「神前式で彼のドラム演奏が聴きたい」職場結婚する30歳経理部女子の願い叶える3つの条件

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業界を熟知した元ウエディングプランナーが、無償で相談にのり、理想の結婚式を願うカップルをサポートしてくれる「トキハナ」。

そんなトキハナに所属する中でも、これまで5000組以上のウエディング相談実績を持つカウンセラーの神田裕子さんが、後悔のない結婚式にするためのヒントをお伝えする連載。

第14回目の相談者は、システムエンジニアの彼と経理部で働く女性の職場カップル。

ぱっと見、控えめで落ち着いた風のふたりは、「教会式は気恥ずかしい」と神前式を希望するが、披露宴では彼にバンド演奏をしてもらいたいと言う。

厳粛さが求められる和式の結婚式で、ドラムの音が響き渡るバンド演奏。

やや違和感のあるオーダーだけに、ふたりで式場見学を回っても、その要望を受け容れてくれる会場がなかなか見つけられないのだという。

ウエディングプランナーの大ベテランは、どんなアドバイスを与えるのか。

神田さんの寄稿でお届けする。

「やりたいことの実現の仕方がわからない」

今回ご紹介するのは穏やかな時間が流れる職場で出会い、自然と惹かれ合って結婚に至ったというおふたり。

仁さん(仮名)36歳は、口数が少なく控えめですが、時折優しい笑顔がこぼれる男性です。「システムエンジニアとして黙々と仕事に打ち込む姿が印象的なんです」と話す浩美さん(仮名)は30歳。落ち着いた雰囲気で、堅実な考え方をお持ちの女性です。経理部で働く彼女は、いつも正確な仕事ぶりで周囲から信頼されていたそうです。

ゆっくり丁寧な会話のテンポや 決して大きくない声のボリューム、身にまとう空気感がとても良く似ているなぁ、というのが第一印象でした。

「やりたいことはあるんですけど、どうやって実現したらいいかが分からないんです……」

挨拶と自己紹介を終えたところで、浩美さんが少し不安げな表情を浮かべながら打ち明けてくれました。隣に座る仁さんも、心なしか緊張しているように見えます。

“バンド演奏はできない”と断られて

「まずは、おふたりの希望をゆっくり聞かせてください」

笑顔でそう伝えると、浩美さんは少しホッとしたように表情を緩めて、話し始めました。

「私は教会式がなんだか気恥ずかしくって、神前式の方が自分たちらしくて良いかなと思っているんです。あと彼が、バンドをしているので、披露宴ではバンド演奏もしたくって……」

「ただ実際に会場に足を運んで聞いてみると、“バンド演奏はできない”って断られてしまいました。バンド演奏できる会場って、限られているんでしょうか。自分たちではどうやって見つければ良いのか、さっぱりわからないんです」

仁さんがバンド……! 控えめな印象とのギャップに内心驚きつつ、彼の持つ多面性にワクワクしてきました。一方で、浩美さんの言葉にも深く同感します。

「そうですよね。たしかに神前式が挙げられる式場だとバンド演奏は難しい事が多いので、きっと残念な思いをされましたよね」

「そうなんです。けど、実際に見学に行ってみないと、できるかどうかがわからないので、見学で探し回るには、時間がどれだけあっても足りないと思って……」

ふたりで回るだけでは非効率

本当におっしゃる通りなのです。

結婚情報誌をいくら読み込んでも、細かい対応可否は書かれていません。そこで実際に会場へ足を運ぶわけですが、1会場あたりの拘束時間は3〜4時間が平均。がんばっても1日2会場が限界でしょう。おふたりで休みを費やして回っていては、いくら時間があっても足りないし、非効率でタイパも悪い。

「おふたりのお気持ち、よく分かります。神前式とバンド演奏、メリハリがあってゲストの印象にも残りそうですし、仁さんのこともよく知ってもらえそうで、とても素敵だと思います。式場探しは少し難しいところもありますが、実現できるところを一緒に見つけましょう」

