指導者に転身した長谷部誠氏(C)Norio ROKUKAWA / office La Starada

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 最大のサプライズ選出は選手よりコーチだった。

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 日本サッカー協会(JFA)は昨29日、千葉市内で2026年W杯アジア最終予選中国戦(9月5日、埼玉)、バーレーン戦(9月10日、バーレーン)に臨む代表メンバーを発表した。

 性加害疑惑報道で選外が続いていたMF伊東純也(31=スタッド・ランス)、腰を痛めていたMF三笘薫(27=ブライトン)がともに約7カ月ぶりに代表復帰。年代別代表歴のない町田の22歳DF望月ヘンリー海輝の抜擢も目を引いた。

 それ以上のサプライズは、日本代表の主将を長く務めて23〜24年シーズン限りで現役を引退し、指導者に転身した長谷部誠氏(40=独EフランクフルトU21アシスタントコーチ)のコーチ入閣だ。

 08年から24年までドイツのブンデスリーガで384試合プレーしたキャリアの持ち主。

 森保一監督(56)が熱望したもので、この日の会見で「私が協会の方々に要望させていただいた。世界一を目指して戦っていくために、長谷部コーチが持っているヨーロッパでの経験は、我々が前進していく上で刺激になる。より必要だということで決めた」と期待を寄せた。

 9月のアジア最終予選に限らず、26年W杯本大会までコーチを務める方針という。

 さるサッカー関係者がこう言う。

「JFAは20年10月に増加する欧州組のサポート拠点として、欧州で随一の日本人街があるドイツのデュッセルドルフにオフィスを開設。常駐スタッフが情報収集に努めているが、日本サッカーの顔である長谷部のもとには、欧州でプレーする日本人選手のさまざまな情報や、欧州サッカー事情がどんどん入ってくる。森保監督はそうした“生”の情報をチーム編成や戦術面で活用したい思惑があります」

 MF遠藤航主将(31=リバプール)とDF長友佑都(37=FC東京)の招集ともリンクしている。前出の関係者が続ける。

「遠藤は以前在籍したシュツットガルトでも主将を務めたが、どちらかというとピッチ上で存在感を示しながら、背中で引っ張るタイプ。代表の主将は昨年就任したばかりなのもあって、強烈なキャプテンシーを発揮しているとは言い難い。だから、森保監督は遠藤をサポートさせる形でムードメーカーの37歳・長友をいまだに招集しているのです。まだ現役を引退したばかりで選手と目線の近い長谷部コーチは、持ち前のキャプテンシーをチームに注入する役割を担うだけでなく、選手と近い距離感で精神面のフォローも期待されています」 

 その長谷部コーチ入閣で早くも周囲は「ポスト森保の布石ではないか」とかまびすしいが、「長谷部ジャパン」誕生には、低くはない障壁がある。

長谷部コーチ自身も日本代表監督とは別の壮大な夢が…

「森保監督は22年秋のカタールW杯こそベスト16止まりだったが、1次リーグでW杯優勝国のドイツとスペインを撃破。指導力、人柄ともに高く評価され、森保ジャパンの仕掛け人である田嶋幸三JFA前会長の意向に沿った形で続投となり、26年北中米W杯まで指揮を執ることが既定路線となっている。もともと田嶋さんは<監督もコーチもスタッフもオール日本人で臨むのがベスト>という思考の持ち主。田嶋会長体制が続いていたら、サッカー界全体が<森保の次は長谷部>の流れになるだろうが、3月にJFAのトップに就任した宮本恒靖会長は<W杯ベスト16以上の成績を残せるなら外国人、日本人など国籍は問わない>が基本スタンス。必ずしも、長谷部がポスト森保の筆頭候補とは言い切れないのです」(同)

 長谷部コーチ自身も日本代表監督とは別の壮大な夢があるといわれる。

 4月17日にドイツで現役引退会見を行い、5月24日に日本でも会見に臨んだ。長谷部氏は「目指すは(古巣のフランクフルトの)トップチームで采配を振ること」とコメントしている。しかし、近しい関係者には「将来的には、一番上のところでやりたい」と漏らしているという。

「長谷部の<一番上>というのはズバリ! ドイツ代表監督のことです」と欧州サッカー事情に詳しい関係者が続ける。

「フランクフルトで好成績を残し、イングランドやスペインなど欧州列強リーグでも結果を出してキャリアを積み上げ、最終的にはドイツ代表監督に招かれ、W杯を制するというのが長谷部の究極の夢なんです。W杯優勝4回、準優勝4回のサッカー大国ドイツは、1923年のオットー・ネルツ監督以来、すべてドイツ人が務めている。もし長谷部がドイツ代表監督になったら、世界を揺るがす大事件となる。その偉業に挑戦しようと考えているというわけです」

 前人未到の高みを目指す長谷部コーチが近い将来、日本代表を率いる日は来るのだろうか。