ゆりやんレトリィバァのアメリカ進出にSNSで嘲笑の声も「絶対に成功する」プロが脱帽する才能と技術

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お笑い芸人の『ゆりやんレトリィバァ』がアメリカ進出を発表したことが話題になっている。

お笑い界の“藤井聡太”

ゆりやんは、’13年に吉本興業のお笑い養成所『NSC大阪』を主席で卒業すると、翌年には『新人お笑い尼崎大賞』で大賞を獲得。芸歴わずか2年目の’15年にはピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり(現・R-1グランプリ)」の決勝進出を果たしている。’17年には『NHK上方漫才コンテスト』と第1回『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝を果たし、芸歴わずか4年目で女性お笑い芸人の頂点に立った。

それだけではない。’21年には『R-1グランプリ』も制しており、いわばお笑い界の“藤井壮太”と言ってもいいほどの超エリートなのだ。

お笑い界の中でも彼女を評価する人は多く、’17年に放送された『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)の中で、ゆりやんの推薦人としてVTR出演したレイザーラモンRGは彼女のことを《バケモン》と語っていた。その意味は《トークで笑いが取れるうえに、0から1を生み出すこともできる》からだという。「トークで笑いが取れる」のは芸人として不可欠な要素であって当たり前のことのように思えるが、完璧にできている芸人は意外と少ない。バラエティ番組で、いわゆる“ひな壇芸人”という括りでしっかり笑いが取れる芸人となるとほんの一握りだろう。

ゆりやんは、どんな場面でも必ず笑いを入れ込むという力がすごいのだ。例えば、自分の生い立ちを真面目なトーンで語っている時でさえも、突然変顔をしたり間を外すなどのテクニックで、必ず“笑い”を取りにいく。

では「0から1を生み出す」とは具体的に何を指すのか。おそらくネタのことを指していると思われる。それは彼女の持ちネタを見ているとよくわかる。笑えるネタになると考えたこともなかった題材を見事に笑いに昇華させてしまうのだ。

ドラえもん、昭和の女優、淀川長治

代表的なのは『ドラえもん』と『昭和の映画女優』だ。また今年の1月、ゆりやんの公式YouTubeで「ウォルト・ディズニー・ジャパン」のプロモーション動画が公開されたが、映画『哀れなるものたち』を、あの伝説の映画解説者・淀川長治さんのモノマネで解説している。過去にも淀川さんのモノマネをする人はいたが、持ちネタを使って配給会社の許可も得て、実際に公開映画の解説までしっかりやっていた人はいないだろう。しかも、笑いも取りにいっている。

つまり、ゆりやんは誰も見たことのない既視感の全くないネタと、ひな壇トークの両方で当たり前のように笑いを取る芸人ということになる。同時に、幅広い年齢層の笑いの“ツボ”を刺激する能力もずば抜けて高いということではないだろうか。

そんなゆりやんだからこそ、年齢だけでなく人種も超えることができるのでは、と思わせたのが過去のアメリカ進出だ。

アメリカのオーディション番組「America’s Got Talent(アメリカズ・ゴット・タレント)」に出演したのは’19年のこと。角刈りのカツラをかぶり、星条旗模様の際どい水着を着た彼女は、手首をクネクネさせながらステージを動き回る奇妙なダンスを披露。結果は残念ながら不合格だったが、パフォーマンスは大ウケだった。

その前後には流暢な英語で審査員とトーク。何度も笑いを取り、会場を大いに沸かせていた。アメリカ在住のウェブライターはこう語る。

「SNSでは会場の笑いが『嘲笑だった』という書き込みがありましたが、決してそんなことはありません。パフォーマンスだけでなく、彼女は積極的に英語で審査員とやり取りし、全てで笑いを取っていました。しかもいわゆるアメリカンジョークで、アメリカ人にウケる“ボケ”を飛ばしていたのです。台本があったわけではないですから、彼女の英語力とアドリブ力、適応力、瞬発力は本当にすごい。“アメリカの笑い”という意味でのポテンシャルは高いと思います。緊張しているようにも見えずメンタルも相当強いと思いました」

「成功するイメージしかない」

つまり、アメリカ人の笑いのツボにしっかりハマっていたということだろう。ただ今回のアメリカ進出は、お笑いパフォーマーとしてではなく“俳優”だという。日本人でハリウッドに進出し成功した俳優は数少ない。1、2回、映画やドラマに出演し話題になった俳優はいるが、出演し続けている俳優は限られる。これにもSNSでは、《また嘲笑を浴びるだけ》《自分を過信しすぎでは》といった批判的な反応が多く見られた。

「ゆりやんは淀川長治さんのモノマネについて、大学中の通学中に動画を見て、一言一句、息遣いも書き起こして読んで覚えたそうです。『千鳥のクセがスゴいネタGP』(現在は『千鳥のクセスゴ!』フジテレビ系)で披露した際には大悟は、大爆笑しながらも『似てるわ〜』と、そのモノマネ技術に感嘆していました。

人間洞察力や観察力、そして再現力は目を見張るものがあります。彼女のことですから、どうすればアメリカで受け入れられるのか、しっかり考えた上での渡米だと思います。成功するイメージしかありませんね」(バラエティ番組制作ディレクター)

ゆりやんならハリウッドに旋風を、いや大竜巻きを起こしてくれるような気がする──。

文:佐々木博之