マーケティング予算やメディア予算に占めるインフルエンサーへの投資の割合がますます大きくなっている。そんないま、TikTok(ティックトック)のパーソナリティーやポッドキャストのホストなど、さまざまなプラットフォームを股にかけて現れる、いくつかのタイプのインフルエンサーの違いを掘り下げることには、それなりに意味があるのではないだろうか。インフルエンサーの世界に確かなことがひとつあるとするなら、そこにはすべてに通用する万能型のモデルなどないということだ。インフルエンサーマーケティングエージェンシー、ビリオン・ダラー・ボーイ(Billion Dollar Boy)の共同創業者兼CEOのトーマス・ウォルターズ氏は、「クリエイターエコノミーが進化するにつれて、我々はコンテンツクリエイターの細分化がさらに進むさまを目の当たりにするようになった」と語る。「インフルエンサーはいたるところにいる。それがソーシャルメディアであれ、ブログであれ、ライブストリームであれ、オーディオであれ、さまざまなコンテンツ形式において姿を見せている」2019年以降、世界のインフルエンサーマーケティング支出は3倍以上になっている。スタティスタ(Statista)によれば、2024年には、その額は空前の240億ドル(約3兆5194億円)に達することが見込まれているという。彼らコンテンツクリエイターは、プロダクトプレイスメントやスポンサーシップ、さらにはオーガニックコンテンツを通じて、ブランド各社のマーケティング戦略の大きな部分を占めるようになっている。事実、インスタグラム(Instagram)だけを見ても、そこにはおよそ6400万人のインフルエンサーがひしめき合っている。TikTokやYouTube、Snapでも、その数はいまなお増え続けている。コンテンツクリエイターとインフルエンサーのあいだには違いがいくつかあるという点も、注目に値する。ソーシャルコマースおよびクリエイター企業のスーパーオーディナリー(SuperOrdinary)の創業者でCEOのジュリアン・レイス氏は、「コンテンツクリエイターこそ、次世代のインフルエンサーだ」と話す。「ソーシャルメディアが進化するにつれて、その体験には単なるインフルエンス(影響)以上のものがあると、人々は認識するようになっている。こうしたインフルエンスを与えるには、そのインフルエンスの出所はオーセンティックな(本物、信頼できる)場所でなければならない。トレンドを追いかけるのではなく、人々の心に本当に訴えかけるものを見つけるのが、コンテンツクリエイターだ。彼らはこのオーセンティシティー(真実性、信頼感)を頼りに、自身に、そのコンテンツに、そして自らの成功に心から感情移入してくれるコミュニティーを見つけている」。それではここからは、エージェンシーやブランドとコラボレーションする最近のインフルエンサーの主なカテゴリーをいっしょに見ていこう。

臨場感や個人的なつながりを重視する「ライブストリーマー」

これに該当するのは、主としてストリーミングやゲーム、ライフスタイル、ソーシャルコマースなどのコンテンツで知られるコンテンツクリエイターだ。ライブ動画プラットフォーム、ビーライブ・テクノロジー(BeLive Technology)の共同創業者兼CEOケネス・タン氏によれば、それがライブショッピングであれ、自身のゲームプレイの配信であれ、どちらかというとキュレートされ「編集された、自身を投影したコンテンツ、プロモーションする製品を投影したコンテンツ」をつくっているのがインフルエンサーであるのに対して、「オーセンティックなコンテンツという通貨を糧にしている」のがライブストリーマーだという。ほかの主流のインフルエンサーに比べると、ライブストリーマーはスポンサードされていない製品をレコメンドするケースが多いが、彼らがライブショッピングで得る支持には根強いものがある。ブランドの側から見れば、YouTubeやTikTokのこうしたコンテンツには、自社のショッピングページへとユーザーを誘導してくれる効果がある。タン氏によれば、従来のインフルエンサーとライブストリーマーはどちらも異なるコンテンツとつながりをフォロワーに提供しているという。「インフルエンサーが魅力的なコンテンツやキュレートされた専門知識を提供しているのに対して、ライブストリーマーは臨場感や個人的なつながりを提供している」。レイス氏も、こうしたかたちでのオーディエンスとのつながりがあれば、ソーシャルネットワークの内外で売り上げを生むことが可能になるため、ブランド各社のあいだでライブストリーミングの人気が高まっていると述べている。「リアルタイムで話しかけたり、その人の反応を見たり、製品についての正直な感想を聞いたりといった、さまざまなことができる」と、レイス氏は語る。「ブランドとクリエイターにとっては、売り上げを生むうってつけの方法だ。これが、スーパーオーディナリーのパートナーの強力な原動力になっている。ソーシャルコマース時代のブランドにとって、ますます重要になってくるのがこれだと、我々は見ている」。

