NHKスペシャル『ジャニー喜多川』ラスト7分間の衝撃 “雪解けムード”ぶち壊した「報道部の覚悟」

写真拡大 (全2枚)

ジャニー喜多川氏の性加害問題を扱った10月20日放送のNHKスペシャル『ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像』が波紋を広げている。

旧ジャニーズ事務所は一連の問題で解体され、現在は東山紀之を社長とした補償会社『スマイルアップ』(SMILE社)、タレントのマネジメントなどを行う『スタートエンターテイメント』(STARTO社)にわかれた。

性加害問題の責任の一端はジャニーズをタブー化したメディア側にもある。

同番組はメディアとして、公共放送としてジャニーズ問題の裏側やそこに至る経緯を検証。ジャニー氏はもとより、事務所を事実上支配していた姉の故メリー喜多川氏に焦点を当て、いびつな業界構造を伝えた。

ぞんざいな態度だったスマイル社の補償本部長

特にインパクトがあったのが、ラスト7分間だ。

ジャニーズ事務所の由来となった初代『ジャニーズ』の故中谷良さんの姉・幸子さんがスマイル社に補償を求める場面が流された。幸子さんがNHKのカメラの前で話していることを知らない通話相手のスマイル社の補償本部長の男性は、『スマイルアップ』東山社長の謝罪を求める幸子さんに

「何で東山が(謝罪の席に)いなきゃいけないのか、僕わかんないんですよ」

「『メリーが謝れ』『ジャニーが謝れ』だったらわかるけど、東山は別に加害者じゃないですからね」

と言ってのけた。

番組ではその後、東山が幸子さんと面会し、ジャニー氏の性加害を謝罪したとナレーションで伝えた。

「本部長の男性は終始、ぞんざいな対応で誠実さは皆無。ネット上で炎上するのも無理はありません。これを流したNHKの覚悟もうかがえます」(スポーツ紙記者)

NHKの“大物OB”にも容赦しなかった。

NHKの理事で、現在は『STARTO社』の顧問である若泉久朗氏に直撃取材を行ったのだ。

「なんで僕なんですか? しかも仲間じゃないですか!」

若泉氏は困惑の声を上げた。

「若泉さんは東京大学を卒業後にNHKに入局。ドラマ畑を歩み、大河ドラマ『風林火山』や、朝ドラ『ほんまもん』『てるてる家族』など、ヒット作を次々と世に送り出しました。その後、制作のトップである制作局長をつとめ、ジャニーズ事務所とNHKの蜜月関係を作り上げました」(テレビ局関係者)

’20年には一般企業の役員にあたるNHK“理事”に就任。’22年に退任すると、ジャニーズ事務所の顧問に就任している。

タレントのブッキングだけでなくトラブルでも存在感

「若泉さんはジャニーズだけでなく、多くの芸能プロダクションにも顔が利いた。局内には“若泉さんに動いてもらえば何とかなる”と頼りにしている人が多かった。タレントのブッキングだけでなく、例えば事務所で何らかのトラブルが起きたときも、若泉さんが出て行って、上手く収めてくれました。制作サイドとしては、非常に頼りがいのある人であったことは間違いない。ただ、退職後いきなりジャニーズ事務所の顧問になったのは驚きでした。いくら蜜月関係だったからとはいえ、さすがに理事まで務めた人が芸能事務所に“天下り”するのは異例でしたから……」(NHK関係者)

NHKは公共放送ではあるが、国家公務員ではないため天下り規制はない。とはいえ、その当時も若泉氏の“ジャニーズ入り”は、局内でも話題になっていたようだ。

Nスぺ本編が終わると、画面には

《2024年10月16日 NHKはスタートエンターテイメントの所属タレントへの出演依頼を可能とすると発表した》

の文字。そして同局が解禁理由について記した声明を無音で画面に映し出した。

番組内容と相反するもので、皮肉以外の何物でもない。前出のスポーツ紙記者が驚きをもって語る。

NHKとSTARTO社がようやく雪解けというタイミングであの放送ですからね。よく流したな、と。見方を変えれば、NHKスペシャルに関わる報道部と、エンタメ部門で見解の相違があるのだと思いますね。一部では暮れの紅白歌合戦に人気絶頂のSnow Manの出場が“内定”したと報じられている。その流れに報道部が『待った』をかけたのでしょう」

国民の受信料によって成り立っているNHK。これは広告収入、ひいては番組視聴率を重要視する民放とは決定的に違う部分だ。

NHK報道部としては、視聴率に傾倒した挙げ句、ジャニーズ事務所に対する異様な忖度、性加害を見て見ぬフリしてきたことに対する自責の念があるのではないか。それが“大物OB”への直撃という“忖度ナシ”の取材になったのかもしれない。

そろそろ紅白出場歌手が発表される時期だが、今回の報道で一転、波乱含みとなったようだ――。