防衛省は23日、ロシア軍の哨戒機1機が、北海道・礼文島北方で3度にわたり、日本の領空を侵犯したと発表した。

 ロシア軍機による領空侵犯は2019年以来。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、強い熱と光を発する「フレア」を用いた警告を初めて実施したという。政府は外交ルートで極めて厳重に抗議し、再発防止を求めた。

 林芳正官房長官は同日、記者団に「極めて遺憾だ。警戒監視に万全を期す」と強調。木原稔防衛相はフレア使用について「対応の一つだ。今後も取り得る運用をちゅうちょなく行う」と語った。

 同省によると、23日午後0時50分ごろにロシア軍のIL38哨戒機が大陸方向から飛来し、礼文島北方の空域で午後1時3分から約1分間領空に侵入。同機はその後周辺でジグザグ飛行や旋回飛行を続け、午後3時31分ごろと同42分ごろにも2回、領空に入った。

 空自はF35とF15を発進させて対応し、無線による呼び掛けや警告を実施。3度目の侵犯の際に、フレアを射出したという。ロシア機は午後5時50分ごろまで飛行を続け、大陸方向に去った。

 フレアはミサイル回避などに用いる装置で武器使用には当たらないが、熱や閃光(せんこう)を相手に示すため、対領空侵犯措置ではより強い警告の意思を伝えるために用いられる。空自が無線や機体動作以外の手段を用いて対応したのは1987年に旧ソ連軍機に信号弾による警告射撃を行って以来2度目という。