「天使の子どもたちへ」阪神・淡路大震災の記憶、絵画で継承 神戸「アトリエ太陽の子」に井植文化賞

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 芸術、科学、社会福祉、地域活動などの発展や貢献に努めた兵庫県ゆかりの個人や団体をたたえて贈られる「第48回井植文化賞」の受賞式が10月5日、神戸市内で行われた。

「第48回井植文化賞」受賞者 前列中央が中嶋洋子さん〈2024年10月5日 神戸市垂水区・井植記念館〉

 この賞は淡路島出身で三洋電機の創業者・井植歳男氏の遺志で1973(昭和48)年に創設された。現在は6部門に分けて選考されている。
 このうち地域活動部門で、神戸市東灘区の絵画教室「アトリエ太陽の子」が受賞した。

 「アトリエ太陽の子」は、画家・中嶋洋子さんが主宰、1982(昭和57)年に設立された。

「アトリエ太陽の子」中嶋さんと子どもたち

 1995(平成7)年に起きた阪神・淡路大震災以降は、その記憶を継承するため、絵画を通じた防災活動に取り組んでいる。

 震災の経験を子どもたちに語り、映像を見せて「もしも、あの日あの場所にいたならば」と想像力をふくらませ、我が事としてとらえる「1.17 震災・命の授業」を始めて20年になる。

「アトリエ太陽の子」絵本プロジェクト〈2024年9月14日 神戸市東灘区〉

 そして、震災から30年を目前に、発生した1995年1月17日に神戸で生まれた男性をモデルにした絵本を制作するプロジェクトを立ち上げ、教室に通う子どもたちが挿絵を担当するなど精力的に活動している。

ラジオ関西の取材に応じる中嶋さん〈2024年10月5日 神戸市垂水区・井植記念館〉

 中嶋さんはラジオ関西の取材に対し、「阪神・淡路大震災を子どもたちの世代のみならず、100年先まで伝えたい。言葉や文字ではなく、絵の持つ優しさやメッセージ性を生かした絵本を、子どもたちとともに作りあげたい。神戸に住む人々の優しさと共助の気持ちによって、
震災当日に男性が『生』を受けることができた。絵本は138人の子どもたちが心をひとつにして描きあげた。震災を忘れず、明るい未来をと願って一緒に過ごした子どもたちのおかげで賞をいただくことができた。子どもたちは天使。その天使たちが絵を通じて人々のために励む舞台を作りたい」と話した。

 アトリエ太陽の子では、ロシアによる軍事侵攻で、近隣諸国に避難しているウクライナの子どもたちへ神戸の子どもたちが描いたヒマワリの絵や募金を送る支援を続けている。

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「第48回井植文化賞」の個人受賞者は、文化芸術部門で西宮市在住の画家・井上よう子さん、科学技術部門で公益財団法人・ひょうご科学技術協会理事長の平尾公彦さん、報道出版部門で毎日放送報道情報局の大牟田智佐子さんら。

 団体では社会福祉部門で神戸市東灘区の「兵庫こども食堂ネットワーク」、国際交流部門で神戸市長田区の「ミャンマーKOBE」が受賞した。

「第48回井植文化賞」受賞者のみなさん〈2024年10月5日 神戸市垂水区・井植記念館〉

 公益財団法人「井植記念会」(神戸市垂水区)は、副賞として受賞各団体に各100万円、個人に各50万円を贈った。