなく、かといって放任でもない。お子さんを本質的な解決と自立に導くための、親としての「絶妙な距離感」についてお話しします。なぜあなたの献身さが裏目に出るのか、その心理的メカニズムから紐解いていきましょう。

■なぜ「献身的」だと悪化するのか

まず、なぜ親が献身的であればあるほど、解決が難しくなるのでしょうか。その最大の理由は、親御さんが「無理をして自分を消耗させてしまっている」点にあります。

「子どものサポートをするために」と仕事を辞める。「栄養をつけて元気になってほしいから」と、自分は疲れているのに必死で完璧な食事を作る。「情報収集しなきゃ」と夜な夜なスマホで検索を続ける。

このように、親御さんが自分の人生や体力を削って(消耗して)お子さんに関わると、その時点で親子関係は「対等」ではなくなってしまいます。

親御さんは言葉にしなくても、全身から「私はあなたのために、これだけ犠牲を払っている」というメッセージを発することになります。お子さんからすれば、それは愛情というよりも、逃れられない重たい「プレッシャー」としてのしかかります。

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■子どもの自己肯定感はどん底まで下がる

「お母さんが仕事を辞めたのは僕のせいだ」「お母さんがこんなに辛そうなのは、私が学校に行っていないからだ」

子どもは親のことをよく見ています。

親が消耗すればするほど、子どもは「親の期待に応えなきゃいけない」と追い詰められたり、「自分は親に無理をさせている」「自分は誰かの負担になっている」と感じてしまったりします。家庭の中で、まるで自分が触れられたくない“腫れ物”のように扱われていると感じると、子どもの自己肯定感はどん底まで下がります。

さらに恐ろしいのは、この関係性が「家の外の世界」への認識も歪めてしまうことです。

親との関係で「人間関係=誰かに無理をさせること」「自分=他人に迷惑をかける存在」という図式を学んでしまうと、外の世界に出るのが怖くなります。「外に出たら、また誰かに迷惑をかけるかもしれない」「また誰かを消耗させるかもしれない」という恐怖心が、ひきこもりをさらに強固なものにしてしまうのです。

■難しい「しつけ」と「過干渉」の境界線

では、具体的にどのような距離感で関わればいいのでしょうか。

「献身的になりすぎてはいけない、というのは頭では分かります。でも、どこからがやりすぎ(過干渉)で、どこからが放任になってしまうのか、その線引きが難しいんです」

カウンセリングをしていると、多くの親御さんがそう吐露されます。

実際、私のもとに相談に来られる方の多くも、最初は「自分が過干渉な親だ」という自覚はありません。「子どものために良かれと思って」一生懸命やっているだけで、それが過干渉だとは夢にも思っていなかった、という方がほとんどなのです。

朝、何度も起こしてあげること。「こんな学校があるよ」と調べてあげること。スマホやゲームの時間を管理すること。

これらは「親としての責任(しつけ)」なのか、それとも「過干渉」なのか。その見極めは非常に難しいですよね。

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■「過保護・過干渉」チェックポイント

そこで、一つの目安となる「チェックポイント」をご紹介します。もし迷ったときは、ご自身の胸に手を当てて、こう問いかけてみてください。

【過干渉チェックポイント】

□それは、子どもから「頼まれて」やっていますか?
□それは、子どもが「経験する機会(失敗も含めて)」を奪っていませんか?
□それは、子どものためではなく「親自身の不安」を消すためにやっていませんか?

このどれか一つでも当てはまれば、残念ながら、「過保護・過干渉」になります。

たとえば、頼まれてもいないのに「こんな学校どう?」とパンフレットを置くこと。これは一見、情報提供に見えますが、お子さんが自分で悩み、葛藤し、「どう生きていきたいか」を選択するプロセス(経験)を奪ってしまっている可能性があります。「このままじゃ将来が不安だから」「ちゃんとしてほしいから」という親御さんの不安や焦りから行動しているならば、それは残念ながら「過干渉」の領域に入ってしまっています。

■親が守るべきたった一つのルール

では、どうすれば過干渉にならず、適切な距離感で関われるのでしょうか。あれこれルールを覚える必要はありません。たった一つ、これだけを意識してください。

それは、「自分が消耗しない範囲で関わる」ということです。

なぜ、親が献身的であればあるほど、事態が悪化してしまうのか。それは、親御さんが「無理をして自分を消耗させてしまっている」からだと説明しました。

嫌々ながらも子どものためにと我慢して食事を作ったり、本当は休みたいのに送迎をしたり……。親御さんが身を削って尽くせば尽くすほど、家庭内には「私はこれだけ我慢している」という重たい空気が流れます。すると、お子さんは「お母さんが辛そうなのは僕のせいだ」「自分は親を苦しめる存在なんだ」と感じ、自己肯定感を失い、動けなくなってしまうのです。

