それぞれの孤独のグルメ

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腹が 減った。

営業先でひと仕事終え、路上でそう気づく輸入雑貨商・井之頭五郎。

よし、店を探そう。

ひたすら己の感覚を頼りに歩き、ここぞという店を見つけ、気ままに料理を味わう至福のひととき。
松重豊さん演じる井之頭五郎の〈自由に空腹を満たす姿〉が愛され、大ヒットとなったのが、ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京)です。

放送開始から12年となったいまもなお、視聴者を魅了しつづける「孤独のグルメ」を深ボリしたい!
そんなオレンジページの思いに快諾をいただき、撮影の裏側に潜入しました。

あの「孤独のグルメ」はどうやってできるのか? 
出演者やスタッフインタビュー、撮影ルポなど、全3回の記事でその魅力をお伝えします。


まずは新作「それぞれの孤独のグルメ」第4話で主役を演じた、ユースケ・サンタマリアさんにお話をうかがいました。

出演は〈自分らしい食べ方〉を見つめなおす機会に



ーーーオファーがあったときは、どんなお気持ちでしたか?


最初はけっこう軽い気持ちだったんです。
「え、おれも孤独のグルメ、出れるの? やったぁ」みたいな(笑)。

「孤独のグルメ」って深夜のグルメドラマの元祖というか、ちょっと普通のドラマと違いますよね。
松重さん演じる主人公の五郎が、野生の勘でおいしい店を見つけ、食事を満喫する。
それこそが楽しいドラマで、本来、ほかの俳優に主役が回ってくるなんてありえない。
ところが今回は特別編ということで、各話で主演が交代し、それぞれに「孤独のグルメ」を見せる。
これは「おもしろそう!」ってなりますよね。
僕だけじゃなく、出演されるかたはみんなそう思ってオファーを受けたんじゃないかな。


〈魅惑のメニューの数々につい笑みが……。
Ⓒテレビ東京〉


ーーー撮影にはワクワクして臨んだ感じでしょうか?


それが、だんだん撮影日が近づくにつれて、緊張してきちゃって。
食事のシーン自体はいろんなドラマで登場しますけど、普通はそこで会話のやりとりがある。
セリフを言わなきゃいけないから、実際は口の中にあまり食べ物を入れないんですよ。
まして、味わうなんてしたことがない。
演者としては、どう食べている感を出しながら、いかに食べないかがテーマ、というか……。

それが今回は、真逆。料理を味わい、満喫する。
演じるのは、食事との真剣勝負です。
これは、大変なことを引き受けちゃったな、と。

ーーー食べているところをあんなに撮られることってあまりないですよね。


ですよね。
正直、人前で食べること自体、僕はめちゃくちゃ恥ずかしいタチで。
だれかと食事に行っても、おしゃべりがメイン。
食べている姿をあまり人に見せたくない。
かなり気を許した人の前じゃないと、リラックスして食べられないんです。
それを今回はカメラで撮られながら……でしょう? 
同業者の松重さんがずっとやってきた! というのを心の支えにしてがんばりました。


〈「あの人、何を頼んだのかな……」。五郎(松重豊)の注文が気になるワンシーン。
Ⓒテレビ東京〉


松重さんはじっくり力強く食べる。撮影のとき、後ろから見ていたんですが、そしゃくする筋肉がみしみし動いているのを感じたほど。
あのおいしそうに食べる感じはかなわない。
だったら……、と僕は僕なりの食べ方でやらせていただきました。
ちょっとワンパク食い、という感じかな? 
五郎との違いも楽しく見てもらえたらうれしいです。


〈よし、いただきます! 箸でつまんだ揚げものは「キッチン オニオン」の名物〈雲丹クリームコロッケ〉。
Ⓒテレビ東京〉


ーーー松重さんから食べるシーンについてのアドバイスはあったんでしょうか?


僕から何かきく前に、先回りして、これでもかってアドバイスをしてくれました。
こっちの不安を察して「大丈夫だから」と、とても気をつかってくださったと思います。
まず「熱さに気をつけて」と。
ここ、ちょっと盲点だったので助かりました。

あと「どう食べてもいい、脚本は無視してくれ」って。
たしかに脚本はいろいろ書いてあるわけです、虫のいい理想が(笑)。
「箸でハンバーグをバッと切って口に運ぶ」とか、本番でうまくいくとはかぎらなくて。

