山や星を教えてくれるUnistellarのAR双眼鏡「Envision」を先取り体験してみた
山や星座の位置を識別して双眼鏡を覗くとARで教えてくれるという、次世代のEnvision双眼鏡がKickStarterで登場しました。AR双眼鏡って、一体全体どんな体験を提供してくれるの? 気になる人は気になる、米Gizmodoによる実機体験記をお届けします。
よく登山をするため、山にいる間は今いる山のことをスマホで調べたりしたいのですが、記憶力もないし電波もロクになくて、結局わからないままで、いつも歯がゆい思いをしています。ワシントン州のノースカスケード国立公園で断崖の下に広がる谷の名前や、その近くのマッターホルンのような荘厳な峰の名を知りたいと思っても、よくわからないまま先に進んでしまうのが悲しかったのです。
だからこそ、Unistellarが開発したEnvision双眼鏡にとても興味を惹かれました。この高価な半ARの双眼鏡で何ができるかというと、山を識別できるだけでなく、夜空に輝く星座を教えてくれます。
今回、私はUnistellarの共同創業者兼CEOであるローレント・マルフィシ氏と一緒にトレッキングしながら、このデバイスを実際に試すことができました。ニューヨークから電車で北へ約1時間半、ニューヨーク州オシニングへの小旅行です。実際に今回試したEnvision双眼鏡は、最終製品に搭載される機能がまだない初期プロトタイプです。それでも、このプロトタイプの双眼鏡は、ハドソン川渓谷に沿った近くの山々の頂上をなぞるように線を描いて表示してくれました。そしてその線に沿って、5.7km先にあるフック山から北西のジャッキー・ジョーンズ山、さらにその先の山々まで見つけてくれて、山の名前を表示してくれました。
アパラチア山脈北部の丸みを帯びた山頂の輪郭が描かれましたが、カメラの映像は常に完璧というわけではありません。この双眼鏡はアプリからデータを取得し、GPSと IMU(慣性計測装置)を用いて、景観のランドマークとの位置関係を特定します。描かれた線がずれることもあり、その場合は双眼鏡のボタンで線を正しい位置、または「多分正しい」と思われる場所にドラックして修正する必要があります。右側の接眼レンズに見える赤い線で、オシロスコープを思い出しました。オシロスコープとは、目に見えない電気の動きを、波の線で見せてくれる昔ながらの測定器です。
現時点では、Envision双眼鏡は1つの山脈のラインしか識別できませんが、マルフィシ氏によれば、発売時には2層の山並みまでサポートしたいとのことでした。
いい意味で「つながらない」望遠鏡
Envision を「AR双眼鏡」だと表現することは可能です。でもそれだけだと、他の電子望遠鏡と比べて、いかに「つながらない」存在かをうまく伝えることができません。
Envision双眼鏡は、熱心なバードウォッチャー向けには設計されていません。もし野生動物を識別したいなら、Swarovski Optikの最新の双眼鏡とかのほうがずっと向いています。Envisionは写真も撮れないし、登山の様子をインスタに投稿することもできません。この双眼鏡はとにかく孤高に探究心を突き詰めるか、または登山仲間に「ちょっと覗いてみ?」と渡すためのものです。
これはあくまで個人のデバイスであり、そういった意味で、個人的には最近手にした中でも、最も楽しめるデバイスのひとつだと感じました。
ニューヨークのブルックリンに住んでいる筆者からすると、「星を見る」日常は存在していません。星を見るにも、何をどう見たらいいのかその知識がなくてよくわかりません。でもEnvison双眼鏡では、星空の観察もARでサポートしてくれます。
アプリから見たい星を選ぶと、双眼鏡がその方向を示す矢印を表示して、角度が正しく合ってくるにつれて、その矢印が大きくなっていきます。また、ターゲット用の照準を設定するボタンもあって、Envision双眼鏡を友だちに渡すときに「ここを見て」と伝えることもできます。それ以外に行なう操作はほとんどありません。
また、Envision双眼鏡は10倍ズームに固定されています。レンズを自分の目に合わせて調整できますが、これは遠くの山や星をくっきり細かく見るための双眼鏡ではなく、「ARで位置や名前を知る」「風景や星座をざっくり把握する」ことを目的にした双眼鏡です。
ARのオーバーレイをオフにするためのボタンもあります。 マルフィシ氏によると、登山道や水源、その他のランドマークを識別する機能などはまだ欠けている要素もあるとのことでした。開発ロードマップはまだまだ道半ばで、最終的にはアプリに文脈の情報を追加して、筆者のように星空に詳しくない人でも、星団や星座に関する情報を学べることを目指しているとのことです。
まだまだ先は長い
もともとUnistellarは、2023年のeQuinox 2や 2024年のOdysseyなど高級スマート望遠鏡のメーカーとして有名です。今回の最新製品のEnvisionは、昨年KickStarterに登場し、早期購入者でなくても小売価格は1,200ドル(約18万円)としていました。Envisionの大量生産は 来年4月に開始予定で、2026年後半の発売を予定しています。早期購入者向けには1,000ドル(約15万円)で提供しますが、実際の希望小売価格は1,500ドル(約22万円)前後になる可能性が高いとのことです。マルフィシ氏は、トランプ関税が価格上昇をさらに悪化させていると率直に語りました。
これはガジェット開発あるあるですが、現在肝心な部品を欧米のサプライヤーからは十分に調達できない状況で、先行予約分の出荷は2026年10月頃に開始予定ですが、一般販売は2027年になる可能性があります。
またUnistellarは、2027年には太陽観察用の専用ソーラーフィルター を別売りとして販売する計画があります(ちなみに太陽観測を行なう場合、必ず高品質な日食観察用メガネを着用する必要があり)。また、マルフィシ氏は月面観察用フィルター についても示唆しましたが、こちらはまだ製造段階に入っていません。
確かに15万円とか20万円の双眼鏡なんて手が出る気もしませんが、たまに自然の中に出かけることができるなら、Envisionはスマホから離れ、自分の目で星や山を学ぶことができるデジタルデトックスとして最適なガジェットになるかもしれません。

