最新技術でどうにかなると思ってた…妊活したバービーが「日本の不妊治療」で感じた本音

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フォーリンラブ バービーさんのFRaUweb連載「本音の置き場所」第57回では、2024年8月18日に自身のSNSで第一子の出産を報告したバービーさんに、妊活についての本音を綴っていただいています。卵子凍結を選択した時は「気休めのつもり」だったというバービーさん。いざ妊活を始めると、「もっと早く知りたかった!」ということだらけだったそうです。思わずかつてネタ番組で森三中の黒沢さん椿鬼奴さんと東京イッテヨ娘というユニットを組んだときのように「ん〜もうそれ早く言ってよ〜」と言いたくなってしまったとか。

そして「妊活の壁」にいくつかぶち当たりました。そのひとつめは、卵子凍結を実際使うことになった時。「未授精卵由来の出産率」を病院の先生から見せてもらい、その低さに驚愕しました。バービーさんが創造するよりはるかに低い数字だったのです。それを見てバービーさんはどうしたのか……後編ではさらに「早く言ってよ〜」案件も続きます。

*医療に関することは、個別に違いもあります。バービーさんが体験したことを書いていますが、是非個別に医療関係者の方々にご相談ください。

「最新技術でどうにかなるでしょう」と思っていた。

卵子凍結を用いた出産率の、この病院での驚くべき低さ。

それを知っていたら、もっと先に採卵手術をするなど別のカードをきることも考えたのに。

妊活中は次の生理が来るまでの1ヵ月がこんなにも貴重で長いものだと知らなかった。採卵するのか移植するのかスキップして体を休めのか、毎月の一挙手一投足が賭けなのだ。

気休め半分の卵子凍結保存だったが、どこか「最新技術でどうにかなるでしょう」と思っていた。卵子保存は、しときゃ妊娠をいくらでも先延ばしに出来る魔法の技術ではなかった。

2023年、都では卵子凍結にかかる費用の助成を開始した。

事業への参加意思を示している人は、医療行為を終えていない人を含めて、今月上旬時点で当初の支給見込み(300人)の9倍超の2855人に達していると様々なメディアで報じられている。

まだまだ日本では凍結保存した卵子を使って不妊治療する人が少なく、技術やデータが揃わないのかもしれない。

最近は、卵子保存サービスの事業所も増え一縷の望みを託すべく実際にやる人も増えてきた。だからこそ、保存した卵子の行末などの情報公開をしっかりしていってほしい。

ショッキングな出来事ではあったが、この頃はまだまだ元気。まあ、まだ始まったばかり、そんな上手くいくはずないさと切り替えた。

壁のふたつ目は…

「早く言ってよ〜」と言いたくなった壁のふたつ目は、PGT-A。これは【着床前の胚のスクリーニング検査】だ。体外受精によってできた受精卵(胚盤胞)から、胚の染色体の本数を調べる検査で、染色体異常による流産を回避し、妊娠率や出産率を高めるためのものだと私は認識している。

かつては流産を2回以上経験した人が適応だったり、今も条件などはクリニックごとに違ったりするが、日本では検査を受けるまではとにかくハードルが高い。

つまりほとんどの人が受けないということだ。

【着床前胚異数性検査(PGT-A)】は、2023年8月1日から保険適用の採卵で実施されるようになった。ただし、将来の保険化に向けて限られた施設でのみ実施されており、保険診療との併用は禁じられている。

日本産婦人科学会としては、「命の選別」を理由にあげているらしい。たしかに出生前診断についても議論がされている中でもある。ただ、流産を繰り返す女性の心身の負担を考えると、もう少し手の届きやすい検査であってほしいと思う。

