チーム事情から見るドラフト戦略2024〜オリックス編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月24日に開催される。各球団すでに指名選手をリストアップし、最終段階に入っていると思うが、チームの現状と将来を鑑み、今回のドラフトで本当に獲得すべき選手は誰なのか? 昨年までパ・リーグ3連覇を成し遂げたオリックスだが、今季は5位に甘んじてしまった。T−岡田、安達了一といったベテランが今シーズン限りでユニフォームを脱ぐなど、チームは世代交代の真っ最中。そんななか、今年のドラフトではどんな選手を指名すべきか?


今年春のセンバツにも出場した豊川のモイセエフ・ニキータ photo by Ohtomo Yoshiyuki

【打線強化は最優先事項】

 昨年まで3年連続パ・リーグ制覇を果たし、2022年には日本一を達成し、悲願の御堂筋パレードを行なったオリックス。それが一転して、今シーズンは5位......ファンの落胆は相当なものだったはずだ。いくら山本由伸がアメリカに行ってしまったからといって、一気の凋落はつらい。あの吉田正尚(レッドソックス)がいなくなった昨年だって、優勝したぐらいのオリックスである。

 昨年はチーム防御率2.73と圧倒的な投手力でパ・リーグを制したが、今年もここまで(10月2日現在、以下同)防御率2.83としっかり結果を残している。一方で打線はというと、昨年の508得点に対して394得点。"責任"の所在はわかりやすい。

 ならば、打線の強化が今回のドラフトの大命題になりそうだが、ここでちょっと考えなければならないことがある。

「投高打低」が顕著な昨今のプロ野球。敗戦処理としてマウンドに上がる投手ですら、平気で150キロ前後を投げるなか、本塁打などそう簡単に打てなくなっているのに、それでも「長距離砲を」「スラッガーを」と頑なに追い求めるのはいかがなものか......。

 吉田が去ったあと、オリックスで本塁打を期待できるのは森友哉に頓宮裕真。あと杉本裕太郎がもうひと爆発してくれるといいのだが......。

 そこで「点取りゲームの野球だから、先の塁を奪うことを最優先!」と割りきって、俊足の選手を積極的に狙いにいくか。どちらにターゲットを絞るかで、チームづくりの根幹が変わってくる。

 あくまでスラッガーを求めるとなれば、まず挙がるのが西川史礁(龍谷大平安→青山学院大/外野手/182センチ・88キロ/右投右打)だろう。空振りでも投手を不安にさせるほどの豪快なフルスイングが魅力で、タイミングが合えばフェンス越えの長打力に、追い込まれたらライト前に運ぶ融通性も兼備。そのうえ、足よし、肩よし、マスクよしと、スター性も十分だ。

 西武、中日......もしかしたら楽天あたりも参戦して競合になるかもしれないが、もし外しても大砲候補なら吉納翼(東邦→早稲田大/外野手/180センチ・87キロ/右投左打)でも遜色ない。左打席からの長打力に、大一番でガツンといける勝負度胸がプロ向きだ。今季限りで現役を引退するT−岡田の若い頃に重なる"和製大砲"候補だ。また、外野からのスローイングも強力な武器である。

 2年目の内藤鵬、ルーキーの横山聖哉と、内野手には若手スラッガー候補が控えるが、外野手には将来の大砲候補が見当たらない。それだけに、どちらかは獲得したいところか。

 今年春のセンバツに出場したモイセエフ・ニキータ(豊川/外野手/181センチ・85キロ/左投左打)も悪くない。内角のストレートを捌いて長蛇にできるスイングスピードとバットコントロールが光り、嬉々としてプレーする若々しい雰囲気にも大きな伸びしろを感じさせる。

また、一軍に1、2番タイプの人材が薄いのも確か。ならば、2位で渡部聖弥(広陵→大阪商業大/外野手/177センチ・88キロ/右投右打)を抑えておく手もあるだろう。打率も長打も期待できて、外野の守備力は今のオリックスならトップクラスに入るはず。この1年でちょっとぽっちゃりしてきたのが気になるが、チームの偉大なOBであり、大学の先輩でもある谷佳知のプレースタイルにそっくりのプレーヤーである。

【社会人即戦力投手は今年も豊富】

 9月中旬、オリックスはU18台湾代表投手の陳睦衝(チェン・ムーヘン)の入団を発表している。契約金50万ドル(約7000万円)の本格派右腕というから、ドラフト1、2位相当の扱いだろう。

 ならば、高校生投手は左腕だ。一軍には宮城大弥、田嶋大樹、曽谷龍平といて、今年プロ初勝利を挙げた190センチ左腕の佐藤一麿も、来季はローテーション争いに加わってくるだろう。翻って、ファームは将来型左腕が手薄だからだ。

 高橋幸佑(北照/投手/178センチ・80キロ/左投左打)は、高校3年間で飛躍的に成長。安定感あるフォームから、140キロ前半のストレートとカーブ、チェンジアップの緩急が使えて、球筋が安定しているのも立派な才能だ。

 オリックスと言えば、これまで阿部翔太(2020年6位)、小木田敦也(2021年7位)、高島泰都(2023年5位)、古田島成龍(2023年6位)と、中位から下位指名で社会人投手を獲得。すぐに戦力として起用するのは、もはや "お家芸"と呼んでもよさそうだ。今年もその候補は何人もいる。

 社会人3年目、昨年も候補に挙がった竹田祐(履正社→明治大→三菱重工West/投手/184センチ・96キロ/右投右打)が、コンスタントに実戦で力を発揮できるようになってきた。カーブ、カットボール、フォーク......多彩な変化球を操りながら、今年はピンチの場面で140キロ中盤の速球勝負で切り抜ける"意地"を見た。

 この竹田を即戦力のほしいヤクルトあたりに先に指名されたら、今夏の都市対抗で150キロ台を連発した木下里都(福岡舞鶴→福岡大→KMGホールディングス/投手/183センチ・87キロ/右投右打)でどうか。以前は「九州三菱自動車」として活動していたチームで、大学から始めた"投手"がハマった。まだ肩は使い減りしていないし、中継ぎ、もしくは将来の守護神になれる逸材と見ている。

 もうひとりオススメしたいのが、村上大芽(津名→立命館大→北海道ガス/投手/180センチ・78キロ/右投右打)。社会人2年目の昨季から頭角を現わして、今季はアベレージ145キロ前後の速球と高速フォークを駆使して低めを攻める投球に徹し、都市対抗で優勝候補のNTT東日本を破る大金星。大舞台で、しかも強敵相手に平然と投げられるメンタリティはプロ向き。高校までは淡路島で暮らしていた地元・兵庫の選手である。