そう伝えると、ようやくおふたりは笑顔を見せてくれました。

「良かった、笑ってくれた。ここから、ここから」私も、内心ほっとしました。

そこから、神前式ができる会場の特徴や、バンド演奏が難しい理由を丁寧に説明する事にしました。

バンド演奏が難しい理由

神前式ができる会場の特徴

■神社

・厳かな雰囲気の中で、伝統的な神前式を挙げることができる。

・格式高い、由緒ある神社での挙式は、特別感がある。

・自然豊かなロケーションでの挙式も可能。

・披露宴会場が併設されていない場合、移動の手配が必要となる。

■ホテルや専門式場

・館内に神殿が併設されている場合がある。

・挙式と披露宴を同じ場所でできるため、移動の負担が少ない。

・設備やサービスが充実しており、サポート体制も整っている。

・参列者の人数に合わせて、様々な規模の披露宴会場を選べる。

・他のカップルと施設を共有するため、プライベート感が少ない場合がある。

■料亭やレストラン:

・一棟貸し切りの会場であれば、プライベートな空間で神前式と披露宴を楽しめる。

・こだわりの料理を提供している会場が多い。

・落ち着いた雰囲気で、アットホームな結婚式を挙げたいカップルにおすすめ。

・移動の手配や設備の確認など、事前の準備が必要となる場合がある。

バンド演奏できる会場の特徴

■防音対策がされている:

・近隣住民への配慮から、演奏可能な時間帯が制限されている場合がある。

・演奏する楽器の種類や音量によっては、制限がさらに厳しくなる場合がある。

■スペースが十分にある:

・バンドメンバーが演奏できる十分なスペースが確保されている。

・楽器の搬入・搬出がスムーズに行える動線がある。

・ゲストが演奏を楽しめる十分なスペースがある。

■柔軟な対応が可能

・バンド演奏に関する要望(曲数、音量、楽器の種類など)に柔軟に対応してくれる。

・演奏以外の演出(照明、映像など)にも対応してくれると、さらに良い。

希望する演奏と相性が良さそうな式場タイプ

■ゲストハウス

・一棟貸し切りなので、他のカップルを気にすることなく、自由に演奏を楽しめる。

・アットホームな雰囲気で、ゲストとの距離が近い結婚式を挙げたいカップルにおすすめ。

■レストラン

・貸し切り可能なレストランであれば、プライベートな空間で演奏を楽しめる。

・音響設備や防音対策が整っているレストランもある。

・こだわりの料理と音楽を一緒に楽しみたいカップルにおすすめ。

このように、神前式と相性が良いのはホテルや専門式場、バンド演奏と相性が良いのはゲストハウスやレストラン、という事になります。

ホテルや専門式場でも楽器演奏自体はOKな場合が多いのですが、バンド演奏、特にドラムのような大きな音が出る楽器は、他のカップルへの影響を考慮して禁止されていることがほとんどなのです。

しかし、仁さんの担当はドラム。これを外すことは絶対に出来ません。

神前式ができて、演奏スペースを確保できるのは

ではドラム演奏ができそうなゲストハウスやレストランはというと、「神前式ができるか」と「バンド演奏のスペースを確保できるか」、の2点がポイントになります。

ゲストハウスやレストランの場合、施設内に神殿はないので、基本的には神社からの移動がマストになります。

また、ホテルや専門式場と比べるとコンパクトな施設が多く、スペースを確保できるかが大きな壁となりそうです。

おふたりの招待予定人数は70名ほど。一般的なレストランやゲストハウスの収容人数は60〜80名程度なので、バンドスペースを設けるとなると なかなかの難問です。

おふたりは真剣な表情で私の話を聞いていました。

「あまり深く考えていなかったけど、思った以上に難しいんですね」

「正直なところ、難しくないと言えば嘘になります。でも、何とか実現できそうな会場に心あたりがあるので、おふたりにご相談なんですが……」

できるだけ不安を与えないように、笑顔でこう言ってみました。

「チャペルでバンド演奏、してみませんか?」

少し予想はしていたのですが、おふたりはキョトンとした様子で私を見ていました。

「え、チャペル? で演奏ですか?」

「あ、ですよね。そうなりますよね。ごめんなさい、唐突に。ちゃんと説明しますね」

ずいぶんと混乱させてしまったようですが、それでも、おふたりの希望を叶えることができるのは、きっとここだけなのです。ポカンとするおふたりを前に、ある種の確信をもって会場提案を続けました。

◇神前式なのに、チャペルで演奏……。

突飛に聞こえる神田さんの提案に、固まるふたり。だが多種多様なウエディングをプランニングし、取り仕切ってきた神田さんには、勝算があった。

後編「結婚式で『神前式&バンド演奏』希望の職場カップル、夢を叶えた『裏技』とその値段」では、ふたりが理想を叶える会場との出会いを、詳しくお伝えする。

結婚式で「神前式&バンド演奏」希望の職場カップル、夢を叶えた「裏技」とその値段