【ドラフト2024】地元に超有望選手が目白押し 広島が獲得したい実力と人気を兼ね備えた逸材たち
プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月24日に開催される。各球団すでに指名選手をリストアップし、最終段階に入っていると思うが、チームの現状と将来を鑑み、今回のドラフトで本当に獲得すべき選手は誰なのか? シーズン終盤まで優勝争いを演じていた広島だが、9月に5勝20敗と大失速。2018年以来の優勝を目指す広島に必要な選手は誰なのか?
アマチュアナンバーワン遊撃手の呼び声高い明治大・宗山塁 photo by Ohtomo Yoshiyuki
9月に入るまでは、セ・リーグの首位争いを繰り広げていた広島。失礼ながら「よくこの戦力で上位にいるな」と感心していた。もしや......の期待に、広島の街は盛り上がっていたものだ。そこから1週間足らずで首位から陥落しても、「まだ大丈夫」と連日熱烈な応援が続いたが、まさかの展開が待っていた。なんと9月は5勝20敗で、Aクラスどころか、最終的にセ・リーグ4位......。
アテにしていた3人の新外国人選手(トーマス・ハッチ、マット・レイノルズ、ジェイク・シャイナー)が、故障や実力不足でまったく戦力にならなかったのは、あまりにも誤算だった。それでも日本人選手は十二分に健闘したシーズンだった。
なかでも、称賛されていいのは投手陣だ。首位だった9月初旬の時点で、防御率は2点台前半という驚異的な数字を残していた。おそらく、目いっぱい頑張ってきた疲れが9月になって、一気にやってきたのだろう。
とはいえ、大瀬良大地(6勝6敗/防御率1.86)、森下暢仁(10勝10敗/防御率2.55)、床田寛樹(11勝9敗/防御率2.48)が持ち味を発揮し、故障が長かったアドゥア誠(6勝4敗/防御率3.13)もカムバック。
また、守護神・栗林良吏も60試合に登板してリーグ2位の38セーブを記録し、防御率1.96。その栗林とともに試合後半を担った島内颯太郎、森浦大輔、黒原拓未、テイラー・ハーンたちも見事な仕事ぶりを発揮し、充実の布陣を形成した。
さらにはシーズン終盤の一軍登板で、来季へのステップになるピッチングを見せたドラフト1位ルーキーの常廣羽也斗、左腕の森翔平(3年目)に長谷部銀次(2年目)......投手陣の近未来は、決して暗くない。
その一方で、打線はチーム打率.238、52本塁打(ともにリーグワースト)、415点(リーグ5位)。現状を鑑みて、今年は「バットマンだろう!」となりそうだが、アマチュアの強打者がひとり、ふたり加わっただけで急に「強力打線」になるほど、プロの世界は甘くない。
ならばバットマンは、今季ファームで鍛えられた田村俊介、ウエスタンリーグ5位の打率を残した佐藤啓介らのさらなる飛躍に期待しながら、FAやトレード、新外国人補強に力を注いでもらうことにして、強力投手陣を一段と盤石なものにレベルアップさせるほうが現実に合っているのでは......と思ってしまう。
投手たちも生身の人間である。今季の"奮投"が来季もできるとは限らない。投手に消耗は付きものである。
【アマ球界ナンバーワン遊撃手】しかし多くのカープファンが望んでいるのは、「打線強化」であることも事実である。こんなに焦点の定まらないカープのドラフトは珍しいが、こうなれば「投打両面作戦」でどうだろうか。
まず、すでに1位指名を公表している、宗山塁(広陵→明治大/遊撃手/175センチ・79キロ/右投左打)。完璧なフィールディングと高精度な広角打法、さらに甘いマスクと明治大のキャプテンとして部員をまとめたリーダーシップも兼備している。
だが、今年はショート・矢野雅哉の台頭があった。今季のカープ投手陣は、矢野にどれほど助けられたことか。菊池涼介との二遊間コンビは、今や球界ナンバーワンと言ってもいいだろう。課題だったバッティングも、試合を積むごとにしぶとさが増した。必死に練習して奪い取ったポジションだけに、矢野も簡単に譲るわけにはいかない。
しかし、地元にこんなスター候補生はそう出てくるわけではなく、今年の1位は宗山しかいない。
1位に宗山、2位で渡部聖弥(広陵→大阪商業大/外野手/177センチ・88キロ/右投右打)なら座りがよく、誰も文句はないだろう。
渡部は、宗山とは広陵時代のチームメイトで、大学でも4年間中心打者を務め、侍ジャパン大学代表の常連として国際大会でも活躍。強肩と抜群の守備力もプロ級で、この夏から自らの可能性を広げるため三塁手としてのスキルも磨いている。
だが渡部は1位で消える可能性もあり、その時の手当てもしておかねばならない。ファンが望む「右打ちの強打者」はそう多くはないが、佐々木泰(県岐阜商→青山学院大/三塁手/178センチ・82キロ/右投右打)と、渡邉悠斗(堀越→富士大/一塁手/181センチ・97キロ/右投右打)を推す。
佐々木は、常勝・青山学院大で1年春から中心打者として出場するなど、高い経験値にここ一番で発揮する長打力。無意識のうちに10割打とうとしているような生真面目さが打撃を崩すこともあるが、背格好やプレースタイルは"堂林翔太"にそっくりだ。
渡邉はネームバリューこそ高くないが、右のパワーヒッターとしては学生球界屈指で、ちょっとでも甘く入るとあっさりスタンドに放り込む怖さを持つ。三塁だけでなく捕手もこなし、なにより高校、大学の7年間、故障知らずの強靭な心身が"カープ向き"ではないか。
【備えあれば憂いなし】今シーズンの戦いを振り返り、功労者のひとりが捕手の石原貴規(5年目)だろう。昨季はずっとファームだったのが、今年はベテラン・會澤翼とともに投手陣を懸命に支えた。とはいえ、會澤も来季19年目の38歳。ケガも多く、消耗の激しいポジションだけに、たしかな技量を持った捕手を獲っておきたい。
鉄砲肩ならすでに球界トップクラスと言ってもいい石伊雄太(近大高専→近大工学部→日本生命/捕手/179センチ・83キロ/右投右打)に、同じく強肩の笹原愛斗(真颯館→九州共立大/捕手/181センチ・85キロ/右投右打)も注目の選手。
また、ケガが多く、心身の負担も大きいショート。スピード抜群のプレースタイルが身上の矢野だからこそ、もしもの時の備えが必要だ。宗山ともうひとり獲るなら、矢野に近いディフェンス能力を有する選手じゃないと意味がない。浦田俊輔(長崎海星→九州産業大/遊撃手/170センチ・70キロ/右投右打)の守備力なら、状況判断、精度、スピードと矢野と遜色ない働きを期待できる。タイプは少し違うが、山縣秀(早大学院→早稲田大/遊撃手/176センチ・80キロ/右投右打)は球際に強く、フィールディングの安定感が抜群。
そして今年は、忘れちゃいけない"鉄腕"が地元・広島にいる。全国屈指の強豪校で1年夏から背番号1を背負ってきた高尾響(広陵/投手/172センチ・73キロ/右投右打)だ。実戦のマウンドで「これでもか」というほど能力を発揮して、さらにまだ力を隠し持っていそうな底力を感じてしまう逸材......私がイメージする高尾の未来図は、栗林良吏である。