記事のポイント コーチはバッグチャームを軸に、Z世代のリピート購入を促す「チャーム経済」を拡大している。 パーソナライズ戦略を実店舗・オンライン双方に導入し、売上59億ドルの成長を下支えしている。 エルメスやグッチも参入するチャーム市場は、ラブブ人気を契機に拡大し、世代横断的な文化現象となっている。
昨年、遊び心あるスタイリング小物として登場したバッグチャームは、コーチ(Coach)で本格的なビジネスドライバーとなっている。店舗では、それら(チャーム)は正面や中心にあり、マネキンに取り付けられたり、レジの近くに置かれたりして、購入者が戻ってきて自分の購入品をパーソナライズするように促している。結果として、50ドル(約7500円)の小物が新たな収益源となり、リピート購入までのサイクルが劇的に短縮されている。「もはや6カ月も待つ必要はない。いまは購入からわずか3週間で戻ってくる」と、コーチCEOのトッド・カーン氏はGlossyに語る。「バッグを買った顧客が数週間後にチャームやストラップ、ジュエリーを買いに来る。これが『チャーム経済』であり、その経済性は非常に魅力的だ」。価格帯は50〜95ドル(約7500〜1万4000円)。Z世代を中心とした若年層は、この手頃なアップグレードを通じてブランドと頻繁に接触し、自己表現の手段として楽しんでいるという。すでに数百万ドル規模の収益を生み出している。「単なるアクセサリーではない。個性を示す手段なのだ」とカーン氏は述べる。

「パーソナライズ」がブランド戦略の中核に

2025年度の決算で、コーチは59億ドル(約8850億円)の売上を記録し過去最高を更新した。北米では460万人の新規顧客を獲得し、その70%はZ世代かミレニアル世代だった。タビーやブルックリンといった定番バッグに加え、パーソナライズやアドオン(追加アイテム)が、若年層との関係構築の鍵となっている。グローバル・ビジュアルエクスペリエンス担当シニアバイスプレジデントのジオ・ザッカリエロ氏は昨年、「パーソナライズはもはや顧客体験の中心にある」と語っている。バッグやスニーカー向けのチャーム展開はすでに始まっており、ほかのカテゴリーへの拡大も検討されているという。実店舗ではチャームを視線の高さに陳列し、オンラインでは重ね付けやカスタマイズを訴求。シーズナルの限定チャームは数日で完売することもある。販売員には「物語を伝える存在」として、バッグ購入時に自然な流れでパーソナライズを提案する教育がなされている。「我々は50億ドルブランドだ。そこに100百万ドル規模のアイデアが必要だ。チャームはその位置にある」とカーン氏は強調する。

「チャーム経済」が示す強力な商業性

チャーム市場の収益性は他社事例でも裏付けられている。2024年、クロックス(Crocs)はジビッツ(Jibbitz)チャームで2億7100万ドル(約4060億円)の売上を記録し、全収益の8%を占めた。D2Cアクセサリーブランドのパーカー・サッチ(Parker Thatch)でも同様の動きが見られる。クリエイティブディレクターのジョイス・リー氏によれば、顧客はバッグ購入直後から「ほかに付けられるものは?」と求める傾向にあるという。同社の98ドル(約1万4700円)のミステリーバディ(開けるまで中身がわからないブラインドボックス形式のチャーム)ポーチは、母から娘への贈り物にも選ばれ、世代を超えた人気商品となっている。
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「単なるバッグ販売ではない。顧客がすでに持っているものを常に刷新できるエコシステムを築いている」とカーン氏は語る。

高級ブランドも参入 火付け役はラブブ

この潮流を受け、エルメス(Hermès)のロデオ・ペガスチャーム(530ポンド=約10万2000円)は転売市場で人気を博し、常にウェイトリストが発生。グッチ(Gucci)、プラダ(Prada)、ロエベ(Loewe)も専用チャームコレクションを発表した。チャームブームの起点は2024年初頭に遡る。ポップマート(Pop Mart)のキャラクター「ラブブ(Labubu)」がTikTokやインスタグラムで拡散し、デザイナーズバッグに取り付けられることで一大カルチャー現象となったのだ。K-POPグループ・ブラックピンクのリサも、英ロンドン公演でカスタムされたピンクのラブブをベルトに着けて登場し、話題を呼んだ。
@marieclaireuk

A custom Labubu for BLACKPINK’s London finale? That’s her life, life. Lisa (and her Labubu) proving she’s the ultimate rockstar.

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しかし、コーチやパーカー・サッチが掲げるのは、ラブブのようなレアアイテムとは異なる「手頃でモジュール的なアップグレード」だ。「顧客が自分の物語を語れるようにすること。単なる新規性ではなく、遊び心あるパーソナライズのためのツールを提供している」とリー氏は言う。「低い返品率、強い利益率、高い感情価値。経済性は非常に魅力的だ」とカーン氏も結論づけている。[原文:Luxury Briefing: Bag first, charm later - Coach’s formula for repeat Gen-Z luxury spending]Zofia Zwieglinska(翻訳・編集:戸田美子)