子どもの成績アップに効果的な食材は何か。管理栄養士で健康料理研究家のマリー秋沢さんは「頭の働きをよくするには『糖化』を防ぐことが重要だ。日本における糖化研究の第一人者・同志社大学糖化ストレス研究センターの八木雅之教授は、抗糖化作用のある食材はポリフェノールを豊富に含んでいることを発表している。梅干しとお酢、ルイボスティと緑茶など、ここでは5つの食材を紹介する」という――。

※本稿は、マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liudmila Chernetska

■子どもの成績アップに効果的な食材ランキング

子どもにとって、とても大切な食事で、実際にどんな食材を選んでいくといいのでしょうか? 本稿では、子どもの成績アップにとくに効果的な食材を選び、ランキング形式で紹介します。

ポイントは、「栄養価の高さ」「スーパーマーケットなどで購入しやすいこと」「子どもが食べやすいこと」です。「これが絶対」というのではなく、「こんな観点で選んでいくといいんだな」と参考にしていただけると幸いです。

まず、考えていきたいのは、「糖化」です。糖化は脳細胞の働きを低下させる大きなリスクファクターです。

そのいちばんの原因は血糖値スパイクです。糖質たっぷりの食事やお菓子を食べるたびに、血糖値スパイクはくり返され、糖化がじわじわと進んでいきます。そうして、やがてAGEs(終末糖化産物)がつくられます。

現在は、離乳したばかりの頃から、1日3〜5回も、お米や小麦粉などの糖質メインの食事をする子どもが増えました。離乳食がすでに血糖値スパイクを引き起こす原因になっているケースも多いのです。

ただし、糖化の度合いが低い段階ならば、血糖コントロールを行なうことで改善させていくことができます。また、いったんできてしまったAGEsも抗糖化作用のあるものを食べることで、分解・排出できることがわかっています。

このことを長年にわたって研究されているのは、同志社大学糖化ストレス研究センターの教授である八木雅之先生です。日本における糖化研究の第一人者です。

八木先生の研究チームは、身近な食材や健康茶、ハーブなどを数百種類も1つひとつ調査し、どんなものに抗糖化作用があるのか、何が抗糖化作用をもたらしているのかを研究されています。結果、ポリフェノールが豊富な食材に抗糖化作用が高いものが多いことがわかっています。

抗糖化作用の高い食材として、図表1の5つを紹介します。

出所=『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)

■受験生に「おすすめの甘味料」はこの4つ

抗糖化作用に優れた食品をとる一方で、糖化を起こす食品を避けることも大切です。

最近は「糖類ゼロ」をうたう商品も増えましたが、糖類とは、糖質のほんの一部。糖質には多糖類、糖アルコールなどが含まれ、糖類以外にも、血糖値を急上昇させるものはあります。「糖類ゼロ」の商品では、血糖コントロールができない可能性が高いことを知っておいてください。

一方、「糖質ゼロ」であれば、糖類を含むすべての糖質の量が、食品100g当たり0.5g未満と定められています。血糖値が急上昇する心配はありません。「糖質ゼロ」の商品は、血糖コントロールに活用できる食品、ということです。

なお、糖類のなかにも血糖値を上げにくいものがあります。そのなかでも受験メシの調理に活用していきたい糖類を4つ紹介します。

◎ ラカンカ ウリ科の植物「羅漢果(ラカンカ)」からつくられた甘味料。「長寿の神果」として数百年もの食経験がある。甘さは砂糖の100〜200倍も。スーパーでも「ラカント」という商品が販売されており、日常の調理にも活用しやすい。

◎ アルロース(希少糖) 果糖を原料につくられる甘味料。「希少糖」ともいわれるように、自然界に微量しか存在しない天然由来の甘味料。低カロリーの甘味料としては比較的新しいが、アメリカではすでに浸透している。

◎ フラクトオリゴ糖 玉ネギ、ニンニク、アスパラガス、バナナ、トマトなどの野菜や果物にも含まれるオリゴ糖。胃や小腸から吸収されず、腸内のビフィズス菌のエサになり、腸活にもよい。