箸で切るには熱いうちじゃないとむずかしいけど、すぐに口に入れるとやけどしちゃうんですよね。
ラーメンならフウフウしても絵になるけど、洋食だとそれもヘンだし、いったん口に入れたら、とにかく熱くても食べないわけにはいかない。
食べる前に一瞬唇にちょっとつけて、温度を確認してから口に入れる方法もあるとか、そういうテクニックを教えてくれました。
あんまり早く白めしを食べちゃうと、バランスが悪くなってご飯のお代わりをするはめになるぞ、そこは考えたほうがいい、とか。 


〈本番の合間、松重さんとにこやかに話すユースケさん。〉


ーーーお店での撮影時は、松重さんもごいっしょでしたね。


そう、「それぞれの孤独のグルメ」は松重さんが企画プロデュースということもあって、モニターの前で〈井之頭五郎が見てる〉状況。

「やばい……。いまの食べ方、おいしそうに見えないとか言われたらどうしよう」と、初めは緊張しますよね? 
でも、食べ方の演技に関しては俳優をリスペクトしてくれて、ようはこっちにおまかせなんです。
モニターでは画的(えてき)にどうかとか、そういうところをチェックしてたみたいで。

半日かけて食べるシーンを撮っていったんですが、松重さんはカットが終わると「最高にいい」「すごくよかった!」と何度も声をかけに来てくれて。
普通に一生懸命食べればいいんだ、と安心しました。

松重さんの大事なドラマでもあるし、下手なことはできないな、という気持ちで臨んだんですが、チーム感ができ上がっていて、撮影もサクサクと早い。
いい意味で「参加させてもらっている」という感覚が強い現場でしたね。


〈スタッフおそろいのTシャツにはローマ字で「KODOKUNO GOURMET」の文字が。このTシャツは松重豊さんが用意したそう。〉


ーーーご自身で何か食べ方のプランは立てられたんでしょうか?


考えたら逆にわからなくなるんで、ノープランでいきました。
「これから食べはじめる」っていうきっかけになるものだけ決めて、あとは流れにまかせて、みたいな。
松重さんに「ふだん食べるときのクセもいっぱい出してくれ」って言われたんですよね。

クセっていうと、僕はサラダとかあると、最初にそれを全部食べちゃう。
野菜で胃を慣らしたいというか。
たとえば、焼き肉に行ったらまずサラダとキムチを頼んで、それをたいらげてから肉なんです。
だから「初めにキャベツだけ全部食べちゃってもいいんですか?」ってきいたら、松重さんから「全然いいよ!」って。
見ている人がちょっと不思議に思うよな、と今回はやめましたけど(笑)。

とにかく自分のカラーを出してくれ、せっかくこういう機会だから、いろんな人の食べ方を見せてほしい、と言われました。
結果、ふだんの僕の食べ方に近い姿を見ていただけると思います。
もちろん、映像になったときに自然に見えるようにちょっと盛ったり、工夫はしていますが。

 「脚本は気にしなくていい」って言うから、どうなるんだろう、脚本家さん、それでいいの?……なんて思っていたんですが、現場に行ったらしっかり信頼感があるのがわかりました。
脚本家さんも現場にいて、その場で俳優の感想を聞いて、モノローグをどんどん書き換えていく。

松重さんが一つ一つ「こういう味だった」「こういう料理だった」と説明して「ここはこうしよう」と現場で最終稿ができ上がる。チーム一丸で真摯に作っているドラマなんですよね。

***

「孤独のグルメ」チームが、多彩なゲストを迎えて制作した「それぞれの孤独のグルメ」。食事シーンだけでなく、さまざまな職業の仕事シーンが描かれるのも見どころです。

後編では、ユースケ・サンタマリアさんが演じた行司役についても語っていただきました。


〈Ⓒテレビ東京〉


〈PROFILE〉
ユースケ・サンタマリア
大分県出身。1994年、ラテンロックバンドのボーカルとしてデビュー。俳優、司会者、タレントとして幅広く活躍。2006年映画「交渉人 真下正義」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞。24年のNHK大河ドラマ「光る君へ」で安倍晴明役を演じ、話題に。水曜夜10時から放送中のドラマ「全領域異常解決室」(フジテレビ)に荒波健吾役で出演中。


テレビ東京開局60周年連続ドラマ 孤独のグルメ特別編
「それぞれの孤独のグルメ」


■放送日時
2024年10月4日(金)〜 毎週金曜深夜24時12分〜24時52分 
■放送局
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
■配信
各話放送終了後から、動画配信サービス「Lemino」「U-NEXT」にて第1話から最新話まで独占見放題配信
広告つき無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東 HP、TVer、Lemino)にて見逃し配信
▶テレ東HP:https://video.tv-tokyo.co.jp/


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