【もののけ姫】IMAX上映記念!主演二人が回想した地獄の収録
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『もののけ姫』は宮崎駿が原作・脚本・監督を務め、スタジオジブリが制作した。中世日本を舞台に、森を侵す人間たちと荒ぶる神々との闘いを、2年の制作期間と日本アニメ史上空前の製作費を投入して壮大なスケールで描ききった長編アニメーション大作だ。 1997年に公開されるや観客動員数1420万人、興行収入193億円の大ヒットを記録。当時日本歴代興行収入1位だった『E.T.』の記録を塗り替えたほか、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞するなど、数々の映画賞を席巻した。2020年には全国の映画館で再上映が行われ、累計興行収入201.8億円、累計観客動員数は1500万人を突破するなど、四半世紀の時を超えていまだに多くのファンに愛され続けている。
プレミア試写会での舞台挨拶では、1997年劇場公開当初と今回の上映に合わせて制作されたポスターをバックに、椅子に座った松田洋治、石田ゆり子、鈴木敏夫プロデューサーの三氏がトークを展開した。今回のIMAX上映について尋ねられると、松田は「『もののけ姫』を28年振りにIMAXの画質と音質で観るということにすごい期待をしています」、石田は「スクリーンの画面の大きさにビックリしています。ものすごい没入感だと聞いているので、本当に楽しみにしております」とワクワクした様子を見せた。
制作当時を思い出してのトークでは、松田がオーディションの思い出を披露した。ジブリの新作オーディションがあると言われて行ったところ誰もおらず、音響監督だけが現れ、いきなりいくつかのセリフを一人で収録したという。その後連絡がなく、てっきりサンプル録りだと思っていたところ、知り合いから映画館で自分の声のアシタカが出ている『もののけ姫』の特報が流れていると聞かされ、「慌てて映画館に観ていって、予告編で自分の声が聞こえて来て、俺が主役をやるんだとビックリしました」といった驚きのエピソードを明かした。
しかし、 そんな松田に鈴木プロデューサーから「それは全く嘘です」と訂正が。松田さんから『風の谷のナウシカ』でアスベルを演じていたことを「楽屋で話すまで忘れていた」とツッコまれるほど記憶が曖昧な鈴木プロデューサーだが、アシタカ役選定にはさんざん悩んだ経緯があったという。そこで宮粼駿監督に相談したところ、「『風の谷のナウシカ』でアスベルの声はどうですか? あれよかったよ」と言われたそうで、それが決め手になったとのこと。その確認をとるために松田を呼んだと説明する鈴木プロデューサーに、長年の謎が解けた松田はなるほどといった表情となっていた。
石田は、ある日所属事務所に顔を出したところ、そこにいた鈴木プロデューサーから出演のオファーをもらったという。「なぜ私なんだろう?」と思いつつも、「天にも昇るほど嬉しかったです」と当時の気持ちを語った。
ヒロイン起用の理由について尋ねられると、鈴木プロデューサーは「宮粼駿のタイプだったんですよね」と冗談交じりに明かした。続けて、「『平成狸合戦ぽんぽこ』でヒロインとして石田さんが出演した際、宮粼駿が石田さんに挨拶するのを見逃さなかったんですよ。そのとき鼻の下が長くなっていたんです。そのときまでサンを誰にやってもらおうか悩んでいたんですが、『これだ!』と思ったんです」と語ると、会場からは笑い声があがっていた。
アシタカ役について、収録経験がほとんどなかったという松田は、「当たって砕けろ」という気持ちでアフレコに臨んだという。それに対し、石田は絵コンテや企画書など大量の資料を何度も読み込み、サンというキャラクターに迫っていったとのことだ。少ないセリフと動きや息遣い、立ち上ってくる気配などを駆使して演じる必要があったらしく、「人間であって人間でない、動物になりたいけど動物になれない不思議な役なので、それはそれは難しかったです」と解説した。
