サッカー日本代表は史上最強!? それでも今見てみたい、試すべき新しい選手とは?
サッカー日本代表 今、この選手のプレーが見たい! 前編
サッカー日本代表の10月のW杯アジア最終予選2試合のメンバーがまもなく発表される。ヨーロッパでプレーする選手が増え、今の出場選手たちは「史上最強」との呼び声も高い。それでも弱いポジションで試すべき選手たち、現在のレギュラーを脅かす新しい選手たちがいるのではないか。識者たちにそんな選手たちを挙げてもらった。
CLの舞台でプレーしたチェイス・アンリ(左)と荻原拓也(右) photo by Getty Iamges
杉山茂樹(スポーツライター)
<この選手のプレーが見たい!>
チェイス・アンリ(DF/シュツットガルト)
荻原拓也(DF/ディナモ・ザグレブ)
古橋亨梧(FW/セルティック)
チャンピオンズリーグ(CL)はワールドカップ(W杯)の組替え戦。日常のW杯だ。チャンピオンズリーガーに昇格した選手は、よほどのことがない限り、日本代表に招集すべきだと考える。ご祝儀であると同時に、明快な基準にもなる。
今季からCLは、本大会に出場したチームは前半のリーグ戦(リーグフェーズ)をすべて異なる相手と最低8試合戦う。4チームによるホーム&アウェー戦だったこれまでより、ざまざまな相手と数多く対戦する。スケール、格式やステイタスも上昇した。そこで積む経験はまさにW杯級。日本代表の財産になる。筆者はそう考える。
今季シュツットガルトの一員として、CL初戦のレアル・マドリード戦の――後半18分に途中交代ながら――舞台に上り、晴れてチャンピオンズリーガーとなったチェイス・アンリは、その該当者になる。
弱冠20歳。パリ五輪に臨んだU−23日本代表には最終合宿に参加したものの、本大会のメンバーから外れた。理由は定かではないが、新シーズンの頭からピッチに立つ姿を見ると、クラブ側が許可を出さなかった可能性は否定できない。
2年ほど前、日本代表合宿にも参加したことはあるが、今季、CL初戦でいきなりキリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガムらと対峙する姿は予想できなかった。2階級特進。いや、それ以上かもしれないその勢いを、日本代表にも反映したい。
浦和レッズからディナモ・ザグレブにレンタル移籍するや、CL初戦のバイエルン戦に左ウイングバックとして先発を飾り、チャンピオンズリーガーとなった荻原拓也も該当選手だ。
チームは大敗したが、カウンターから左足でゴールまでマークした選手を選ばない手はない。この選手もまた2階級特進である。代表に勢いをもたらす選手になる。長友佑都(FC東京)を選ぶよりはるかに効果的だ。森保一監督はある時、長友の守備力を絶賛していたが、長友にバイエルン戦でゴールを決める力はない。
3人目はセルティックのセンターフォワード古橋亨梧だ。CL初戦のスロヴァン・ブラチスラバ戦で通算3ゴール目となる得点をマーク。CLでまだゴールを挙げていない上田綺世(フェイエノールト)に、チャンピオンズリーガーとしての格で勝る。
スコットランドリーグは欧州ランキング11位。上田がプレーするオランダリーグ(6位)に劣る。だが、CLはお互いにとって共通の舞台だ。代表で森保監督が上田をスタメンで使い続ける一方で、古橋を外し続ける理由がよくわからない。そこまで両者の力関係は大きな差はない。
好き嫌いはあってもいいが、CLでの活躍度を無視するのはどうかと思う。バランス感覚に欠ける取捨選択だと筆者は見る。
【バックアップが見当たらないポジションがある】小宮良之(スポーツライター)
<この選手のプレーが見たい!>
橋本拳人(MF/エイバル)
高丘陽平(GK/バンクーバー・ホワイトキャップス)
大橋祐紀(FW/ブラックバーン)or町野修斗(FW/キール)
日本代表の選手層は、かつてないほど分厚くなっている。海外で結果を残している日本人選手だけで、2チーム分は代表を作れる時代が来たのだ。
たとえば三笘薫は別格に見えて、中村敬斗も違うスタイルでチームに貢献できる。久保建英は抜きんでたセンスを見せるが、堂安律や伊東純也も異なるリズムを持っている。中盤では鎌田大地と守田英正は、十分に併用できる。ディフェンスも3枚、4枚とどちらもできるセンターバックが数多く台頭してきた。
ひとりだけバックアップが見当たらないのが、遠藤航だ。
遠藤の屈強さと気の利いた攻守は、唯一無二だろう。ポジションを保全しながら攻撃にも出て、簡潔にプレーできる先見性がある。そして、受けに回った時の高さや強さは頼もしい。
守田は遠藤のパートナーとしては最適だし、近い仕事もできる。しかし、高さや強さでやや不安が残る。そもそも彼にはポジションがあって、遠藤の代役ではない。
その点、推奨したいのが橋本拳人である。橋本は遠藤の仕事をそのまま請け負える。実際、遠藤がポジションを奪い取るまで、定位置を守っていた。
今シーズン、橋本は1部復帰を目指すエイバルのMFとしてプレーしている。開幕後の入団のせいでデビューは遅れていたが、先日のアルメリア戦でピッチに立った。昨シーズンも同じ2部のウエスカでレギュラーとしてプレーし、持ち味の守りと攻撃のバランスを取れる能力は健在。チームのシーズンベストゴールも決めた。
W杯でベスト8まで勝ち抜くには5試合を戦う。そのすべてで遠藤を使い続ければ最後は息切れするだろう。それだけに......。
一方、GKは確定的な選手がひとりもいない。
なぜ森保一監督は、高丘陽平をメンバーに選ばないのか?
高丘は横浜F・マリノスをJリーグで優勝に導き、ベストイレブンにも選ばれている。その座に満足せず、MLSに挑戦して定位置をつかみとった。そして、リーグのなかでの評価を高め続けている。にもかかわらず、たったの一度も代表メンバーに入っていないのだ。
「体格が小さい」
そうした言い訳が思い浮かぶが、海外でやれている時点で成立しない。高丘はゴールキーピング全体も洗練されているし、そもそもリベロGKで日本人屈指の足元のうまさを誇る。「ボールを持つ時間を長くする」を志向する森保ジャパンの戦術に合うはずだが......。
おそらく、森保監督は鈴木彩艶に"投資"しているのだろう。ただ、代表に呼ぶことが成長に水を差しているように見える。アジアカップで戦犯のようにしてしまった采配は、非難されて然るべきだろう。リーグ戦で1、2シーズン、しっかりと定着してプレーさせ、技術を実戦に馴染ませるべきだ。
最後に、FWは結果を残している"旬な選手"を選ぶべきではないか。
今回で言えば、大橋祐紀、町野修斗はイングランド、ドイツでカップ戦を含めてそれぞれ5得点を記録している。大橋はサプライズだし、町野は昨季1部昇格にも貢献し、成長を証明。
好調なストライカーは、チームにもよい波動を与える。ストライカーはタイミングの生き物だけに、「将来性」というあやふやな理由より、シンプルに数字で選ばれるべきだ。