【萩原 文博】レクサスLXを盗難された都内在住男性の慟哭…史上最悪の窃盗ツール「ゲームボーイ」を使った驚きの手口
近年、自動車盗難の検挙率が増加している
最近、テレビやSNSなどで車両盗難のニュースを目にすることが非常に多い。警察庁生活安全企画課が、2024年3月に発表した自動車盗難等の発生状況についてというリポートによると、2023年の車両盗難の認知件数は、5,762件。ピークだった2003年の6万4223件と比較すると、1割以下となっている。その一方で、検挙率は2003年の18.6％から2023年は42.7％と大幅にアップしているのだ。
2023年における車両盗難の都道府県別認知件数を見ると、千葉県、愛知県、埼玉県、茨城県、神奈川県で全体の55.6％を閉めており、大都市圏での犯罪が多いことがわかる。これは大都市圏には人気の高級車が多いということも関連している。
さらに車名別の盗難台数を見てみると、2023年の第1位はトヨタアルファード。第2位はトヨタランドクルーザー、第3位はトヨタプリウス、第4位がレクサスLX、第5位はトヨタハイエースで、上位10台に8台もトヨタ車（レクサスを含む）がラインクインしており、人気の高さが窺える。
（注：盗難台数とは、盗難等車両手配がなされた車名が明らかな車両であり、未遂などを含まれないため、犯罪統計における自動車盗難認知件数とは異なる。また小型トラック、中型トラック、大型トラックは含まない数字）
なかでも上位5車種は日本だけでなく、世界でも人気の高い車種。それゆえ車両盗難が多くなるのだろう。しかし、2021年に登場したトヨタランドクルーザーの最新モデルであるランドクルーザー300や2022年に登場したレクサスLXはセキュリティ強化のために指紋認証機能が装着されているにもかかわらず、車両盗難が多発しているのだ。そこで、今回は実際に起きた車両盗難について紹介する。
巧妙な車の盗難方法とは
ある朝、私のSNSに「クルマを盗まれました」というメッセージが届いた。急いで返信すると、なんとセキュリティ強化のために指紋認証機能が装着されているレクサスLXが盗難にあったというのだ。
レクサスLXが車両盗難にあったHさん（捜査中のため仮名）は、リレーアタック防止のため、クルマのキーは金属製の箱にいれ、CANインベーダー対策をディーラーにおいて有償で行っていた。さらに自宅には防犯カメラも設置しており、防犯体制は万全のはずだったのだ。
犯行時間は午前12時50分〜午前1時10分ごろで、まだ最終電車で帰宅する人がいる時間。犯人グループは防犯カメラにスプレーを塗り、目隠しをしたあと、レクサスLXのキーを開けて、エンジンをかけて盗んでいったのだ。これまで、車両盗難で良く聞く、リレーアタックやCANインベーダーではない新たな方法でいとも簡単に盗んでいったというのだ。
今回の窃盗団の犯行は、これまで聴いたリレーアタックやCANインベーダーではなく、「ゲームボーイ」という機械を使用した犯行といわれている。ゲームボーイというのは、もちろん俗称で、十字キーや液晶画面を収めた機器の形が似ていることからそう呼ばれている。
ゲームボーイはクルマと直接交信して、キー情報を引き出し、純正キー同様コードのやり取りを行うというもの。つまり使用可能なキーを車体からコピーしてしまうというもの。その結果、車体側はドアロックを解除し、エンジンも始動してしまうというのだ。
このゲームボーイと呼ばれる機器は、ブルガリアの企業が開発したツールで、日本円に換算すると約350万円で、インターネットで販売されたといわれている。元々、クルマのスマートキーが故障したり、紛失した場合に、キーを複製したりするために使用されていた方法で、困ったときに役立つツールが、このゲームボーイによって車両盗難に悪用されているという状況なのだ。
このゲームボーイに対して有効なセキュリティはクリフォードや、パンテーラ、イグラなどのカーセキュリティーが有効と言われている。しかし装着するとそれなりの費用もかかり、現在品薄で装着するのに半年かかるようだ。
大事な愛車を盗まれないために
Hさんによると最近、レクサスLXやランドクルーザー300を狙った車両盗難が続発しているそうで、これは犯行グループが、対策を講じられる前に短期間で多くの車種を狙っているということかもしれない。したがって大切な愛車を守るためには屋内ガレージに置くことや、クルマを動かせないように、ほかのクルマで出入り口を塞ぐといった対策をユーザーが講じないとならない。
今回レクサスLXの盗難にあったHさんは、「指紋認証まで付いた現状考えられるトップレベルのセキュリティのレクサスLXが簡単に盗まれてしまうのだから、もう少し自動車メーカーもユーザーのことを考えて本気で車両のセキュリティに取り組んでもらいたい」と話す。
筆者も過去にホイールとシートの盗難にあったことがあるが、あるはずのものがないとすぐには現実を直視できないものだ。最近は新車だけでなく、旧車の人気が日本国内だけでなく海外でも高まっている。旧車は新車以上にセキュリティレベルが低いので、ユーザーは自己防衛して愛車を守るしかない。今回の事件は氷山の一角だが、日本の治安が相当悪くなっているということの表れだろう。
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