W杯アジア3次予選サウジアラビア戦(現地時間10日)、オーストラリア戦(15日)に臨む日本代表選手27人が、以下のとおり発表された。

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)、鈴木彩艶(パルマ)

DF
長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、菅原由勢(サウサンプトン)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、高井幸大(川崎フロンターレ)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、伊東純也(スタッド・ランス)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、大橋祐紀(ブラックバーン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、三笘薫(ブライトン)、小川航基(NEC)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(フェイエノールト)、田中碧(リーズ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、久保建英(レアル・ソシエダ)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)


サウジアラビア戦、オーストラリア戦のメンバーを発表する森保一日本代表監督 photo by Fujita Masato

 前回(中国戦、バーレーン戦)から外れたのは中山雄太(FC町田ゼルビア)、浅野拓磨(マジョルカ)、細谷真大(柏レイソル)で、代わって瀬古、大橋、藤田が招集された。だが外れた3人のなかで、中国戦、バーレーン戦に出場したのは浅野ひとり。それも5−0で迎えたラストの約8分間だった。

 3人合わせてプレー時間は180分間中8分。ほぼ戦力になり得ていなかったと言っていい。そのうち中山と浅野は今回、ケガだ。ケガをしていなければ呼ばれたかもしれない。とすれば、森保一監督が現状のメンバーに十分満足していることがわかる。瀬古、大橋、藤田の今回の出場時間は推して知るべしで、ある。

 27人中3人の変更なので「9割方不動」とも言えるが、出場時間で見ると実質的な不動率は99%だと言いたくなる。本番まで1年半以上残した段階で、森保ジャパンは硬直した状態にある。危険と言わざるを得ない。

【日本が予選落ちする可能性は限りなく低い】

 サウジアラビア、オーストラリアは中国、バーレーンより強敵だ。敗れる可能性は大いにある。2連敗もあり得る話だ。メンバー発表会見のひな壇に座る森保一監督、山本昌邦ナショナルチームダイレクターともども、W杯予選の大変さをしきりに強調した。絶対に負けられないムードを率先して煽ろうとした。

 問題は、日本がサウジアラビア、オーストラリアに敗れる確率だ。もっと言えば、すでに2勝を飾りC組の首位を行く日本が、今回のアジア予選で落選する確率だ。

 高く見積もってもせいぜい5%程度だろう。前回4.5だった枠が8.5に激増したことを踏まえると、日本は客観的に見て、実力と枠の関係において世界で最も楽な予選を戦っていることになる。これで本大会行きを逃したら世界の笑いものになるぐらい、ユルユルの環境に身を置いている。今回ほど、緊張感に欠ける予選も珍しいのである。
 
 この環境とどう向き合うか。問われているのは、逆にどう活かすか、だ。

 森保監督が最近好んでよく使う言葉に「したたか」がある。今回の会見でもしたたかな戦いをしきりに強調したが、この突破確率が95%はありそうな環境下で不動のメンバーを組むことが、「したたか」と言えるだろうか。「小心」「クソ真面目」のほうがはるかに適切だと考える。敗戦を極度に怖がり、万全すぎるメンバーで臨む姿は、戦力の無駄使いに他ならない。

 サウジアラビアとのアウェー戦、オーストラリアとのホーム戦は、確かにこの予選の山場かもしれない。サウジアラビアに対して、ある記者は会見の席で、アウェー戦の過酷な環境を不安視する質問を投げかけていた。過去の最終予選で日本は、まだアウェーでサウジアラビアに勝ったことがないと、少ない過去対戦のサンプルを持ち出し心配する記者もいた。サウジアラビアのサイド攻撃が強烈であることを訴え、対応を問う質問も出た。

 だが、肝心の戦力はと言えば、少なくとも今年のアジアカップで見たサウジアラビアに強いという印象は抱けなかった。

【逆転したオーストラリアとの関係】

 昔のほうが強かった――、この印象はオーストラリアにもあてはまる。新たに就任したトニー・ポポビッチ監督は、森保監督とかつてサンフレッチェ広島で一緒にプレーした間柄だ。元チームメートと戦う気持ちについて問われた森保監督は、ポポビッチ監督のことをしきりに持ち上げた。しかし、オーストラリアの戦力の弱体化はサウジアラビア以上だ。日本が1−3で敗れた2006年ドイツW杯時を10とすれば、いまは7程度にすぎないだろう。

 オーストラリアには、欧州組がかつては数多くいた。オーストラリアは現在の日本のような存在だった。だが、日本と決勝を戦った2011年アジアカップ以降、低迷が始まり、現在に至っている。逆に日本はいまが少なくともメンバー的には史上最強だ。欧州組は100人を数える。両者の関係はすっかり逆転した。

 ホーム&アウェーを戦えば、サウジアラビアもオーストラリアも負け越す相手ではない。

 相手を必要以上に警戒し萎縮する。5バックで後方を固める作戦も、敗戦を恐れすぎることに由来する。先を見据えた戦いが森保監督にはできないのだ。2021年東京五輪後の会見で、森保監督は自ら「日本が先を見据えた戦いをするのはまだ早い」と述べている。だがそれができなければベスト8は狙えない。

 W杯でベスト8を狙いたい欧州の上位国が、どんなメンバーで目の前のW杯予選に臨んでいるか。あえてベストメンバーでは臨まず、勝ちながらテストしていく。勝負とトライを両輪のような関係でそれぞれを追求する。そうしたスタンダードを身につけた指導者でないと、いい線まできている日本代表の監督は務まらないのではないか。

 18カ月後のベストメンバーと現在のベストメンバーは違う。違わなければならない。そうした前提に立ったとき「いつも不動のメンバー」はいかにも後進国的だ。ベストメンバーが誰なのかよくわからない、混沌としたチーム状態でもサウジアラビアとオーストラリアに勝利することができないと、W杯本大会でベスト8は望めない。

 そんな森保監督を懐疑的な目で見る人は少ない。代表チームの在り方について考え直さないと、日本サッカーの右肩上がりは停滞する。筆者にははっきりとそう映る。