◎ ステビア キク科の多年草「ステビア」の葉からつくられる甘味料。甘さは砂糖の約200倍で、少量加えるだけで十分な甘味を味わえる。

これらの甘味料をストックしておくと、血糖値を気にせず調理できて便利です。

■記憶力や集中力、やる気を親の食事で援護射撃

記憶力や集中力、頭の回転、やる気は、食べもので高めていくことができます。

受験勉強をがんばるのは子ども自身ですが、食事という強力な武器で援護射撃をしていけるのは、親御さんだけに与えられた特権です。

そこで大事になってくるのが、脳内ホルモンです。

受験勉強でより重要になってくるのは、セロトニン、メラトニン、ドーパミン、GABAという脳内ホルモンの働きです。その分泌量を増やすには、食事から材料となる栄養素をとっていくことが必要です。

脳内ホルモンの第一の材料はたんぱく質。そして、たんぱく質がアミノ酸に分解され、それぞれの脳内ホルモンに合成されていく際に、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6、鉄、そしてマグネシウムという栄養素が必要になります。

ここでは、これらの脳内ホルモンを増やしつつ、脳細胞の健康によい食材を5つ、ランキング形式で紹介します。

なお、たんぱく質のとり方で、1つだけ頭に入れておいてほしいことがあります。

それは、「アミノ酸スコア」という考え方です。私たちが口から入れたたんぱく質は、小腸で20種類のアミノ酸に分解されます。このうち、体内で合成できず、食事から摂取する必要のある9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。

食品は、その種類によって必須アミノ酸の含有量が異なります。必須アミノ酸の働きは、9種類のなかでもっとも少ないアミノ酸のレベルに制限されてしまう、という性質があります。つまり、ほかのアミノ酸の含有量がずば抜けて多くても、1種類でも少ないものがあれば、余剰分は使われずに排出されることになります。

そこで、栄養学では「アミノ酸スコア」という数値を示しています。アミノ酸スコアが100の食べものは、理想的なアミノ酸バランスを持つたんぱく源であることを表します。

紹介する図表2の5つは、すべてアミノ酸スコアが100の食材です。

出所=『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)

■「睡眠の質」は「朝食のたんぱく質量」で決まる

受験日が近づいてくると、睡眠時間を削って勉強する子が多くなります。

ですが、睡眠不足は、脳の働きを低下させます。

睡眠中、脳の神経細胞は、修復と再生を行なっているというのに、睡眠を削っては、日中に傷ついた神経細胞を修復できなくなります。しかも、集中力や注意力、判断力などにかかわる前頭葉は、睡眠不足によるダメージを負いやすいのです。

写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan

こうした状態で勉強しても、脳は学んだことを十分に定着させられません。何より、メンタルを不安定にします。不安感や焦りが大きくなれば、やる気は落ちます。

そこで重要になってくるのが、幸せホルモンのセロトニンと睡眠ホルモンのメラトニンです。日中には意欲的に勉強し、夜になったら眠る。このサイクルをつくり出してくれるのが、セロトニンとメラトニンなのです。

じつは、睡眠の質を上げるため、朝食の役割は重要です。というのも、必須アミノ酸であるトリプトファンの朝食時の摂取量と寝起きの状態には、相関関係があることがわかっています。朝食でのトリプトファンの摂取量が少ない子は寝起きが悪いことが多く、トリプトファンの摂取量が多い子は寝起きがよいとも報告されています。

では、どの程度の量のトリプトファンをとるとよいでしょうか。最低でも、朝食に300〜400mgが必要とされています。朝食づくりの参考にしてください。

〈平均摂取量〉 〈トリプトファンの含有量〉

魚(100g) 215mg
肉類(100g) 205mg
納豆(48g) 98mg
卵1個(50g) 90mg
牛乳(100ml) 45mg
味噌(20g) 25mg

■どんな脂質をとるかで「メンタルの強さ」も変わる

受験が近づいてくると、子どものメンタルはだんだん不安定になっていきます。

イライラして怒りっぽくなることもあるでしょう。模試の結果に深く落ち込んでしまうこともあると思います。

子どもにしてみれば、人生をかけて勉強しているのですから、不安になるのは当然。ただ、いかにすばやく切り替えて前を向けるのか――ここが重要です。

メンタルの不安定さも、ポジティブさも、感情をつくり出しているのは、脳です。

では、脳は何からできているのでしょうか? 私たちの脳は水分を除くと、半分以上が脂質です。もちろん、脂質は自分が食べたものからできています。

「物事をポジティブに考えられる脳をつくってあげたい」――。

その思いは、毎日の食事づくりで実現できるのです。

ここでは、「脳にいい脂質&栄養素」という観点からおすすめの食材ベスト5(図表3)を紹介します。

なお、脳の健康を考えたら、できるだけ摂取を控えたい脂質があります。

それは、「トランス脂肪酸」です。脳の神経細胞は、DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸が20%以上含まれることで情報を正しく伝達できる、とされています。

