(C)蒼星きまま・徳間書店/星鳩町きのこ研究所  撮影/真下裕(Studio WINDS)

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10月3日(木)より放送・配信中のアニメ『きのこいぬ』。愛犬を失い、傷心の絵本作家・夕闇ほたる。彼の前に現れたのは、片耳がきのこになっている謎の生物・きのこいぬ。ふたりの不思議な共同生活が、きっとあなたを癒してくれる……。

今回は、矢良を演じる寺島拓篤さんと、こまこを演じる永瀬アンナさんに、それぞれの役や作品について、またアフレコ現場の様子などを伺った。

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◆矢良はすごく難しい人物◆

――出演が決まったときのお気持ちからお聞かせいただけますか。

寺島 まずはびっくりしました。元々原作連載時のファンで、何年も前にファンだと公言していたら、蒼星先生にご反応いただいたこともあったんです。それが時を経てアニメ化するということをうかがって、単純にいちファンとしてすごく嬉しかったです。
最初はほたるのオーディションを受けて、そのまま矢良も受けてくださいって言われて、どうなるんだろうと思っていたのですが、まさか決めていただけるとは……! 嬉しいのは間違いないんですが、ファンとしての意識が強かったので、関わりたいとか出たいとか、『きのこいぬ』はそこまで考えたことがなかったんです。だからびっくりしたのと、最終的にはやっぱり嬉しかったですね。

永瀬 私も素直にすごく嬉しかったです。オーディションを受けている方がすごく多かったので、正直全く自信がなかったんです。前の方がやっている演技が漏れ聞こえてくると、「ああ、そっちの方向か」と、私の考えてる方向と全然違うお芝居をされている方や、声質が私と全く違う方もいらっしゃったりして、不安になりながらも自分の考えてきたこまこちゃんを演じました。無事に決まってすごく嬉しかったです。

――こまこと矢良を演じるうえで難しかったことや、楽しかったこと、意識して演じたことがあれば教えていただけますか。

寺島 矢良は突然のオーディションで全く練習していなかったので、オーディションでどうやったのか記憶が全くないんです。実際にアフレコが始まると、最初の頃の矢良はビジュアルが相当強くて。

永瀬 確かに(笑)。

寺島 髪型は落ち着くのですが、矢良は目が描写されていないので表情が汲み取りきれないんです。表情もそうですし、ほたるやこまこちゃんなど、他人への対応が不思議な距離感の人だったので、すごく難しいなと思いながら未だにやっています。

永瀬 普通じゃない(笑)。ちょっと独特なんですよね。

寺島 それが彼にとっては自然というのもまた難しい。彼の、何かをやろうっていう気概があるところ以外をどうやって演じればいいのか、いつもすごく悩んでいます。

永瀬 逆にこまこは登場人物の中で一番普通というか、きのこいぬに対しても「何コイツ」という不信感を持っています。ほたるは普通に受け入れているように見えますが、私はちょっといぶかしんで見ています。
あとは役者あるあるなんですが、自分の経験にないものを演じるので、めちゃくちゃ想像するんです。私は会社員を経験したことがないので、実際に私の親戚で編集をやってる方にお話を聞いて想像をかき立たせてこまこのキャラクターを作っていく作業は楽しかったです。

寺島 ものすごくちゃんとしてる。

――きのこいぬとほたるの印象や、演じる小林大紀さんと上村祐翔さんの印象についてもお聞かせください。

寺島 とにかくきのこいぬが可愛くて仕方なくて大好きです。急にたこ焼き食べたり、どんどん進化していくこの生き物は何だ? ほたるにとってはどういう存在なんだろう? といつも想像していました。可愛いマスコットだと思っています。僕、マスコットキャラが好きなんです。
ほたるは主人公なので心情がよく描かれていて、彼の心情をいち読者として読んでいくうちに、支えてあげたいような気持ちになる中で、きのこいぬやこまこちゃん、矢良君たちがいて本当に良かったなと安心しました。ほたるは周りの人に恵まれて良かったね! という気持ちでいつも読んでいました。

永瀬 きのこいぬは本当に何をするのかわからない予測不能な生き物ですごく不思議に感じますが、そこがすごく愛おしい。不思議な日常に刺激もあって、楽しそうですね。それに小林さんがピッタリなんです。

寺島 すごいよね。

永瀬 原作を読んでいたときは、きのこいぬの声を全く想像できなかったんですが、小林さんの声によってさらに表情豊かになって! ほたるも、上村さんがピッタリですね。第1話のはなこが亡くなって悲しみに暮れるほたるのお芝居が絶妙で。魂が体から抜けていってしまったような、弱々しく閉じ切った心情の表現がすごく繊細で。

