名古屋地方裁判所

写真拡大

 警察官の立場を悪用して女性に性的暴行をしたなどとして、強制性交致傷や強制わいせつなどの罪に問われた愛知県警機動隊の元巡査長井上陽(のぼる)被告(29)の裁判員裁判が24日、名古屋地裁であった。

 検察側は被告に懲役18年を求刑した。

 起訴状などによると、井上被告は2023年4月、名古屋市内の駐車場にとめた車内で当時20代の女性に名刺などを見せ、「性交に応じなければ捜査を行う」などと脅迫。性的暴行を加えて全治不明のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を負わせたとされる。また、21年5〜7月に当時8〜13歳の女児5人に対し、公園のトイレの個室内などでわいせつな行為をするなどしたとされる。

 検察側は論告で、「常習的に敢行された卑劣かつ狡猾(こうかつ)で、鬼畜のごとき犯行」と非難。「警察官という身分を犯行に悪用しており、同種事案の中でも格段に悪質」と指摘した。弁護側は、被告が警察官の職を失い反省を深めているなどとして懲役6年が相当と主張した。

 この日の公判の冒頭では被害者の女性が書面で意見陳述。性的暴行されたことの苦しみ、撮影された動画が拡散されるかもしれない不安、名前や住所を知られてしまい引っ越しを余儀なくされたことなどを挙げ、「世を守る警察官を信頼できなくなったつらさと事の重大さを皆さんにわかってほしいです」と訴えた。(奈良美里)