チャンピオンズリーグ(CL)らしさと言えば、試合のクオリティやスペクタクルもさることながら、スタジアムとその周辺の雰囲気も挙げられる。

 看板などの装飾もCL仕様に統一され、ふだんの国内リーグとは違うユニフォームを来たサポーターたちが街を埋めつくし、外国語が飛び交う試合前のアンセム。当然CLに出場するようなクラブはビッグクラブが多いが、それでも国内リーグとは違う華やかさ、どこかよそ行きの感じがCLらしさだと思っていた。


得意の右上のコースにPKを狙ったのだが... photo by AFLO

 だが、CLリーグフェーズ第2節「ジローナ対フェイエノールト」の一戦は、まったくそのキラキラ感のない試合だった。

 2022年にスペイン1部に復帰したジローナは、2部時代にクラブ観客が増えたため、スタジアム上層部に仮設スタンドを設置。これにより14500人のキャパシティを確保していたが、UEFAはこの上層部仮設スタンドの使用を禁止。ジローナとしてクラブ史上初のCLとなった10月2日のフェイエノールト戦の観客数は、公式発表によれば8752人と非常に寂しいものだった。

 しかも、1階部分も空席がちらほら目視できる状態。さらに試合途中からは雨が降ってきたのだが、スタンドのほとんどの部分に屋根がなく、サポーターたちはずぶ濡れになった。UEFAがこれをよしとしたのだから、これはこれで面白いのではあるが、CLの高揚感はまったく感じられなかったと言わざるを得ない。

 上田綺世は今季2度目の先発出場を果たした。絶対的エースのサンティアゴ・ヒメネスの負傷離脱に伴い、チャンスを掴んだ形だ。定着していけるかどうか、勝負の時期を過ごしている。

 3トップの中央で出場した上田は攻守において、献身的に奔走した。1点を奪われるも逆転して迎えた35分、PKのチャンスがやってくる。キッカーは上田だった。細かいステップを踏み、相手のリズムを狂わせるも、ゴール右上を狙ったキックはやや甘く入り相手GKパウロ・ガッサニーガにセーブされてしまった。

【PKを見つめ直さないといけない】

 試合後、上田は開口一番、自身のPK失敗に触れた。

「まず自分がね、PKを決めてれば、もっとチームに余裕を持たせられたと思うし、そういうゲーム展開になったのかなと思う。そこはやっぱり責任を感じているし、決めなきゃいけないなっていう、その悔いは残る」

 本来、ゴール右上の隅を突くようなPKは、上田が得意とするところだ。だが、この日はそのキックを止められた。

「コースも甘かったですし。もっと、自分のPKを見つめ直さないといけないなと。ちょっと練習します」

 PKを見つめ直す、ちょっと練習する、という言葉に、この日の上田の悔しさが詰まっているようだった。その練習は、実際にはちょっとではないのだろうと想像してしまう。

 その後、交代する71分までの間、上田はPKのミスを取り返そうと動き回った。過去に上田がPKを失敗した2試合ではゴールを決めているデータもあったが、焦りからか味方とリズムが合わない。いざという時に前線におらず、ボールロストからピンチも招く。苦しさが伝わってくるようだった。

 後半開始直後の3分、上田はゴール前で右からのラストパスを受けるが、シュート前に戻ってきた相手ディフェンダーに奪われてしまう。これが後半、最もゴールに近づいたシーンとなった。

「やっぱりシュートまで持っていくところのクオリティだったり、引き出しだったり、そういった判断はまだまだレベルアップする必要がある」

 上田はそう振り返った。

 そもそも前半のPK失敗は、その後のプレーに影響したのか。

「まったく気にしないって言ったら嘘になるし、もちろん動揺もあるし、悔いもある。でも、そこで試合は終わりじゃないし。PKを外してしまった分、自分で取り返そうと思って攻撃も守備もプレーしましたけど、なかなか結果に貢献することができなかった」

 悔いは残る。だが、チームが勝利(結果は3-2)をしたからこそ、これだけ前向きに話もできる。

「もうすぐインターナショナルブレイクに入りますけど、もう1試合チームとして結果を残して自信をつけ、次につなげないと」

 フェイエノールトは新監督のもと、国内リーグは現在6位と苦戦中。ヒメネス不在のなか、チームも上田個人も勝負の時だからこそ、もぎとったこの1勝をどうにか先につなげたい。