だからこそ、「こんなに何もしなくていいのかな?」と不安になるくらいで丁度いいのです。あなたが消耗せずに笑顔でいること。それだけで、十分すぎるほどお子さんのためになっているのです。

写真=iStock.com/yamasan
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■まずは「自分自身」に献身的になろう

自分が消耗しない範囲をクリアにするために、実践的なワークを提案させてください。

【ワーク1】「本当はやりたくないこと」を書き出す

「子どものために」と我慢してやっていることを、一度書き出してみてください。

「毎日の完璧なご飯作りをサボりたい」
「夫の世話までしたくない」

なんでもいいです。そして、それを「やめてみる」あるいは「手を抜く」方法はないか考えてください。「私がやらないと大変なことになる」というのは、案外思い込みだったりします。あなたが眉間に皺を寄せて作った完璧な料理よりも、買ってきたお惣菜を笑顔で食べるお母さんの姿の方が、子どもにとっては数倍、心を満たす栄養になります。


【ワーク2】「自分自身」に対して献身的になる

今までお子さんに注いできたその膨大なエネルギーを、少しだけ「自分」に向けてみてください。

「自分のために献身的にするなら、今、自分に何をしてあげる?」と問いかけてみてください。泥のように眠ることかもしれない。好きなアイドルの動画を見ることかもしれない。友達と少しリッチなランチに行くことかもしれない。それを無理のない範囲で実践してみてください。

■良い意味で子どもに構う暇がなくなる

あなたが「自分自身に献身的になり始めると、子どもとちょうどよい距離感を自然と取れるようになっていきます。

「子どもに献身的になりすぎる」ということが、物理的にできなくなっていくからです。

これまで、あなたの頭の中は24時間、お子さんの心配事で埋め尽くされていたかもしれません。「どうして学校に行かないの?」「将来どうするの?」と。しかし、あなたが自分のために時間を使い、自分の心を喜ばせることにエネルギーを注ぎ始めると、良い意味で、お子さんのことを考え続ける「隙間」がなくなっていきます。

「我慢して見守る」のではありません。

「自分の人生を楽しむのに忙しく、子どものことを構っている暇がなくなった」
「不安を手放せて自分が満たされているから、子どもの些細なことが気にならなくなった」

そたろう『親が変わると、世界が変わる 不登校・引きこもりを本質的に解決したある母の物語』(Independently published)

そうやって、無理な努力をすることなく、自動的に過干渉が手放されていく。先回りや過干渉をやめるのではなく、する必要がなくなるし、しなくなる。それこそが本質的な変化なのです。

親御さんが自分を満たし、消耗せずに余裕を持って接してくれる。親が自分の人生を楽しんでいる。そんな「安全で対等な関係」が家庭にあれば、お子さんは自然と家の外への恐怖心を解いていきます。子どもは「僕が学校に行けなくてもお母さんは楽しそうだ」「自分は迷惑な存在じゃないんだ」と安心します。「今の自分のままで、この家にいていいんだ」という安心感こそが、次のステップへ進むためのガソリンになるのです。

お子さんは大事です。でも、あなたも同じくらい、いえ、それ以上に大事な存在です。まずはあなたが、あなた自身の人生を取り戻すところから始めてみてください。それが、結果としてお子さんの自立への最短ルートになるのですから。

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そたろう(そたろう)
不登校ひきこもり専門カウンセラー
20代の頃、理学療法士として働く傍ら、夫婦関係や仕事に行き詰まったことをきっかけに自分が心の問題を抱えていることに気づき、心理学を学び始める。その過程で自己受容の大切さを知る。2019年、子どもを受容する声かけなどを指導する「不登校ひきこもり専門カウンセラー」今野陽悦さん〔今野陽悦『学校に行けない子どもに伝わる声がけ』(WAVE出版)〕に出会い、仕事を手伝いはじめる。2022年に独立。累計300人、約8000回(2025年9月末時点)のカウンセリング実績のなかで、不登校を本質的に解決する具体的なメソッドを構築。自身のYouTubeチャンネル「不登校ひきこもり解決そたろう」で発信を行っている。クライアントの9割が自分自身を大切にすることを学ぶなかで、家族関係が改善し、子どもが再登校をしたり、社会復帰するなど問題解決を果たしている。著書に『親が変わると、世界が変わる 不登校・引きこもりを本質的に解決したある母の物語』がある。
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(不登校ひきこもり専門カウンセラー そたろう)