複数のNPB球団がドラフト候補としてリストアップするノースカロライナA&T州立大の根岸辰昇

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 10月24日に行われるドラフト会議に向けて、複数のNPB球団がノースカロライナA&T州立大の強打者、根岸辰昇(たつのり)内野手(24)をリストアップしていることが19日、分かった。慶応高(神奈川)の3年時、「5番・中堅」として2018年夏の甲子園に出場。佐々木麟太郎内野手がスタンフォード大へ進学表明する5年前、米大学でのプレーを志し、海を渡った有望株だ。異国の地で才能を開花させた左のバットマンに、プロの熱視線が注がれている。

 根岸は広角に強い打球を飛ばし、ミート力に優れた中距離打者で、鉄壁の打球処理と送球の正確さで「Wizard(魔術師)」とも呼ばれた逸材だ。慶応高から慶大への進学率がほぼ100%の中、幼少期から米国の野球に憧れを抱き、「18歳の今しかできないチャレンジを」と留学を決断。恩師の森林貴彦監督が「本当に行くのか!?」と驚く中、独学で英語を学び、米国でのプレーを選択した。

 ヤンキースのアーロン・ジャッジの恩師としても有名な名伯楽、ジョン・アルトベリ氏からスカウトされ、オレンジコースト大へ進学。21年からはNCAA最高峰のディビジョン1に所属するミドルテネシー州立大で主軸としてプレー。今季は同じくディビジョン1のノースカロライナA&T州立大で一塁手として活躍し、51試合に出場して打率3割7分1厘、8本塁打、37打点。NCAAディビジョン1の歴代日本人史上最高のOPS1・064をマークした。

 7月12日には全米のマイノリティーの有望選手が集う米大リーグ球宴の行事「HBCUスイングマンクラシック」に選抜され、ドジャース・大谷翔平が出場する米球宴の前哨戦の顔にもなった。ケン・グリフィーJr.が監督を務める中、「4番・一塁」で先発出場し、2打数1安打1四球と存在感を示した。「よりハイレベルでやりたい。米国で得たスキルと経験を、日本球界で試したい」とNPB入りに照準を定め、7月下旬に帰国。首都圏で汗を流しながら、鍛錬を重ねる。

 米球界を実体験し、語学も堪能なだけに、攻守の活躍はもちろん、助っ人へのフォローなどでもチームへの貢献が期待される。「米国で一番成長できたのは適応力。球界一の選手になりたい。将来的には米国の経験を日本の野球界に還元できる立場になりたい」と根岸。佐々木麟太郎より一足早く海を渡った“逆輸入バットマン”の未来に注目が集まる。

◆ドラフト指名された異色の選手めも

 ▽日本ハム・大嶋匠捕手(11年7位) 早大ソフトボール部では日本代表にも選ばれた強打者。硬式野球未経験もプロ入り後は7年間にわたってプレー。

 ▽ロッテ・和田康士朗外野手(17年育成1位) 埼玉・小川高時代は野球部ではなく陸上部。クラブチーム・都幾川倶楽部硬式野球団でプレー後、BC富山で才能が開花し、入団。

 ▽DeNA・大橋武尊外野手(21年育成3位) 東京・銀座中出身。日本の高校野球を経験せず「米IMGアカデミー」に留学し、BC茨城を経て入団。

 ◆根岸 辰昇(ねぎし・たつのり)2000年9月20日、東京・杉並区生まれ。24歳。慶応中等部では軟式野球部。慶応高3年時にチームは春夏連続で甲子園出場。春はベンチ外。夏は外野手のレギュラー。19年8月にオレンジコースト大へ進学。21年8月からミドルテネシー州立大でプレー。24年はノースカロライナA&T州立大で一塁手のレギュラー。外野手も兼任。憧れの打者はメッツで80年代に活躍したダリル・ストロベリー。50メートル走6秒2。180センチ、100キロ。左投左打。