寺島 小林君のきのこいぬはホントに可愛いです! ほたるは、オーディションを受けたときに、「あまり暗くなりすぎないでください」と言われたんです。その時の僕は作り過ぎていたのかもしれないですが、上村君の自然体な感じが絶妙にハマっています。彼の元々のお芝居の質が、本当にほたるにハマっているんです。落ち込んでいる部分や、きのこいぬに出会って明るくなる部分がちょうどいい塩梅になっている。「ハマる」ってこういうことなんだなって感動しました。

永瀬 先日聞いたんですが、上村さん自身も飼っていた犬を亡くした経験があるそうで、リンクする部分がすごくあったと聞きました。これははなるべくして。

寺島 なるべくしてなったんだね。本当に。

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◆こんなにほのぼのした現場はなかなかない◆

――では、永瀬さんから見た寺島さんが演じる矢良の魅力と、寺島さんから見た永瀬さん演じるこまこの魅力をそれぞれ語っていただけますか。

寺島 こういうの恥ずかしいよね。

永瀬 向き合ってますし(笑)。

寺島 永瀬さんとちゃんとご一緒するのが初めてで、こうしたやり取りをするすることはなかったんです。でもすごく上手い若い子がいるっていうのはいろいろなところで聞いていて、実際に会ってみたら本当にそうでした。

永瀬 イエ―い!

寺島 「イエ―い!」って言えるところがいいところだと思います(笑)。
こまこちゃんって、大人の女性で会社に務めていて、いろいろな人を管理するポジションですごくしっかりした人だと思うんです。そんなこまこちゃんをどういう風に演じるんだろうって思っていたら、本当に信じられないくらいハマっていますよね。何度も言うようですが原作ファンだったので、このキャラクターにはどんな人がハマるんだろう? と、僕の中でイメージが固まらずにいました。いざワクワクしながらアフレコ現場に来てみたら、こんなにピッタリな人がいるんだって思いました。上村くんもそうですけれど、声優としてこのしゃべりは、僕にはできないラインなんだと思います。どうやったらこの若さでこんなことができるんだと、すごく驚いています。
本当にハマっているので、こまこちゃんの存在感がめちゃくちゃリアルだなと感じるんですよね。作られた存在というより、本当にいるんだなという感じがして、それに毎回驚いています。驚くほど絶賛しちゃいました(笑)。

永瀬 ありがとうございます! 寺島さんは落ち着きがあって、いつでも冷静に物事を見て慌てず行動するようなクールな方です。そんな寺島さんが淡々と変なことを言っているところがすごく面白くて。塩梅が絶妙なんです。ギャグとシリアス、その境目ギリギリを攻めるような演技の組み立てをされていて、頭の良さや知性をすごく感じました。寺島さんのお芝居でより矢良の魅力が増したと思います。

寺島 ありがとうございます。

――アフレコでの印象的なエピソードがあったら教えていただけますか。

寺島 差し入れで、たこ焼きをいただいたのは印象的でした。休憩時間に「わあ!」って声が聞こえて、なんだなんだ? と思ったらたこ焼きが大量に。

永瀬 大量にありましたね。あとはきのこいぬのぬいぐるみがいつも置いてあって癒やされました。「きのこいぬがいる!」って。

寺島 毎回楽しいですよね。幅広い世代の声優が集まって、みんな集中力をもってしっかりとしたアフレコを楽しくやっていて、良い現場だなって思います。すごく良い刺激をもらっていますね。

永瀬 作品自体がすごく優しくて楽しいから、休憩時間も和やかです。私はわりとアクションがあったり、激しい作品に出ることが多かったので、こんなに心が安らぐ現場がなかなかなかったんです。

寺島 こんなにほのぼのした現場はなかなかないですよ。
あと作品の中では、めちゃくちゃ贅沢な「間」の使い方をしています。

永瀬 そうですね。すごく丁寧に作られているので、第1話のときなんかは映画かと思いました。映画館で見たいと思うくらいに、すごくたっぷりと「間」が使われていて、作品の世界観や雰囲気が良く表れているところだと思います。

――最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

寺島 作中に流れる空気をものすごく大事にした、素晴らしい「間」の使い方をしています。ご覧いただく皆さんは主にほたるの心に寄り添った見方になると思うのですが、バッチリ作品に浸れるような作りになっています。原作ファンの方には確実に面白いと思ってもらえるものができてると思っていますし、初めてこの『きのこいぬ』に触れるという方は、絶妙なこの謎の生き物の刺激を受けることができる、とてもいい作品に仕上がっていると思うので、じっくりゆったり楽しんでいただきたいと思います。

永瀬 まず『きのこいぬ』の面白さ、楽しさに触れて欲しいです。そして、ほたるの心情の変化に注目していただきたいです。きのこいぬを通して出会った人々との思い出、つばきちゃんやあんずちゃん、プラムとの交流。きのこいぬと出会ったことで生まれた新しい日々を、ほたるがどう過ごすのか是非一緒に見守っていただきたいです。全てに愛が詰まっています。楽しんでいただけたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

(C)蒼星きまま・徳間書店/星鳩町きのこ研究所