カムイは“神”とは違う? 自然と共にあるアイヌの生き方とは【眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話】

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すべてのカムイには役割がある

日本古来の宗教である「神道」の起源は、自然界などあらゆるものや事象に霊魂が宿るとするアニミズムにあると言われています。

アイヌの人々も、この世のあらゆるものに「霊魂(ラマッ)」が宿ると考え、この世界は人間と霊魂がお互いに関わりあい、影響を及ぼし合って成り立っていると考えていました。

カムイは、日本語では「神」と訳されることが多いですが、正確には、大きな力を持った「高位な霊的存在」のことを指します。アイヌの人々は、動物や植物、太陽や月、火や水、生活用具、天候といった恵みや禍をもたらすもの、人間の力の及ばないものなどをカムイとして敬いました。

伝統的なアイヌ文化では、人間の世界である「アイヌモシリ」とカムイの世界である「カムイモシリ」があり、カムイはこの2つの世界を行き来する存在とされています。そして、すべてのカムイには人間界での役割があり、それを果たしたらカムイの世界へ帰ると考えていました。

ヒグマなどの動物の魂をカムイの国に送り出す祭りである「イオマンテ」も、この信仰に由来します。

また、アイヌの人々がカムイに語りかける時は、直接ではなく、木を削って作る祭祀具「イナウ」などを使い、それらを通すことで言葉が正しくカムイに伝わると考えていました。

もっとも重要な儀式だった「イオマンテ」

イオマンテは、アイヌの人々にとってもっとも重要な儀式の一つでした。アイヌの人々は、ヒグマの姿を借りて人間の世界にやってきたカムイを酒や供物などを捧げてもてなし、多くの土産を持たせてカムイの世界に送り出すことで、人間の世界への再訪を願いました。

イオマンテは、明治以降の同化政策による生活環境の変化などにより行われなくなりました。

▲『蝦夷島奇観』(国立国会図書館蔵)に描かれた「イナウ【木幣(もくへい)】」。イナウはカムイや先祖の霊と人間をつなぐ役割を持つ祭具で、柳やミズキなどの木の皮を剥いで作られた。捧げるカムイによってさまざまな形があった。

イオマンテの進行

集落で1~2年ほど育てた熊との別れを惜しみ、檻の前で踊り、供物を捧げる。
送りの儀式(イオマンテ)の前に檻から熊を引き出し、広場で遊ばせる。
熊を遊ばせたのち、丸太で熊の首を挟むことで熊の体をカムイと分離する。
祭壇にカムイと分離した熊の体を安置し、酒やイナウを捧げてカムイを送り出す。

『蝦夷島奇観』(国立国会図書館蔵)より。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』監修:和田 哲