練習中に笑顔を浮かべる千葉(カメラ・岡野 将大)

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 巨人の若手選手の今を伝える「From G」。第11回は育成ドラフト6位左腕の千葉隆広投手(19)=旭川明成=。今季は高卒1年目ながら3軍の先発ローテーションを任され、防御率1点台をマーク。将来のG投を支える可能性を秘める有望株が、安定した投球を支えるグラウンド内外の心がけや、体づくりによる投球の変化を語った。また、野上3軍投手コーチが、千葉の長所と現在取り組む課題について明かした。(取材・構成=小島 和之)

 よく日に焼けた千葉の表情には充実感が漂っていた。将来性豊かな左腕は、プロで生き抜くため自身を律する日々を過ごしている。

 「自分の時間が多くあるので、どれだけ考えながら生活や練習もできるかが大事だな、と実感しています。自室ではベッドの横にストレッチができる場所を作って、食事後にはそのまま部屋に帰るのではなく、ストレッチルームでその時にしか感じられない体の状態を確かめています。そういう時間を大事にして、習慣にできたらと思っています」

 新人ながら3軍の先発ローテを任され、15試合で3勝2敗、防御率1・58と安定した投球が続く。

 「悪い数字ではないと思いますが、2軍、1軍と上がっていくことを考えると、四球がちょっと多い。3軍は毎回違う相手と戦うことが多いですが、2軍はデータが集まってくれば分析も対策もされやすい。初見の相手だから抑えられているという認識なので、現状に満足せずにやっていきたい」

 好成績におごらず冷静に自己分析する一方で、右打者内角を突くクロスファイアには自信を深めつつある。

 「左(投手)の生命線は、右打者の内角のラインをしっかりつくれること。高校時代からやってきたことをちゃんとできれば、どのチームや選手に対しても勝負ができるんだと少し自信になりました」

 将来を見据えた体づくりの効果もあり、体重は1年前に比べて8キロ増の83キロに。筋肉量も増え、投球にも好影響をもたらしている。

 「出力は上がっていますが、高校時代に5回投げた時より疲労感や張りは少なくなっていますし、まだ余裕があります。最速は(1キロ更新の)145キロになり、アベレージは142、3キロと高校時代から5、6キロは上がっていると思います」

 小さなテイクバックで投げ込むフォームは、リリースポイントが平均よりも低く、打者には下から伸びてくるような球質に見える特徴がある。最大限にデータを活用し、長所を伸ばす方法を探している。

 「コーチやデータ班の方々にフィードバックをしてもらえるので、自分の球質を客観的に見て、どう生かしたら有効かを考えながら試合で試しています。球速はプロでは速いほうではないですが、打者にどう感じさせて抑えるか。直球の球質は理想と少しずつ近づいているかなと思っています」

 野上3軍投手コーチからは、プロとして成功するための心構えを学んでいる。

 「一つはランニング中に言われた『走ったら走った分だけ金になる』という言葉で、すごく前向きな捉え方だな、と。もう一つは『キャッチボールやウォーミングアップは品のある動きをしよう。誰が見ても意識が高いと思えるようなキャッチボールをしていれば、どんどん(次のステージに)上がっていける』という言葉です。それを聞いてからはより大事にしています」

 ライバルたちの存在も刺激にしながら鍛錬に励む。同期入団の育成5位右腕・園田も3軍戦で防御率0点台と好投を続けている。

 「お互いの登板後に、2人で動画を見ながら『これは良かった』『これはもったいなかった』と何でも言い合える。いい関係で切磋琢磨(せっさたくま)できていると感じます」

 グラウンドを離れても成長のヒントを探す毎日。1〜3軍の試合をくまなくチェックすることが日課だ。

 「1軍が優勝争いをしている中で多くの若手が活躍している。優勝争いをしているチームで、どういうことを考えてやっているのかを感じ取れたらと思っています。結果出している人たちがどういうことをやっているかを見て、感じて、毎日ノートにも書いています」

 入団時に掲げた理想像は「チームを勝ちに導く投手」。そこに近づくための方向性は明確になってきた。

 「いまは先発ですが、2軍でチャンスが来たら中継ぎからだと思う。どの場面でも準備できるような心のコントロールは得意なので、どんな場面でも安心して送り出されるような投手になりたいです」

 ◆野上3軍投手コーチ、優れた観察力に可能性を感じる

 千葉は高卒1年目としては高いレベルの優れた観察力を持っています。目配り、気配りができる人間性もすばらしく、打者を見ながら投球できる器用さも併せ持っています。自信を持ってマウンドに立っているように見えますし、可能性を感じる投手の一人です。

 現在は体づくりと並行しながら強い直球を身につけようと取り組んでいます。彼の投球フォームは、打者からは少し横から投げているように見えるのに、直球にはホップ成分があるというギャップがあります。スライダーやチェンジアップも操ることができますが、まずは直球の大切さを覚えてもらいたいと考えています。

 どこでもこなせる器用さがあるので、将来的には先発、中継ぎの両方ができる投手を目指してほしい。優れた観察力は武器ですが、周りを見すぎてしまうと悪影響もあるものです。失敗を重ねながら、学んでいってほしいです。(3軍投手コーチ)

 ◆千葉 輶広(ちば・たかひろ)2005年5月15日、北海道出身。19歳。2歳から野球を始め、旭川明成では1年春からベンチ入り。準優勝した23年夏の北北海道大会では、創部初の決勝進出に貢献した。小学1年から取り組んだスキーのクロスカントリーでは、中学3年時に全国大会出場権を獲得(大会は新型コロナの影響で中止)。23年育成ドラフト6位で巨人入団。背番号016。175センチ、83キロ。左投左打。