巨大なフォロワー基盤を持つ「ソーシャルメディアスター」

このカテゴリーに当てはまるのは、ソーシャルメディアを介して巨大なフォロワー基盤を築き、映画やオリジナル番組といったそのほかのプラットフォームにも進出しているTikTokスターやYouTubeスターであり、その代表格がミスタービーストやダミリオ姉妹だ。こうしたメガスターのほかにも、育児や食べものといったニッチなコンテンツを売り物にする、もっと小規模なインフルエンサー(「マイクロインフルエンサー」とも呼ばれている)やクリエイターがソーシャルメディアには何万人といる。彼らもまた、さまざまなコミュニティーへのリーチを試みているブランドにとって、さらに大きな価値を持つ存在になりつつある。「彼らはインターネットのニッチなサブセットにリーチして、ある種の目的を果たすことができる。セレブやアスリートのように、非常に大きなリーチを得ることも可能だ」と、ウォルターズ氏は語る。

ミスター・ビーストのYouTube。動画内に出てくる菓子ブランドfeastablesはミスター・ビーストが開発したもの

「マイクロインフルエンサーには一般に、1万5000〜7万5000人のフォロワーがついている。規模としては決して大きくはないオーディエンスだが、複数のプラットフォームで配信される彼らのコンテンツに、非常に高いエンゲージメントを示している。そしてこれが、各コミュニティーにおける彼らの影響力を非常に高いものにしている」とレイス氏は語る。「ちなみに、フォロワー数が1万5000人を下回っているのは、ナノインフルエンサーだ」。TikTokインフルエンサーのデマーカス・ショーンには、同プラットフォームに660万人のフォロワーがいる。「日常生活の観察」からヒントを得て、コンテンツを作成していると、本人は語る。ショーンはコロナ禍のさなかの2021年にコンテンツを作成するようになり、2022年にはTikTokブラック・トレイルブレイザー(TikTok Black Trailblazer)のひとりにも選ばれた。同氏がつくるPOV動画(point of view:あるある動画の意味)のテーマは、家族やカルチャートレンド、自身の日常生活だ。「自分が実生活のなかで目にするものを取り上げて、それをコンテンツに落とし込んでいる」とショーンは語る。レイス氏は、こうした「メガインフルエンサー」には通常、複数のプラットフォームに500万人超のフォロワーがついていると話す。ブランドとメガインフルエンサーがどのようなかたちで絡むのかは、そのファンベースがどこで築かれたのかが決め手になるという。「たとえば、GRWM(get ready with me:私と一緒に準備しよう)コンテンツなどのVlogでファンベースを築いたユーチューバーが、いまではTikTokで爆発的な人気を獲得している例もある」と、レイス氏は語る。「ソーシャルコミュニティーで一定の認知度を誇っているという意味では、クリエイターもセレブのような存在だが、追いかけている対象にはるかに近づきやすいのは、クリエイターのフォロワーの方だ」。

素の自分や見解を共有するコメンテーター、評論家

このカテゴリーのインフルエンサーの代表格は、ジョー・ローガンをはじめとするパーソナリティーだ。ローガンには、Spotify(スポティファイ)とYouTube(複数のタイプのインフルエンサーに当てはまる最良のプラットフォームのひとつ)に数百万人のフォロワーがいる。このカテゴリーのインフルエンサーにはほかに、政治や文化、スポーツなどのコメンテーターもおり、彼らが利用するフォーマットは、YouTube動画だけでなく、SubstackやMediumのニュースレター、ブログといった文書コンテンツなど、さまざまだ。

ジョー・ローガンのSpontifyアカウント

たとえば、Substackクリエイターには、人気ファッションコンテンツハブ「ザ・シリアル・アイル(The Cereal Aisle)」(サブスクライバー数:10万人超)のリアンドラ・メディンや、「マガジン(Magasin)」(サブスクライバー数:2万人超)のローラ・ライリーなどがいる。

リアンドラ・メディンのインスタグラム。Substackの「ザ・シリアル・アイル」も人気だ。

ポッドキャストもまた、オーディオコンテンツを介してブランドがインフルエンサーと絡める主な方法のひとつだ。レイス氏はその一例として、ポッドキャスターのアレックス・クーパーと、同氏がSpotifyで配信する番組「コール・ハー・ダディー(Call Her Daddy)」を挙げた。同番組は最近、そのほかのサービスでの成長に合わせて、Apple PodcastsとiHeartPodcasts、Amazon Musicへの進出も果たしている。クーパーは以前、Spotifyと6000万ドル(約88億円)で3年間の独占契約を結んでいた。

