精神の健康を脅かす「厳しい圧力」に負けないために求められる「大人」としての耐久力

写真拡大 (全3枚)

日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。

『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。

本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。

「職場」という圧力

正規でも非正規でも、成人期前期には職業を選ばなければなりません。結婚して専業主婦になるとか、ニート(NEET)やひきこもり、経済的に働く必要のない人もいるでしょうが、大半は就職という形で、社会的な自己を固めていくことになります。

就職すると、「職場」というフォーマルな状況がはじまります。指示・命令系統によって成り立つ公的な場で、そこでは「義務」と「責任」をベースとした「役割」を果たさなければなりません。甘えやごまかしは許されず、決められた実績をあげる必要があり、自分勝手なやり方や、逸脱、ルール違反などは認められません。当然、厳しい圧力が発生し、精神の健康を脅かすことになります。

職場では能力や実力が求められるので、それが不十分だと、劣等感を抱いたり、挫折したりして、苦しい状況に陥ります。そうならないために、しっかりと準備するのが成人期前期の前段階の「青年期」なのですが、ここでもそれに気づかず、気楽なまま無為にすごして、あとで臍を噛む人が少なくありません。

もちろん、青年期に準備を怠ったからといって、すべてが終わるわけではなく、就職してから必要な能力を培うこともできます。会社組織に入れば研修があり、組織のないところでも雇い主や先輩からノウハウを教えてもらえます。「大人」として人生を歩むための最初の関門で、ここを無事に通過できるかどうかが、その後の人生の大きな分かれ目となります。

職場というフォーマルな場では、効率や信頼性、協調性、適応力などが重視され、競争が発生し、実績が評価の対象となります。不祥事やミス、想定外の事態も起こり、対応に苦慮したり、自分は悪くないのに謝らなければならないとか、理不尽な要求を突きつけられるとか、八方ふさがりの状況になるなどして、「大人」としての耐久力が求められます。

一方、仕事がうまくいったり、実績が評価されたり、地位が上がったりすると、達成感や生き甲斐を感じることができ、喜びとともに「自己信頼感」を高めることもできます。

さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。

じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」