AIを使って子どもの性的な画像を生成した男に懲役18年の判決が下る
AIを用いて実在する児童の画像から性的な画像を生成した男性に、懲役18年の判決が下されました。
Man who created indecent images using AI-enabled technology sentenced to 24 years | Greater Manchester Police
https://www.gmp.police.uk/news/greater-manchester/news/news/2024/october/man-who-created-indecent-images-using-ai-enabled-technology-sentenced-to-24-years/
Man who used AI to create child abuse images jailed for 18 years | Crime | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2024/oct/28/man-who-used-ai-to-create-child-abuse-images-jailed-for-18-years
2024年8月、イギリス・ボルトン出身のヒュー・ネルソンが、グレーター・マンチェスター警察の捜査により16件の児童性的虐待罪で有罪判決を受けました。グレーター・マンチェスター警察によると、ネルソンは3Dソフトウェアの「Daz 3D」を使い、実在する児童の写真を性的なものに変えていたそうです。児童性愛者が実在する子どもの写真を提供し、性的な画像の作成を依頼するケースもあった模様。
ネルソンは作成した性的な画像をインターネット上で販売し、そこで他の犯罪者と児童性的虐待について話し合っていたことも確認されています。なお、ネルソンは18カ月にわたってインターネット上で児童の性的画像を販売しており、これにより約5000ポンド(約99万円)を稼いでいます。
これまでも「ディープフェイク」で有罪判決を受けるケースはありましたが、ネルソンは実際の写真から3Dのキャラクターを作成し、性的な画像を生成していました。
ボルトン刑事法院で今回の判決を下したマーティン・ウォルシュ判事は、ネルソンが作成した画像が原因で児童が強姦されたかどうかを「知ることは不可能」と言及。ネルソンに対しては、「恐ろしく不快」な画像を生成・配布することで引き起こされる被害を全く考慮していなかったと述べました。さらに、ウォルシュ判事は「あなたが作成し、他者に公開しようとした画像に表れる悪行の深さには限度がないようです」とも付け加えています。
ネルソンはインターネットのチャットルームで覆面警官に対し、「写真ベースで性的な3Dキャラクターを作成するのに80ポンド(約1万6000円)かかる」と告げ、逮捕されたそうです。
裁判において、検察側のデイビッド・トール氏は「被告は『殴打、窒息、絞首、溺死、斬首、死体安置、獣姦、挙げればきりがない』と笑いの絵文字を添えて述べました」「被告は自分が下劣な人間だと感じ、心が腐敗していたと話していました」「被告は自分の犯罪行為が制御不能になっていたと考えていました」などと述べました。
警察がネルソンの自宅を捜査したところ、同氏は3人の人物とメッセージを交換して、13歳未満の児童への強姦を奨励していたことも判明。なお、ネルソンは他人に強姦を勧めた罪でも有罪判決を受けており、警察はイタリア・フランス・アメリカを含む複数の国で容疑者と被害者を特定することにも成功しています。
児童保護局の専門検察官であるジャネット・スミス氏は、「ヒュー・ネルソンが子どもの普通の写真を撮り、AIツールとコンピュータープログラムを使ってそれを加工し、最も悪質な画像を作成し、オンラインで販売したり共有したりできたことは非常に憂慮すべきことです」「テクノロジーは急速に進化しており、残念ながら、子どもたちに対するリスクも高まっています。この有罪判決が、テクノロジーを悪用し、子どもたちに危害を加える人々への明確なメッセージとなることを願っています。あなた方は法執行機関によって厳しく追及され、児童保護局によって起訴され、裁判にかけられるでしょう」と言及。
AIによる性的虐待画像は警察活動に新たな課題をもたらしており、他の警察もグレーター・マンチェスター警察に新たな捜査の支援を求めています。グレーター・マンチェスター警察の性犯罪者管理部門で働くジェン・タッターソール警部補は「この事件が他の事件と大きく異なるのは、『児童のわいせつな画像とは何か』という見方に疑問を投げかけるものだからです」「コンピューター生成画像の流行は、グレーター・マンチェスター警察だけでなく他の警察でもますます広まりつつあります。そのため、ある時点でコンピューター生成画像は例外から標準となるでしょう」と語りました。
今回の事件はデジタル加工されたわいせつ画像に関する法律を「実際に試した初めての事件」であり、グレーター・マンチェスター警察は児童保護局や国家犯罪対策庁の専門家と協力して起訴を進めたとタッターソール警部補は語っています。
タッターソール警部補はAIが法執行機関にもたらす恩恵もある一方で、ますます高度化する技術が警察にとっての大きな脅威となる可能性についても言及。AI技術が既存の法律よりも速く進化するリスクがあると警告しました。