いったいなぜ…「自民党と旧統一教会の蜜月」を批判しない人たちの「ダブルスタンダード」

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旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党の関係についての問題が再燃している。安倍晋三元首相と教団幹部が選挙支援に関して会談したとされる際の写真が、9月18日付の朝日新聞に掲載されたのだ。

だが、この問題について、ふだんネット上で攻撃的な発言をしてきた「ネトウヨ」と呼ばれる人たちが“おとなしい”のはなぜか。

前編記事『日本の政治はどこまで歪められてきたのか…「自民党と旧統一教会の蜜月」を批判しない人たち』に引き続き、旧統一教会問題に詳しい紀藤正樹弁護士に聞いた。

黙り込む人たち

朝日新聞に掲載された写真は、2013年の参院選直前、安倍晋三首相(当時)が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の会長らと自民党本部の総裁応接室で面談をした時のものだ。

「関係者によると、安倍元首相らはこの日、自民党比例候補の当落について協議したそうです。つまり、選挙支援の確認の場。教団側からは教団会長(当時)の徳野英治氏や、教団の関連団体『全国祝福家庭総連合会』総会長(当時)の宋龍天氏、教団と友好的な保守系の政治団体『国際勝共連合』の幹部も出席した」(全国紙政治部記者)

この日撮影された写真は、安倍元首相と徳野氏らが並んで立つものや、会話を交わしているところなど、複数枚あるという。

自民党総裁選を前に問題が再燃したかたちだが、当の候補者たちはだんまりを決め込んでいた。ただ、それは彼らだけに限らない。「ネトウヨ」と呼ばれる一部の保守的な人たちも同様だ。

前編記事で紀藤弁護士は、安倍元首相が海外発の宗教団体である旧統一教会の幹部と選挙対策について、自民党本部の総裁応接室で面談すること自体、「国の危機管理や国防上、国家安全の観点から考えても、かなりの問題がある」と指摘しているが…。

「彼ら、彼女らは韓国や中国などが関わる問題があればすぐに飛びつき、SNSを通して攻撃的な発言をします。時にXのトレンドに入るほどに大騒ぎに発展することもありますが、今回、朝日新聞が報じた旧自民党と統一教会の問題に関しては声が小さい。日本の国益を損ないかねない重大問題なのに、保守の親玉である“安倍元首相”が関わっていると、なぜか黙り込んでしまう」(宗教事情に詳しいジャーナリスト)

その理由について、紀藤弁護士は次のように説明する。

「正統派の右翼団体や右翼思想の人、ネトウヨは統一教会を批判しています。ただ、右翼の中でもいろいろあり、安倍さんを批判しない理由は『敵の敵とも手をつなぐ』という思想からきているものもあるとみられます」

本当は嫌いだけど批判しない?

わかりづらいかもしれないが、つまりこういうことだ。旧統一教会は嫌いだけど、安倍さんは好き。だから表面的には反共思想にみえて、安倍さんが仲良くしていた旧統一教会の批判はやめよう。もちろん安倍さんのことも批判しない――という「ダブルスタンダード」だ。

「そうしたタイプのネトウヨの人は、安倍さんや統一教会の批判はしないと思います」(紀藤弁護士)

今回の総裁選でも、そうした姿勢がうかがえた。

「ネトウヨの人たちの中には、旧統一教会との関係が指摘されている高市早苗氏を応援している人も少なくありません。彼ら、彼女らの主張としては『高市さんは旧統一教会だと知らなかったと言っているから、それでいいじゃないか』『いまさら知らなかった人を追及するのか』『もう断絶すると言っているからいいじゃないか』などということ。批判ではなく、『旧統一教会と縁を切った高市氏を応援している』ようです」(前出・宗教事情に詳しいジャーナリスト)

誰が総裁になるかで今後は変わる

批判を控えるこうした状況は、自民党や旧統一教会にとって好都合だろう。時間の経過とともに有耶無耶になってしまえば、ほとぼりが冷めたころ、自民党と旧統一教会は再び利用し合う蜜月状態を再開させるのではないか。紀藤弁護士が指摘する。

「たとえば高市さんはじめ、統一教会とのつながりが指摘されている議員が自民党総裁になったとすれば、政府は統一教会問題に対しては甘い対応を続けるでしょう。

一方で小泉進次郎さん、石破茂さん、河野太郎さんといった統一教会とほとんど関係がない候補者や、統一教会問題を指摘してきた林芳正さんらが総裁になれば、教団に対して手心を加えるようなことはないでしょう」

次の自民党総裁が誰になるかによって、旧統一教会問題の今後は左右されそうだ。

「自民党にとって、自分たちが組織ぐるみでやってきたことが明るみになり始めているわけですが、その一方で、党の中心的な存在だった安倍さんが殺害された事件でもある。自民党はこれまで自分たちが利用してきた団体との問題を一度洗いざらい総括し、次の世代につなげる対策を取らなければならない。

統一教会の問題は信者とその家族に多くの被害が出ている、という認識だけではなく、政治との関わりがあったことについても、もっと強く関心を向ける必要があると思います」(紀藤弁護士)

真に「美しい国、日本」を守るためには、どうすればいいのか。答えは明白だ。

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