ところが、オメガ3系脂肪酸が不足してしまうと、かわりにトランス脂肪酸が脳内で使われます。こうなると脳の働きが低下する危険性が出てきます。それはつまり、思考力が落ち、物事をマイナスにとらえやすくなる、ということです。

トランス脂肪酸には、天然のものと加工によってできるものがあります。問題なのは、加工によってできるトランス脂肪酸。植物性の油に水素を添加すると、固形の油ができます。そこにトランス脂肪酸は多く含まれます。

具体的には、マーガリンやショートニングなどです。これらを使ってつくられたパンやケーキ、クッキー、スナック菓子、レトルト食品、ファーストフードのポテトフライやフライドチキンなどの揚げものも、トランス脂肪酸が多くなります。

■脳を活性化させるには「青魚の刺身」がいちばん

受験メシでは、魚の摂取量を増やしていきましょう。

魚には、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」などオメガ3系の脂肪酸が豊富に含まれます。

米国神経学会(AAn)は、「中年期にオメガ3系を含む食品を多くとっている人は、ほとんど食べていない人に比べ、思考力が優れ、脳も健康の傾向がある」という研究を発表しています。

また、DHAとEPAは、認知力を高める可能性があるとも報告しています。認知力とは、記憶や論理的思考、注意、問題解決、読み書き、学習などを行なう脳の能力のこと。一言でいえば、受験勉強に必要なあらゆる脳の働きのことです。

DHAやEPAは青背の魚に豊富です。主には、

「カツオ、マグロ、サバ、ハマチ、ブリ、サンマ、イワシ、鮭」などです。

これらの魚には、認知機能を高める油がたっぷり含まれているということです。

ただし、とくに食物連鎖の上位に位置するマグロの摂取頻度には注意が必要。マグロは栄養価が非常に高い魚ですが、水銀を多く含んでいることが問題です。

水銀は生体内に蓄積しやすく、大型の回遊魚であるマグロは、小魚が持つ水銀をそのままとり込んでいます。水銀は脳神経や脳血管に悪影響を及ぼすことが知られています。

したがって、マグロの摂取は週に1回程度にとどめることが推奨されます。

マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)

もう1つ、注意点があります。オメガ3系は加熱すると劣化しやすいことです。

ですから、脳の健康を考えると、魚は刺身で食べるのがいちばん!

とはいえ、毎日刺身を食べるというのも、現実的ではありませんね。

魚を加熱すると、オメガ3系が2割ほど失われると見られています。そのことを考慮し、「焼く、蒸す、煮る」など、調理法を工夫して毎日食べるのがベスト。なお、ホイル焼きにして汁までとると、オメガ3系を効率よく摂取できるでしょう。

出所=『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)

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マリー秋沢(まりー・あきさわ)
管理栄養士、調理師、健康料理研究家
一般社団法人日本ニュートリションフーズ協会代表理事。有限会社ビューティーニーズ代表。アメリカ・ミシガン州生まれ。上智大学国際教養学部卒業。元ミスユニバース近畿代表。健康、免疫力維持、生活習慣病予防、アンチエイジング、長寿などをテーマに活動し、充実した食と栄養、ライフスタイルを提案する機関として、2019年に日本ニュートリションフーズ協会を設立、現在に至る。子どもの食育にも熱心で、2022年アメリカの出版社Rowman & Littlefieldから『Eating The Shokuiku Way』を出版。アメリカの子どもの肥満率が40パーセントを超すことに危機感を抱き、日本の食育をアメリカに広げる活動も行なっている。簡単でおいしい糖質オフレシピには定評があり、各地で料理教室や講演会を開催。メディア出演など多方面で活躍中。
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(管理栄養士、調理師、健康料理研究家 マリー秋沢)