「音楽活動では、ソロアーティストとしてデビューしてから5年目になりました」

写真拡大

中学2年生でスカウトされたことをきっかけに、芸能界の道へと歩んできた森崎ウィンさん。2008年から12年間、ダンスボーカルユニットでメインボーカルとして活動後、2020年にアジアから世界に発信するエンターテイナー「MORISAKI WIN」名義のソロアーティストとしてデビュー。俳優としても2018年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューを果たし、2020年には映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、多岐にわたり活躍しています。そんな森崎さんが、「MORISAKI WIN LIVE TOUR 〜MODULATION〜」と題したライブを、8月と9月に東京と大阪で実施。どのようなステージになるのか、ライブへの意気込みや、これまでの歩みなどをうかがいました。(構成◎かわむらあみり 撮影◎本社 奥西義和)

【写真】「森崎ウィンとしては新たな引き出しが増える第一歩」

* * * * * * *

新たな挑戦となる東京と大阪のライブツアー

今回“MODULATION”をキーワードに、ニューアレンジやリミックスを取り入れた楽曲に加えて、変化する新たなパフォーマンスを届けるツアー「MORISAKI WIN LIVE TOUR 〜MODULATION〜」を8月31日と9月1日に東京・竹芝ニューピアホール、9月22日と23日に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで行うことになりました。

“MODULATION”という言葉は、音楽用語で転調や変調という意味。このライブでしか見られない、聴けないアレンジで、変化する楽曲の魅力を披露できればと思っています。今回新たに見せる楽曲の解釈も盛り込んでいますし、バンドメンバーにしても前のライブとは違う方にあえてお願いしていて。同じ楽曲でも、今まで弾いていたプレーヤーではないからこそ、響き方やグルーヴがちょっと変わってくるんですよね。そういうところも感じていただけたらなと。

音楽活動では、ソロアーティストとしてデビューしてから5年目になりました。変わらない目標や信念はありますが、やっぱり人間ですから、変化していくところもあります。成長していくという意味では常に変わっていくなかで、今回はさらに“変えるんだ”という意識を持って、とくに変化にフォーカスを当てたいなと。もしかしたら、今まで聴いていたバージョンのほうが好きだという人もいるかもしれませんが、新たな挑戦です。

今回の初挑戦としては、東京と大阪でそれぞれ2デイズで3公演あって、続けて2日間も自分自身のワンマンライブをやるのは初めてなんですね。そういう意味では、体力面も喉のコンディションも含めて、今から準備をしています。僕にとっても未知の領域に入るので、ちょっと怖いな、という不安はありますね。

ミュージカルと自分自身のライブの違い

2023年に発売した2枚目のアルバム「BAGGAGE」で、昨年初めて全国ツアーを行いました。全国のさまざまな場所に行けたのはすごく大きくて、その場所でライブをして、地域ごとに天気も違って、感じることもちょっと変わったりして。ツアーの前半に比べたら、後半のほうが変化している、ツアーの中で成長していくんだなととても感じました。同じ楽曲を歌っても、何度もやるからこそ、見えてくるものもある。

ツアーを経て、楽曲の成長とはこういうことなんだ、と改めて感じることがありました。生で表現していかないと、曲は変わっていかないんだなと思いますね。このツアーの前半の時は並行して主演ミュージカルもやっていたので、ずっと動き回っていました。ミュージカルでは俳優として役を通して表現しているので、僕の曲だったら歌わないだろうというアレンジの曲があります。ただ、それは逆に、森崎ウィンとしては新たな引き出しが増える第一歩でもあるので、すごく楽しいんですよね。

ミュージカルではその役として、お芝居をして歌うので、そこで突然「みなさん盛り上がってますかー!?」とMCするわけにもいかないですよね(笑)。お客さんとのコミュニケーションというよりは、僕らが作り上げてきた作品を提示する場だからです。その一方で、自分自身のライブという場所では、その日、その場にいる方とコミュニケーションを取って、どのように作り上げていくかが重要。もちろんある程度準備をして挑むのですが、よりお客さんと作っていく空間がライブだと感じます。

歌という面では、ミュージカルと僕自身の歌では、声の出し方も違っていて。役によって出す声が違うので、自分の曲では歌わない音域の低いところも、ミュージカルだとやれるきっかけにもなるんです。それで自分の曲の幅が広がったり、それこそ映像の芝居にも生かされたり。声はけっこう大事です。

初監督作は国際短編映画祭でグランプリを獲得

歌や芝居での挑戦以外にも、新たに監督にも挑みました。今年は初監督を務めたミュージュカル短編映画『せん』が、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2024」でグランプリとなるジョージ・ルーカス アワードを受賞して。さらにライブアクション部⾨ジャパン優秀賞受賞まで、夢のようだなと。僕の頭の中にある、これをやりたい、あれをやりたい、ということを全部盛り込んだ作品です。

俳優をやりながら、いつか自分でも映画を撮ってみたいと思っていました。撮る機会があるならミュージカルがいいなと思っていたら、監督業のオファーが来て。主演は女優の中尾ミエさんにお願いしました。以前『ピピン』というミュージカルでご一緒して、今作にぜひと思ったのでお声掛けするとご快諾いただき、すると賞を獲ってしまった……なので、いろいろな才能はすごくあると思います。(笑)

映画では、中尾さん演じる田舎暮らしをするおばあさんが主役です。もともと描きたかったことがけっこうあって。脚本を上田一豪さんに直談判して、お願いしました。打ち合わせ時に上田さんは、僕の生い立ちから話してみてほしい、と。

僕が幼い頃、両親は日本など海外で働いていて、小学4年生まではミャンマーでおばあちゃんと2人で住んでいました。当時を思い出しながら話しているとどんどんアイデアが出てきて。それを奇麗に脚本にしてくださって、田舎に住むおばあちゃんと離れていた家族の距離感といったものも、全部盛り込まれたストーリーになっています。原案は僕から出していますが、それを作品として各部署のプロフェッショナルの方々がまとめてくださいました。

ミャンマーに住んでいる家族やおばあちゃんはまだ映画を観ていませんが、いつも連絡は取っています。だから、賞を獲った時も連絡が来ました。受賞したというニュースをミャンマーのメディアでも取り上げでくれて。とてもありがたいですね。

<後編へつづく>