サッカー日本代表 今、この選手のプレーが見たい! 後編

「史上最強」と言われる現在のサッカー日本代表で、それでも新しく見てみたい選手は誰か。識者たちに、弱いポジションで試すべき選手たちや、現在のレギュラーに取って代わる可能性のある、新しいプレーヤーを挙げてもらった。

前編「『CL出場選手を』『なぜ招集しない?』識者が挙げた今、見たい選手たち」>>


パリ五輪世代のキャプテン藤田譲瑠チマ(左)と代表復帰が待たれる毎熊晟矢(右) photo by Getty Images

【パリ五輪世代の台頭は不可欠】

原山裕平(サッカーライター)

<この選手のプレーが見たい!>
藤田譲瑠チマ(MF/シント・トロイデン) 
鈴木唯人(FW/ブレンビー) 
毎熊晟矢(DF/AZ) 

 現時点でも隙のない陣容に思えるが、"チームは生き物"である以上、段階的な新陳代謝が必要だろう。史上最強とも言える既存のメンバーに食い込める可能性があるのは、まだ成長過程にあるパリ五輪世代が現実的だ。東京五輪世代がスムーズに吸収された前回W杯と同様の流れが、今の代表チームにも求められる。

 すでに主軸となっている久保建英と鈴木彩艶のふたりを除けば、先の9月シリーズでパリ五輪世代から名を連ねたのは、細谷真大、高井幸大の五輪メンバーに加え、サプライズ招集となった望月ヘンリー海輝のみ。しかも高井は中国戦で出番を得たものの、細谷と望月はメンバー外だった。現時点では序列を覆せそうな人材は見当たらない。

 それでも2年後を見越せば、パリ五輪世代の台頭は不可欠だろう。期待したいのは藤田譲瑠チマだ。機動力を生かした守備力とボールを失わない技術を備えたボランチは縦への推進力も持ち合わせ、森保一監督の求めるサッカーに適した人材である。

 キャプテンとしてチームを牽引した、パリでの奮闘ぶりも印象深い。遠藤航、守田英正と同ポジションのハードルは高いが、次代の日本の中盤を支えるタレントとして、今のチームにも組み込んでおきたい存在だ。

 パリ五輪世代からはもうひとり、鈴木唯人の名前を挙げたい。五輪メンバーには選ばれなかったものの、この世代の攻撃を牽引してきたタレントである。欧州で研鑽を積み、今季もしっかりと結果を残しているのだから、代表入りの資格はあるはずだ。

 ライン間でボールを引き出し、巧みなターンで前を向く。高い決定力も備えたアタッカーは、南野拓実の後継者になり得る逸材だ。代表キャップ数は1試合に留まるが、継続的にチャンスを与えれば、十分な戦力に成長し得る可能性を秘める。

 また、日本が今後も9月シリーズで成果を生んだ"攻撃的な"3バックを採用するなら、ウイングバックの人材も求めたい。パリ五輪世代に限定すれば関根大輝の名前を挙げたいところだが、ここは毎熊晟矢を推す。今夏に海を渡った26歳のサイドバックは、状況に応じたポジショニングで攻撃に厚みをもたらし、チャンスメークのみならず、自らフィニッシュに持ち込むことができる。

 右サイドバックとして重宝されてきた菅原由勢の立場が危うくなった一方で、ウイングバックのポジションであれば、攻撃力に長ける毎熊のほうが適しているだろう。伊東純也という絶対的な存在がいるものの、タイプの異なる毎熊を戦況に応じて起用することで、戦いの幅が生まれてくるはずだ。

【選手層の薄いポジションでテストを】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

<この選手のプレーが見たい!>
東俊希(MF/サンフレッチェ広島) 
毎熊晟矢(DF/AZ) 
オナイウ阿道(FW/オセール)

 現在の森保ジャパンにおいて、最も選手層の薄いポジションが左ウイングバック、もしくは4バック時の左サイドバックだ。攻撃的3バックで快進撃を続けるなか、森保一監督は左ウイングバックに三笘薫、中村敬斗といったアタッカーを起用。本職の左ウイングバックではない。

 そこで、今後を見据えて試してみたいのが、現在Jリーグで優勝争いを繰り広げるサンフレッチェ広島の左ウイングバック、東俊希の抜てきだ。広島では持ち前の攻撃参加とクロス供給で存在感を示し、パスセンスも上々。

 4バックの左サイドバックにも対応できるうえ、ビルドアップ時の偽サイドバックの役割も担えるのも魅力だ。それ以外にもセンターバックやサイドハーフもできるポリバレントな東は、今後代表に定着すれば有効な戦力になれるかもしれない。

