ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、証券取引法違反(インサイダー取引)の罪に問われた「村上ファンド」前代表、村上世彰被告らの第2回公判が1日、東京地裁(高麗邦彦裁判長)で開かれた。前日に引き続き検察側証人として出廷したライブドア(LD)元取締役、宮内亮治被告=同法違反の罪で公判中=は、2004年11月8日の会議で村上被告に「資金のメドがたったので、具体的に話を進めさせて下さい」と伝えたと証言した。

 検察・弁護側双方の冒頭陳述などによると、ニッポン放送株取得について、村上ファンドとLDは3回トップ会談を行っている。1回目は04年9月15日、2回目は同年11月8日、3回目は05年1月6日で、検察側は2回目の会合で村上被告はインサイダー情報の提供を受けたと主張しており、この会談の内容が最大の焦点になっている。この日の公判で宮内被告は、2回目の会合の時点で、LDは取締役会などの承認を経ていないものの村上被告側に同放送の経営権取得の意欲を伝え、また最終的には異なる方法で調達をしたものの資金のメドがついたことも報告していたことを証言した。

 宮内被告の証言によると、村上被告から04年9月に株取得を勧誘されて以降、担当者間でやり取りを行い、資金調達の見通しもついたので、LD元社長、堀江貴文被告=同=とのトップ会談をセッティングしたと説明。堀江被告も「よろしくお願いします」と意欲を伝えた。村上被告からは「金は大丈夫か」と聞かれたが、宮内被告は「(融資する)クレディ(スイス)もノリノリなんで、大丈夫です」と返答した。

 具体的方策については、堀江被告が村上被告に「TOBってありですかね」と尋ねる場面があった。同被告は「TOBは難しい」と難色を示したが、堀江被告は村上ファンドが過去に行った昭栄などへのTOBについて教えを請うていたという。さらに、堀江被告は「ポニーキャニオンはうちで必要」、村上被告がサンケイビルについて「うちが欲しい。PBR(株価純資産倍率)が1倍割れしているので、買って売れば利益が出る」などとニッポン放送の経営権を取得した後の話もしたと証言した。

村上被告、05年1月の会談で「俺の前でTOBなんて言うな」

 さらに証言によると、その後クレディ側との融資交渉が不調になったため、LDはエクイティファイナンス(新株発行に伴う資金調達)の検討を開始した。04年12月中旬になってリーマン・ブラザース証券からMSCB(下方修正条項付き転換社債型新株予約権付き社債)で500億円を調達する見通しが立ったため、突っ込んだ話し合いをするため、宮内被告は3度目のトップ会談をセッティングした。

 堀江被告が「TOBを考えている」と伝えると、村上被告は「インサイダーになるから、俺の前でTOBなんて言うな」と話したという。LDの取締役会が同放送株を5%未満取得することを決議したのは、06年1月11日。

 検察側が「あなた自身が個人として、(インサイダーのため)ニッポン放送株が買えなくなると認識したのはいつか」と尋ねると、宮内被告は「(最初に村上被告から株取得を勧められた)04年9月15日。相手の会社を買いたいと思った時からその株を買わないというのは、M&Aでは共通認識だ」と答えた。

 次回公判は18日。弁護側が宮内被告への反対尋問を行う。【了】

■関連記事
村上被告初公判「無罪と確信」(11/30)