「カメラがある場所を教えられてもわからない」…勤勉すぎる盗撮のプロたちが実践する「卑劣な撮影手口」

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「チーム盗撮」「盗撮会」などの名称のLINEグループを主催し、自ら「盗撮王」と名乗る静岡県湖西市の会社員金沢勇太容疑者(23)が逮捕された。金沢容疑者は浜松市内の商業施設で女性のスカートの中を盗撮して、画像をLINEグループに投稿。さらにSNSアカウントにも投稿した疑いが持たれているという。

闇バイトなどの犯罪のリクルートがSNSで行われていることは近年知られるようになったが、盗撮のコミュニティもSNSを入口としてまん延している。

前半記事に『自称「盗撮王」逮捕は氷山の一角、学校内での被害も多発…SNSに蔓延る盗撮魔たちの「ヤバすぎる実態」』に続き、今回は一般社団法人「全国盗撮犯罪防止ネットワーク」の理事として、数々の盗撮事件に関わってきた筆者が、警察の手が及んでいない盗撮コミュニティの実態を解説する。

鳥師たちが集まる不気味なサイト

盗撮コミュニティではどんなやりとりが行われているのだろうか。その不気味さが一部垣間見えるサイトがある。現在は表向き閉鎖されている「美しき鳥の世界」という名のサイトだ。

サイトの名のとおり、”美しき盗撮の世界”と謳ったサイトである。活動歴20年のベテランがサイトの主催者だとある。少し気持ち悪い思いをするかも知れないが、盗撮犯の心理を知る上でも重要なのでこのサイトの自己紹介文を引用する。

はじめまして、●●●と申します。これまで逆さ、トイレ、着替え、風呂、定点、ハメ、様々な鳥シチュエーションを経験してきました。そこで培ったノウハウを伝授すべく、鳥師による鳥師のためのサイトを立ち上げました。皆さまの鳥ライフが充実するように、基本から応用まで様々な鳥情報を発信し続けることをお約束します

このサイトには、情報交換のコーナーや画像交換、さらには盗撮協力依頼まで、盗撮に関することがワンストップで得られるようになっていた。犯罪行為であるという後ろめたさは無い。みんなで「鳥ライフ」を充実しましょう、と優しく呼びかけるようなサイトだ。

サイトは今年5月に閉鎖されたが、主催者のフォロワーは3500人を超え、コミュニティのメンバーは1000人を超えたとアナウンスがされていた。おそらく今もメッセージアプリでやりとりをしていると思われる。

鳥情報、鳥テクニック、作品に登場している被写体の情報(名前やSNS)などを共有します。私自身鳥歴は長いですが、鳥のすべてを知っているわけではありません。まだ見ぬ穴場やテクニック、その他情報をみなさんから学ばせて頂きたい

彼らは画像だけでなく、盗撮した女性の情報や普段の姿をSNSで見ることで興奮を覚えているようだった。しかもとても勤勉で、カメラを改造するテクニックを日夜研究しているのだ。

ある盗撮ベテランはこう語る。

「本当のプロの盗撮は、カメラがある場所をあらかじめ教えてもらったとしても探すのは難しいです。一度、浴室にカメラが仕掛けてあると聞いて、中をのぞいたんですが、カメラは見つけられませんでした。自分で関係しておいてなんですが、盗撮のプロの技術は恐ろしいなと感じました」。

このベテランによると、盗撮コミュニティは無数に存在するという。

10年以上捕まることなくスカートの中を撮り続けた男

なぜ盗撮メンバーはカメラの技術にこだわるのか。盗撮被害の抑止につとめている全国盗撮犯罪防止ネットワークの和泉慎一理事に聞いた。

「盗撮する人間にとって最大関心事は警察に逮捕されないことです。バレないカメラをどうやって作るかに心血をそそぎます。ですから盗撮犯は無線や電子工作の知識に精通しています。逮捕されたあとの押収品などをみると、カメラの基盤から改造しているのが分かります。それに一役買っているのが盗撮コミュニティなのです。カメラの知識がある人間は改造の仕方を伝授する。盗撮に成功すれば、画像を共有してもらうというインセンティブがあるわけです。盗撮のコミュニティのメンバーはますます逮捕されづらくなっていくのです」

筆者は、去年逮捕された盗撮のカリスマと呼ばれた「Mr.研修生」という男の裁判を傍聴したのだが、やはり彼も盗撮コミュニティから技術指導を受けながら特殊カメラを改良し続けたと語っていた。

「Mr.研修生」はビジネスバッグにレンズを仕込み、スカートのなかを撮影していたのだが、撮影している映像はリアルタイムで手元のスマートウォッチで確認ができる。しかも手元のボタンを押すとバッグからライトが出る仕組みになっていて、スカートの中が暗くても撮影可能だ。

Mr.研修生はこの方法で盗撮画像を販売。盗撮のフリマサイト「P」などを通して、1億5000万円を売り上げた。実はこのカリスマ、販売していた画像から足がついて逮捕されたのだが、それまでに10年以上捕まることなくスカートの中を撮り続けている。

これも裁判で明らかになったことだが、「Mr.研修生」は盗撮コミュニティから法律的なアドバイスも受けていたという。盗撮の捜査はどのように行われるか、どういうリスクがあるかなどなど、アドバイスを受けながら、警察の目をかいくぐって盗撮を続けていたという。ちなみに「Mr.研修生」を逮捕したのも、「盗撮王」こと金沢容疑者を逮捕したのも京都府警だ。インターネットを舞台にしたサイバー犯罪を得意としている。

去年、盗撮で検挙された数は8121件あった(迷惑防止条例と撮影罪の合計 2023年 警察庁)。

撮影罪という新しい法律が出来たことで取り締まりやすくなったこともあるだろうが、去年と比べて40%ほど増加している。これは検挙されただけの数字で、上記のような盗撮コミュニティに所属する「プロ」たちの数は入っていない。京都府警のような捜査を全国規模で展開してもらいたい。

取材・文/竹輪次郎(ジャーナリスト)

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