あの「東大の入試問題」は、日本社会に叩きつけた「問題提起」だったのかもしれない…良問にひそむ「数学教育界を揺るがす」衝撃のメッセージ
東大や京大ほか、難関大学が出題した入試問題には、「数学の本質」がいっぱい詰まっている!
「よりすぐりの良問」を格好の素材として活用する新しい学習法を紹介した『中学数学で解く大学入試問題』が話題になっています。
中学数学の限られた知識や技術で、大学入試問題がなぜ解けるのか? どう解くのか?
思考過程を重視した素朴な解法を通して、有名大学の問題が「わかる喜び」「考える楽しさ」を体感すれば、「数学的思考力」が驚くほど身につく!
*本記事は、『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
「初見の問題」をどう解くか
『中学数学で解く大学入試問題』という題名をご覧になったみなさんは、次のような疑問をお持ちになったと思います。
本当に中学数学で大学入試問題が解けるのか?
具体的にどう解くのか?
これらの問いに対しては、『中学数学で解く大学入試問題』のなかでお答えしていますが、初めにお伝えしておきたいことがあります。それは、高校生に数学を教える教師の立場として、数多くの大学入試問題を解き、分析してきた結果から、確信を持って伝えられる次の2点です。
良問には、知識の質を問うもの、思考力を問うものがある
中学数学で解くことができる問題には、思考力を問う良問が多い
大学入試問題に限らず、数学の試験問題では、パターン問題を素早く解くことに加えて、「初見の問題を解く」ことが求められます。初めて目にする問題に対して、既知の知識をどう活用し、いかに解答を導き出せるか、その力が問われます。
じつは、「中学数学で解くことができる大学入試問題」には、初見の問題を解くための「数学的思考力」と、それを身につけるための「数学の学習法」のヒントが詰まっています。
『中学数学で解く大学入試問題』では、良問ぞろいの「中学数学で解くことができる大学入試問題」の中から、よりすぐりの良問をセレクトしています。大学入試問題ですから、もちろんレベルの高いものも含まれていますが、まずはシンプルに、それらを「考える楽しさ」を味わっていただきたいと思います。
良問にひそむ「数学の本質」
また、良問には必ず、数学の本質がひそんでいます。
そのため、良問を解くことを通じて、『数学の神髄に迫る』ことができます。良問を解きながら「数学の神髄」に迫り、『総合力(総合的な数学力)』が基礎から身につくことも、『中学数学で解く大学入試問題』が目指すポイントの一つです。
さて、本書をお読みいただくにあたって、まず2つの質問をさせてください。
Q1 大学入試の2次試験(個別試験)は、どのような意図で作問・出題されているのでしょうか?
出題する大学自体や他の大学の、過去の入試問題をアレンジして作問する場合もあると思います。また、大学の先生が、各自の興味や研究分野を題材にして、新しく作問することもあるでしょう。
いずれにせよ、問題の目新しさや難易度だけを考えて作問・出題するのではなく、過去問としてその問題を解くことになる将来の受験生や、その指導をする高校教師や予備校講師へのメッセージを込めて出題していると思います。
たとえば、次のような問題が出されたことがあります。
「円周率を3と教えるのは良くない」
1999 東京大学文理共通前期
(1)一般角θに対してsinθ、cosθの定義を述べよ。
(2)(1)で述べた定義にもとづき、一般角α、βに対して
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ、
cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
を証明せよ。
一般的には丸暗記ですませるような定理(高校数学で学習する「三角関数の加法定理」)の証明問題です。多くの解法を暗記してあてはめるのではなく、基礎から積み上げる(公式を証明から理解する)学習が大切だ、というメッセージが込められた出題だったと思います。
さらに、教育界を越えて社会全体へのメッセージが込められていることもあります。有名なものとして、次の問題があります。
2003 東京大学理科前期
円周率が3.05より大きいことを証明せよ。
この問題が出題された当時、「小学生には、円周率は3.14ではなく3と教える」ことが、さかんに議論されていました。この問題は、東京大学からの「3と教えるのは良くない」というメッセージだったと思います(詳細は、『中学数学で解く大学入試問題』の112〜120ページをお読みください)。
さて、大学入試問題にはこのようなメッセージ性に加え、さらに出題者である大学の先生ならではの意図も込められています。果たしてそれは、どんな意図でしょうか。
中学数学で解く大学入試問題
数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法
有名大学の問題が「解ける喜び」「考える楽しさ」を体感しよう! 中学数学の知識・技術で大学入試問題にトライして、数学の真髄に触れる。