無傷の4連勝で“出世レース“制覇 英フューチャーチャンピオンズフェスティバルを回顧
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆クラシックホース候補も続々登場
10月11日(金曜日)、12日(土曜日)の2日間にわたって、英国のニューマーケット競馬場で行われた「フューチャー・チャンピオンズ・フェスティバル」の主要競走を回顧したい。
まず、初日のメイン競走として行われたのが、牝馬によるG1フィリーズマイル(芝8F)だ。過去10年の勝ち馬を振り返れば、15年のマインディング、16年のロードデンドロン、17年のローレンス、18年のイリデッサ、21年のインスパイラルと、半数の5頭が3歳となった翌年もG1制覇を果たしているという、出世レースである。
今年のこのレースで、オッズ1.9倍という圧倒的1番人気に推されたのが、ゴドルフィンのデザートフラワー(牝2、父ナイトオブサンダー)だった。
G2ロックフェルS(芝7F)など5重賞を制したプロミッシングランの2番仔となる同馬。C.アップルビー厩舎から今年7月にデビューすると、ニューマーケット競馬場でメイドン(芝7F)と条件戦(芝7F)を連勝。3戦目となったのがドンカスター競馬場のG2メイヒルS(芝8F)で、ここも制して3連勝で重賞初制覇を果たしての参戦だった。
道中は3番手を追走したデザートフラワーは、残り2F付近で、先頭に立っていたA.オブライエン厩舎のジャニュアリー(牝2、父キングマン、4.5倍の2番人気)に並びかけると、残り300mから一気に抜け出し、最後はジャニュアリーに5.1/2馬身差をつける快勝となった。
無敗の4連勝を飾った同馬は、来春のG1英千ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、オッズ4-5倍の2番人気に推されている。
続いて、2日目のメイン競走として行われたのが、英国における2歳王者決定戦的位置付けにあるG1デューハーストS(芝7F)だ。
過去4年の勝ち馬を挙げれば、20年のセントマークスバシリカ、21年のネイティヴトレイル、22年のシャルディーン、23年のシティオブトロイと、いずれも翌年の春に英愛仏いずれかの3歳クラシックを制している馬たちである。
今年の目玉は、G3エイコムS(芝7F)を含めてここまで2戦2勝の成績を誇り、来春のG1英二千ギニー(芝8F)の前売りでもG1英ダービー(芝12F6y)の前売りでも1番人気の座にあった、A.オブライエン厩舎のザライオンインウィンター(牡2、父シーザスターズ)だった。だが、残念ながら同馬は当日の朝に挫石のため出走を取り消し、いささか興をそがれることになった。
代わってオッズ2.0倍の1番人気に押しだされたのが、ゴドルフィンのシャドウオブライト(牡2、父ロペデヴェガ)だった。
G1モルニー賞(芝1200m)、G1ミドルパークS(芝6F)と、2歳時に2つのG1を制したアースライトの半弟にあたる同馬。C.アップルビー厩舎から7月にデビュー。ヤーマス競馬場のメイドン(芝6F)とニューマーケット競馬場の条件戦(芝6F)を連勝後、ヨーク競馬場のG2ジムクラックS(芝6F)は2着に敗れたが、前走ニューマーケット競馬場G1ミドルパークS(芝6F)を4馬身差で快勝してG1で重賞初制覇。ここは、3万5千ポンド(約698万円)の追加登録料を払っての出走だった。
前走カラのメイドン(芝7F)を制しデビュー勝ちしての参戦だったA.オブライエン厩舎のエクスパンデッド(牡2、父ウートンバセット、13倍の4番人気)が、外側沿いに進路をとって馬群を先導。粘りを発揮した同馬を残り50mでとらえたのが内側馬群2番手を追走後に末脚を伸ばしたシャドウオヴライトで、同馬がエクスパンデッドにクビ差先着して優勝を飾った。
シャドウオヴライトにとっては、初めてとなった7Fへの対応が課題だったが、レース後にアップルビー師は、「来春のG1二千ギニーが楽しみになった」とコメントし、距離に対するメドは立ったとの認識を示した。この結果、同馬は英二千ギニーに向けた前売りで、オッズ7-13倍の2番人気に浮上している。
「フューチャー・チャンピオン・フェスティヴァル」2日目は、来春のG1英ダービーの有力候補を2頭輩出することになった。
一頭は、G3ゼットランドS(芝10F)を制したスターズインゼアアイズ(牡2、父スタースパングルドバナー)で、もう1頭は、G3オータムS(芝8F)を制したドラクロワ(牡2、父ドバウィ)だ。いずれも、ここが重賞初制覇だった2頭は、英ダービーに向けた前売りで、前者がオッズ26-41倍の3-8番人気、後者がオッズ21-34倍の3-4番人気に浮上している。