収録は「10回以上スタジオに行った」と、通常の映画ではあり得ない日数になったと松田は苦笑いを浮かべた。「一旦止まると地獄が待ち受けている」と語ったように、一度引っ掛かると、どれだけ有名な役者相手でも一切の遠慮なく宮粼駿監督から何度もリテイクが入ったという。「誰に対しても平等に、とことんこだわっていかれる。それはすごいなと思いました」と松田は作品制作への真摯な姿勢に感嘆の声を上げていた。
石田は「私が一番大変でした」とポツリと漏らした。「皆さんはどんどん終わっていくんですが、私は下手くそだったので、一人で居残り授業みたいな感じで残っていました」との苦労話に、松田も宮粼監督から「今日は帰れ!」と言われて収録途中に帰ったこともあったと、厳しかった現場の様子について補足した。
そんな苦労の連続だったという収録で石田の記憶に残っているのは、サンが助けたアシタカを弟犬に乗せて一緒に走るシーンだ。中でも「お前、死ぬのか」というセリフについて、宮粼監督は「お前、パンツ履いてないじゃん」といったニュアンスでやってほしいと指示したという。「サンにとっては『あんたパンツ履いてないけどどうしたの?』という程度の出来事という意味だったんですが、当時の私には難解すぎて。毎日泣きそうな気持ちでした」と当時を回想した。それでも石田にとってジブリ作品への出演は夢のような出来事だったそうで、「夢の中なんだけど、地獄みたいな不思議な恍惚感がありました」と複雑な胸の内を明かした。
そんな石田だが、当時の演技には悔いもあるようで、「今でももう一回サンをやりたい」と、可能であればリベンジしたいとの意気込みを口にする一幕も。ただ、さすがに四半世紀が経った今、同じ声で演じるのは厳しいと考えているようで、「でももうこの声は出ないので」と残念そうな表情を浮かべていた。
制作期間は3年、25億円もの制作費をつぎ込んだ、ジブリとしては賭けともいえる『もののけ姫』の作品制作を猛プッシュした鈴木プロデューサー。その理由について、宮粼駿が還暦を迎えるのを視野に「今を逃したらこういうアクションものを作るのは二度と出来ない」との強い想いがあったとのことだ。さらに、ジブリ独立で募集したスタッフが力を付けてきたことや、プロデューサーとして『紅の豚』が好評で「お金を使えるのは今だな」と皮算用をはじいたことについても言及した。
結果的に『もののけ姫』は日本映画史上に残る大ヒットを記録した。これには松田も予想外だったようで、「『となりのトトロ2』なら家族連れだし大ヒットするだろうと思ってた。でもこの作品は家族連れにはしんどいから、数字的にはそこまで出ねぇんじゃねーかって(ゴンザ役の)上條恒彦さんがおっしゃってて、僕もそれはそうかもって思ったんです。でも蓋を開けてみたらエラいことになったなぁって思いました」と戸惑いを語った。石田も「ジブリ新作なので、すごいことになるのはわかっていた」と同意しつつ、「でもこの作品を深いところで一番理解しているのは10歳ぐらいの子供たちだと宮粼さんも言っていました。それは真実だと思います」と、『もののけ姫』が大人から子供まであらゆる年齢の人たちの心に刺さる作品だったと振り返った。
最後に松田が「『もののけ姫』がなかった松田洋治と今の松田洋治では、全く違う俳優としての人生を歩んでいたと思います。私の人生や俳優活動に最も大きな影響を与えた作品であることは間違いありません」と一言。石田も「海外で必ず『どういう作品に出ているんですか?』と聞かれるんですけど、『もののけ姫』でサンの声をやっているというとものすごい尊敬されるんです。本当にそれはすごいことだと思います」と感謝の言葉を述べた。鈴木プロデューサーは「お客さんがいっぱい観てくれたのが、素直にうれしかったですね。なんのために僕らが作品を作るのかっていうと、お客さんに観てもらうためなんですよね。『もののけ姫』は自分たちのために作るんじゃない、お客さんのために作ろうっていうことに改めて気付かせてくれた作品になりました」と語り、当時の思い出話に盛り上がった舞台挨拶は終了となった。
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