アレックス・クーパーのSpotify番組「コール・ハー・ダディー」

エージェンシーのNPデジタル(NP Digital)は、ポッドキャスターを次のように定義している。「ストーリーテリングやインタビュー、ディスカッションなど、さまざまな話題に関するオーディオコンテンツ(場合によってはビジュアルコンテンツ)を制作するホスト。制作されたコンテンツは、SpotifyやApple Podcasts、Google Podcastsなどのプラットフォームを通じて配信される」。「リスナーはポッドキャスターと親しい絆を築く」とレイス氏は語る。「ポッドキャスターはリスナーと毎週、自分の正直な意見や素の自分、ポップカルチャーやニュースに関する自身の見解を共有している」。「ポッドキャスターは長尺コンテンツに対する需要も満たしている。コメント系インフルエンサーの傑出したサブカテゴリーが、彼らポッドキャスターだ」とウォルターズ氏は語る。「我々はいま、多くのインフルエンサーがポッドキャストで成果を上げるところを目の当たりにしている。長時間、進んで注意を向けてくれるオーディエンスとのつながりを深めるために、多くのソーシャルメディアインフルエンサーがポッドキャストに目を向けている」。

ソーシャルメディアを積極的に利用するセレブや大スター

ハリウッドの大スターやセレブがこのカテゴリーに当てはまる。ただし、これはあまりにもわかりきったことかもしれない。彼らは何10年も前から広告に出ているのだから。舞台裏の様子を収めたソーシャルコンテンツを作成したり、率直な生の声を投稿したりなど、セレブやアスリートなどの著名人も、ここ最近はソーシャルメディアプラットフォームを利用して、ファンとつながるようになっている。このタイプのスターの代表格には、ベテラン勢では、TikTokのフォロワー数が7400万人を超えるザ・ロックがいる。新しいところでは、インスタグラムのフォロワー数が約400万人を数える陸上競技のスター選手シャカリ・リチャードソンだ。ソーシャルメディアのフォロワー数でリーグのトップを走るWNBAの新人、エンジェル・リースなどがいる。

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ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンのTikTok。スキンケアブランド「Papatui」も立ち上げた。

セレブ系インフルエンサーの代表格はほかに、女優のセレーナ・ゴメス、リアリティーTVのスターであるカイリー・ジェンナー。サッカーのスター選手クリスティアーノ・ロナウドなどがいる。彼らにはそれぞれ、ソーシャルプラットフォーム全体に数億人規模のフォロワーがついている。

セレーナ・ゴメスのインスタグラム。セレーナはコスメブランド「レアビューティー」を立ち上げた

クリエイターIQ(CreatorIQ)のマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ブリット・スター氏は、「最新プロジェクトのプロモーションや、ファッションショーへの出演、ブランドとのコラボレーションの宣伝など、コンテンツの内容はさまざまだが、このカテゴリーのインフルエンサーが、どのソーシャルメディアプラットフォームにもますます精通しつつあることは確かだ」。

B2Bエキスパート、特定分野の専門家

このタイプのクリエイターに該当するのは、特定の分野の専門知識を持っているB2Bインフルエンサーだ。彼らは、LinkedIn(リンクトイン)やニュースレターなどのプラットフォームで、教育系や起業系、専門職系のコンテンツを制作している。彼らがいま特に人気を集めているプラットフォームはLinkedInで、そこを舞台に、CEOや研究者などが自身の専門分野のインサイトをフォロワーと共有しているとウォルターズ氏は述べる。「看護や教育、医療などのキャリアに関する投稿を行っている企業関係や仕事関係のインフルエンサーも、成長著しい大きなサブカテゴリーとして、B2Bインフルエンサーの大きな一角を占めている」と同氏は語る。レイス氏はこう語る。「ソートリーダーには、一般に教育や自らが選んだ分野を通して獲得した専門知識が備わっている。そのためそこには、ほかにはない、フォロワーの厚い信頼がある。これはまた、彼らがブランドとの取引に極端に選択的にならざるを得ないということでもある」。ブランドはソーシャルメディアにおけるプレゼンスの拡大を求めるようになっており、これを受けて、このカテゴリーにも関心が集まっていると、レイス氏は述べる。「スーパーオーディナリーにも、ソーシャルメディアを活用してビジネスのプロモーションを行っている起業家がいる。フォロワーとのオーガニックな関係を築くことで、これを行っている。たとえば、TikTokユーザーのストロベリー・ミルク・モブは、自身のスイムウェアラインでこれをうまく行っている」。[原文:Breaking down influencer marketing, from Joe Rogan to Selena Gomez to MrBeast]Antoinette Siu(翻訳:ガリレオ、編集:戸田美子)Image via Spotify/Alex Cooper's Call Her Daddy