十八親和銀行が手掛けるドーミー長崎新大工町(提供)協立メンテナンス

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【経済ニュースの核心】

第四北越FG×四国銀行 中小・零細企業を支援する地方銀行を比較

 ふくおかフィナンシャルグループ傘下で長崎県地盤の十八親和銀行が“異色”の店舗開発に乗り出す。「賄い付き」の賃貸寮を併設した銀行支店で、既存の新大工町支店・馬町支店(長崎市)を建て替える形で2026年春完成を目指す。「金利のある世界」の復活で削減一辺倒だった地銀の店舗戦略も変わろうとしている。

 新支店は鉄筋コンクリートの13階建て。1、2階が銀行店舗となり、2〜13階が寮となる。管理人夫婦が常駐し、厨房で作った「温かい食事」を提供できる体制とする。

 寮部分の延べ床面積は3223平方メートル。1室18.8〜23.2平方メートルの居室を106室設ける。

 食堂やラウンジ、ヨガや映画観賞が楽しめる防音機能を施した多目的室も併設。専用のICキーを用意し、安心・安全にも配慮する。主に「県外からの学生の受け皿としての利用を想定」(関係者)しているという。十八親和銀の支店に同居している以上、利便性を考えると同行の口座を仕送りなどの受取口座に設定する可能性は「限りなく高い」(地銀幹部)。銀行からすれば新たな個人顧客をごっそりまとめて獲得できる機会が広がることになる。

 地銀は長引く超低金利下で実店舗を「コストセンター」と見なして削減数を競ってきた。21年には支店統廃合などにより全国で550を超える店舗が消滅。ペースは落ちたものの、23年も240以上の店舗が姿を消している。

 しかし金利のある世界では預金集めが収益拡大のカギとなる。貸出金の「原資」として利ザヤを稼ぎ出すもととなるからだ。そのためには「顧客との接点をつくり出す場として実店舗の存在は欠かせない」と大手地銀幹部。このまま店舗縮小を続ければ「ネット銀行などにどんどん預金が流出してしまいかねない」との危機感も募らせる。

■相次ぐ店舗戦略の見直し

 店舗戦略見直しの動きは実際、もう始まっている。九州地盤の西日本シティ銀行では昨年、福岡市に26年ぶりとなる支店を新規開設。熊本県本拠の肥後銀行は来年、合志市に18年ぶりとなる出店を決めた。また山陰合同銀行は当分の間、店舗削減を取りやめる方針だ。

 新規顧客を獲得できるうえ、寮の利用者からの賃貸料収入で、店舗運営コストの一部も賄える──。「十八親和銀方式」の店舗開発は今後、勢いを増していくかもしれない。

(重道武司/経済ジャーナリスト)