村上世彰被告(資料写真:吉川忠行)

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ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、証券取引法違反(インサイダー取引)の罪に問われた「村上ファンド」前代表、村上世彰被告らの初公判が30日、東京地裁(高麗邦彦裁判長)で開かれた。罪状認否で村上被告は「無罪だと確信しております」と述べ、起訴事実を全面否認。一方、この日の午後に検察側証人として出廷したライブドア(LD)元取締役、宮内亮治被告=同法違反の罪で公判中=は、村上被告からニッポン放送株取得を提案された2004年9月15日のうちに金融機関の担当者に会って提案内容を伝え、「これをやるんだ、500億円貸してくれ」と頼んだと明かし、検察側の描く構図に沿った証言を行った。
 
 同じ罪に問われた法人としての投資顧問会社「MACアセットマネジメント」の丸木強代表も、起訴事実を全面否認した。

 固い表情で法廷に現れた村上被告は冒頭の意見陳述で、まず「最初に、多くの皆さんにご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」と謝罪したのち、「公訴事実について無罪であると確信しております」と述べた。

 検察側が、村上被告が04年11月8日に、LD元社長の堀江貴文被告=同法違反の罪で公判中=からニッポン放送株を大量取得する方針を聞いたとしている点について、同被告は「11月8日に堀江さんからニッポン放送の経営権を取りたいとの主旨の話を聞いたが、LDの資金調達能力や過去にせいぜい30億円規模のM&Aしか行っていない実績からすれば、時価総額1800億円のニッポン放送の経営権を本気で取るつもりになっているとは到底思えず、LD一流の面白おかしい大言壮語を聞いたという受け止め方だった」と述べた。

 インサイダー取引の嫌疑をかけられた理由について、「堀江さんらから話を聞いた日以降にニッポン放送株を買っていることがあると思うが、まったくの誤解だ。私たちは、ニッポン放送株をそれ以前から買っていた」と反論した。

 捜査段階では容疑を認めていたことに関しては「自白についても言わざるを得ない。検察官から『(元コクド会長の)堤さんは罪を認めたので、ほかの幹部は逮捕されなかった。堀江さんは認めなかったので、他の多くの人も逮捕された』と言われた。幹部全員が逮捕されればファンドが大混乱に陥るのは明らかだった」と話し、「投資家のため」にいったん認めたと強調した。その上で「私は法を犯す人間ではないという自分の誇り、尊厳のために事実を明らかにして、関係法令の解釈と適用を裁判所に判断してほしい」と訴えた。

 この後、「MACアセットマネジメント」の丸木代表も「検事さんから『否認を続けると逮捕者が多くなる』と言われていた。村上の逮捕前には4人が逮捕されるという情報があり、村上以外の幹部で話し合った。いったん罪を認めてしまうと引き返せなくなってしまうのではないか、という意見もあったが、村上に罪を認めてもらって投資家のためにがんばろう、ということになった。マスコミを避けるためにホテルにいた村上と電話会議をし、『みんなの総意なのか。それに従おう。俺はそういう男だ』と言われた。虚偽の供述をした判断が正しいか分からないが、裁判所には正しい判断をしてほしい」と述べた。

 これに対して検察側は冒頭陳述で、堀江被告は04年9月15日に村上被告から「LDが3分の1を買えば、うち(村上ファンド)の分と合わせて過半数になる。過半数を取れば、フジテレビも取れる可能性がある」という強い働きかけを受け、ニッポン放送株を大量取得する方針を決定したと指摘。村上被告は同年11月8日に堀江被告と面談した際、「やるとしたらTOB(株式公開買い付け)ですね」と言われたことを受け、高値で売り抜けられる可能性が高まったと判断して部下に「ニッポン放送をできるだけ買え」と指示したことを明らかにした。