アメリカの一部の大学では、卒業生の親族を入試で優遇する「レガシー入学」や、寄付者とつながりのある学生を優遇する「寄付入学」が行われています。スタンフォード大学などの名門大学を擁するカリフォルニア州で、私立大学でのレガシー入学を禁止する州法が制定されました。同州では既に公立大学でのレガシー入学が禁止されており、2025年からは私立大学でも一切の優遇措置が禁止されることになります。

California bans legacy and donor preferences in admissions at private, nonprofit universities | Governor of California

https://www.gov.ca.gov/2024/09/30/california-bans-legacy-and-donor-preferences-in-admissions-at-private-nonprofit-universities/

Ting & Supporters Of Fairness & Equity In The College Admissions Process Celebrate The End Of Donor & Legacy Preferences In CA | Official Website - Assemblymember Phil Ting Representing the 19th California Assembly District

https://a19.asmdc.org/press-releases/20240930-ting-supporters-fairness-equity-college-admissions-process-celebrate-end

California Bans Legacy Preferences at Private Universities - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/09/30/us/california-bans-legacy-preferences-private-universities.html

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2024年9月30日に、私立大学におけるレガシー入学および寄付入学を禁止するための改正法案である議会法案第1780号(AB 1780)に署名しました。

ニューサム知事は署名に際して、「カリフォルニアでは誰もが実力、能力、努力によって成功を手にするべきであり、カリフォルニアドリームは幸運な少数の人だけが手に入れられるものであってはなりません。だからこそ、私たちは高等教育の門戸を公平に、そしてすべての人に向けて広く開け放つのです」との声明を発表しました。



今回の法改正の背景には、大学入試で行われていた人種に基づく積極的差別是正措置、いわゆる「アファーマティブ・アクション」を違憲とする2023年の最高裁判決があります。

レガシー入学そのものは人種を考慮するものではありませんが、卒業生や大口寄付者の子弟を優遇する措置は、白人や裕福な家庭の学生に対する特別扱いであるとして、長年批判の的になってきました。

2022年に行われた世論調査では、アメリカの成人の75%が「大学入試は親がその学校に通っていたかどうかで決まるべきではない」と答えています。

大学入試の不平等是正を目指す団体・Class Actionの共同創設者であり、スタンフォード大学の卒業生でもあるライアン・シエシリコフスキー氏は「縁故主義を『遺産(レガシー)』と呼び習わしても、それが正当化されるわけではありません」と話しました。

法案を起草したフィル・ティン議員の調査によると、2022年度の南カリフォルニア大学の入学者数に占めるレガシー入学および寄付入学の割合は14.4%だったとのこと。スタンフォード大学では13.8%、ニューサム知事の母校であるサンタクララ大学は13.1%でした。



私立大と公立大の両方でレガシー入学が禁止されたのは、メリーランド州に続いてカリフォルニア州が2例目です。ほかには、イリノイ州、バージニア州、コロラド州が公立の高等教育でのみレガシー入学を禁止しています。

ティン議員は「大学の新入生になるのに必要なのは勤勉さ、優秀な成績、充実した経歴であって、家族が書ける小切手の額の大きさや誰が親戚かは関係ありません」とコメントしました。

新法は2025年9月1日に発効し、カリフォルニア州の大学は2026年6月から法律を順守していることを示す年次報告書を当局に提出することが求められます。