 右ウイングバックで言えば、3月のアジア2次予選以来、代表から遠ざかっている毎熊晟矢も招集されてしかるべき選手と言える。今夏にセレッソ大阪からAZに移籍した関係で招集を控えたと思われるが、新天地でもすぐにスタメンに定着。これまでも代表では重要な戦力として重宝されてきたが、オランダに移籍してからも成長中だ。

 AZでは4バックの右サイドバックを務めているが、ウイングバックでも持ち味を発揮できることは証明済み。現在は堂安律や伊東純也が右ウイングバックで起用されるケースが増えているが、サウジアラビアやオーストラリアといったグループのライバルとの直接対決が待っている10月のアジア3次予選では、菅原由勢との兼ね合いもあるが、本職の毎熊が招集される可能性は十分にあるだろう。

 上田綺世がスタメンを確保しつある1トップも、もう少し層に厚みを増しておきたいポジションのひとつだ。現在は小川航基、細谷真大らがバックアッパーとしてポジション争いを繰り広げているが、もうひとり招集してみたいのが、現在リーグ・アンのオセールでプレーするオナイウ阿道だ。

 すでに2021年に代表デビューを果たしているオナイウは、同年10月のサウジアラビア戦以来、長く代表から遠ざかっている。しかしその間、リーグ・ドゥでプレーした昨シーズンはオセールのチーム内得点王に輝き、リーグ・アン昇格に大きく貢献。特に点で合わせるフィニッシュワークに磨きがかかり、今シーズンも上々のパフォーマンスを披露している。

 第2節でレッドカードをもらったが、ここまで5試合に出場して1ゴールをマークするなど、調子も上向いている。上田とはタイプの異なるストライカーゆえ、戦況による使い分けも可能。アジア3次予選とその後を考えると、テストしておくべき選手と言える。

【左サイドバックは積極的に探すべき】

浅田真樹(スポーツライター)

<この選手のプレーが見たい!>
荻原拓也(DF/ディナモ・ザグレブ) 
杉岡大暉(DF/FC町田ゼルビア) 
藤田譲瑠チマ(MF/シント・トロイデン)

 9月にスタートしたワールドカップ最終予選(アジア3次予選)では、日本代表の3バック導入がうまくハマっている。単純に2戦連続の大勝という結果ばかりでなく、自らの"弱点"をうまく隠すことにも成功しているからだ。

 弱点とはすなわち、左サイドバックの人材不足である。

 前回のW杯が開かれた2年前の時点で、すでにベテランの長友佑都を起用し続けることに疑問(不安?)の声があがっていたにもかかわらず、その後もこれといった人材は現われず、本職ではない伊藤洋輝が主にその役割を務めてきた。

 結果的に4バックから3バックへ転換することにより、弱点たる左サイドバックというポジション自体が存在しなくなったわけだが、W杯本大会も含めた今後の戦いを踏まえれば、4バックのオプションを完全に捨てるわけにはいかない。やはり左サイドバックの人材探しは積極的に続けていくべきだろう。

 そこで試してみたいのが、海外組では荻原拓也、国内組では杉岡大暉である。

 ディナモ・ザグレブでプレーする荻原は、今季チャンピオンズリーグでデビューを果たしたばかりか、デビュー戦となったバイエルン戦で初ゴールまで決めて見せた。

 アカデミーからトップ昇格した浦和レッズ時代をはじめ、Jリーグでは随所にポテンシャルを発揮するものの、なかなかブレイクしきれずにいたが、海外移籍をきっかけにひと皮むけた印象だ。

 大胆な攻撃参加が魅力だが、決して一本調子ではなく、周囲と連係しながら縦への推進力を出せるレフティだけに、今の日本代表との相性は悪くないはずだ。

 一方の杉岡もまた、湘南ベルマーレ時代はコパ・アメリカに出場するなど、A代表にも選出されていたが、その後は伸び悩んでいた。

 だが、今夏FC町田ゼルビアへ移籍し、"3バック的な立ち回りが求められる左サイドバック"として復活。好パフォーマンスを見せている。

 順調なら東京五輪に出場していても不思議はなかった選手であり、森保一監督もその能力はよく理解しているに違いない。まだまだ復調途上とも言えるが、日本代表の現状を考えれば、試してみてもおもしろい選手だろう。

 そして、最後にもうひとり、左サイドバックとは別に"ポスト遠藤航"として推したいのが、藤田譲瑠チマである。

 遠藤、守田英正が絶対的な存在となっているボランチは、一見不安のないポジションにも見えるが、2枚看板に続く選手はというと、田中碧くらいしかおらず、層の厚さ、年齢バランスという点では決して盤石ではない。

 藤田が予選も含めたパリ五輪で見せたプレーはもちろんのこと、卓越したリーダーシップも見逃せず、将来的なことも考えれば次のW杯には必ず連れていくべき選手だ。すぐにレギュラーポジション奪取とはいかなくとも、早く日本代表に加え、"英才教育"を施したい。