待合室で泣いている姿を見ることも

不妊治療クリニックの待合室は、そこでしか感じ得ない空気が流れている。

退屈そうなパートナーの隣りで居心地悪そうにまるまって座っている女性。

義母らしき人と来ている人。

待合室のロビーでパソコンや手帳を開き、仕事モード全開の女性。

年代もバラバラ、色々な人でいつも混んでいる。

私はこの仕事しかしたことないが、会社勤めの方はとれだけ大変だろうと思う。

通院のスケジュール調整。

薬の副作用。

結果を喰らってからのメンタル。

これらを引きずってみな日常生活に戻っていく。

決して耳をそばだてているわけではないが、順番待ちをしているといろんな声が聞こえてくる。

嬉しそうな声が聞こえてくるのは稀で、ほとんどの方が重く悲しい空気を纏って診察室を出てくる。

泣き声や怒りの声が漏れ聴こえてくることも、待合室で泣いている姿を見ることもあった。

そういう方に誰かが声を掛ける訳でもないが、私には、どこかみんな共鳴している佇まいに見えた。

女性である自分の体が不良品なのではないかと思ってしまうあの瞬間。無言の共感と励ましに包まれて連帯感が生まれるているように見えるのだ。

飴のひとつでも差し出せたら……こんな時”大阪のおばちゃん”に憧れる。

私の中の反抗期が…

そうなってくると、謎の正義感からか、心の中に飼っている反抗期の私が旗を揚げる。お子様ランチに立ってるぐらいの小さい旗だが。

すると、盲信し、言われるがままだったお医者さんの言葉に、疑念がむくむくと湧いて出てきた。

ただ心の中で反論するだけだが、こんな感じ。

「まずは徐々にステップアップしていきましょう」

まずはも何もそんな悠長に構えてる時間はないのだ!

「まあ、何回かやってみましょう。これは確率の問題だから」

妊娠しなかったら、不妊治療どっぷりハマって、クリニックが儲かるだけやんけ!

風が吹けば桶屋が儲かるよりも、もっと直接的なロジック!

と、私の中の反抗期が叫んでいた。

通院中は、お股広げて、注射して、の繰り返し。

人に説明しづらいままスケジュールを調整し、ゴールの見えない賭けをし続ける。

日本の生殖医療への疑念も相まって、次第に不妊治療しながら仕事をすることに少し疲れていった。

私の場合、全然共感を得られないエピソードばかりになってしまうが、水もの(キンキンに冷えた水に落ちる系)や落とし穴の可能性がある場合は、マネージャーさんを介してうまく伝えてもらったり、食レポの際は、生ものアルコールを避けたりした。

副作用なのか、頭が回らないし、体も不調だらけ。

この仕事をしてるのに物理的にもメンタル的にも、楽しいことができなくなってきている自分がとても怖かった。

プロジェクトの中には、私の妊娠待ちの仕事もあったりして、周りの人たちに付き合わせてしまっている申し訳なさもあった。

金がバカスカバカスカ飛んでいく

なのに、なのに、金がとにかくバカスカバカスカ飛んでいく。

お金が大好きな私にとって、稼げもしないし、お金が出ていく悪循環が1番しんどかった。

良い結果が出なかったときの会計窓口で、高額な請求金額を見てカードを取り出すあの瞬間。

肺をくしゃくしゃに握り潰されたかのような苦しさに襲われる。

私何やってるんだろと茫然としてしまう。

これ、ひるおび何回分……?

なぜかお金の計算だけは瞬時に頭が回るのも、また恐ろしい。

「早く言ってよー」

3つ目は、TRIO検査【ERA・EMMA・ALICE検査の総称】。

海外ではまずやるのよーと知人が言っていて、初めて知った。

詳しくは是非調べてほしいのだが、簡単に言えば妊娠率をあげるための検査で、体外受精を何回か失敗したらお勧めしますというクリニックもあるようだ。これも私にとっては、まさにそれ早く言ってよーの目白押しだった。

何が原因かわからず途方に暮れてたが、検査をしたことで心掛けるべきことが明確になった。それだけで、心に光が差したように感じるのだ。

私の場合、EMMA・ALICE検査で子宮内フローラや慢性子宮内膜炎の有無を調べた結果、最悪の状況であることがわかった。

妊活を始めてかなり経ってからのことだった。最初に病院で提案してくれていたら……。

これもまた、もうそれ早く言ってよーな事案だった。

日本には、生殖医療施設はたくさんあるし、実施数も多いという。だが、それが成功率につながっているとは必ずしも言いがたいのではないだろうか。

合理的とは思えないルールが多いのだ。

もちろん、保険適用内でできることがベースなのだろうし、色々増やすとお金がかかることも多い。そして医学会も欲しい人が授かるために尽力しているんだろうということも想像できる。

ただ、妊娠を心から願い、悩んだ身としては、成功率を上げるために、最新技術を取り込むこと、それらを提示していくことに前向きになってほしい。

産みたいという人のことを1番に考えて、遠回りせずに妊娠できるルートを示してほしいものだ。

それが、結果的に金銭的、時間の問題の解決に繋がると思うからだ。

もちろん、自由診療で儲けるために不安を煽るようなこともありうると聞くし、「検査をすればいい」「最新技術だからいい」というものではもちろんない。ただ「もう少しなんとかできないものか」というのが本音だ。

不妊治療をしている人は、2021年時点で夫婦全体の約4.4組に1組の割合だという。

たくさんの人がしているのに、不妊治療は孤独な闘いだ。

妊娠を望む人が置いてけぼりにならないように、信頼できる情報という襷で繋がることを願うばかりだ。

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