F1角田裕毅にレッドブル昇格アピールのチャンス オランダGPは天候が荒れれば大幅ジャンプアップも...
3週間の夏休みはあっという間に終わりを告げ、F1の2024年シーズンは第15戦オランダGPから後半戦に突入していく。
残りはもう10戦しかなく、今季すでに7人の勝者が生まれているチャンピオン争いがさらに激戦になっていくのと同じように、中団グループの最上位を争う戦いも激しさを増していくことが予想される。
日本とイタリアで夏休みを満喫した角田裕毅も、リフレッシュした気分でこのオランダGPに臨んでいる。
角田裕毅の速さはすでに証明済みだ photo by BOOZY
「日本は楽しかったですね。息苦しくなるくらいの湿度っていうのは知ってはいましたけど、あそこまでとは思っていませんでしたけど。でも、友だちと夏休みっぽいこともできたし、そういうことも18歳からの青春時代にできていなかったので、楽しかったです」
F1にデビューする以前からヨーロッパで過ごしてきた角田にとって、夏を日本で過ごすのは実に6年ぶりのことだった。
今年はすでに翌年の契約が決まり、レースに対する成熟度も増した。夏休みを満喫するだけの余裕がようやく持てるようになった、ということだろう。
RBは第10戦スペインGPに投入したフロアが想定どおりに機能せず、マシンは失速した。ダウンフォースは出ているものの、コーナリング中のバランス変化が想定外に大きく、そのダウンフォースを使いきることができなかったからだ。
その結果、旧型に戻して戦うことを余儀なくされた。今回のオランダGPにも、その抜本的な対策は間に合っていない。
「アップデートはありません。フロア自体は(スペインGP仕様が使えず)シーズン序盤と変わらないものなので、ライバルたちが上げてきている分だけ厳しくなっています」
角田自身は前戦ベルギーGPでマシン挙動がおかしく、詳しい調査の結果、フロアに問題があったことが判明した。
「フロアに問題があったんです。壊れていたと言うよりは、もっと複雑な問題ですね。走ってみないと直っているかどうかはわかりませんけど、今回のレースに向けていろいろと変えてはいるので、それで前回(ベルギーGP)の問題が解決するかどうかですね」
【昇格をアピールしていく唯一の術は...】とはいえ、第13戦ハンガリーGPではその旧型フロアで予選Q3に進出し、中団トップの座を掴み獲った。決勝では1ストップ作戦でアストンマーティン勢も抑えて、大逆転で9位入賞を果たした。
オランダGPの舞台ザントフォールトも、ハンガロリンクに似たコース特性である。マシンが正常に機能しさえすればQ3進出は堅いだろうと、角田は見ている。
「本来のパフォーマンスを発揮できれば、Q3には行けると思います。スパでもダニエル(・リカルド)のペースは普通によかったですし。(ベルギーGPとは違って)普通のクルマならQ3は全然問題なく行けるはずです」
今週末は決勝がドライで、路面温度は高くなるという予報。だが、金曜と土曜はずっと雨まじりで、予選が雨になる可能性も低くない。
そうなると、予選でウェットセットアップを採ってひとまず前方グリッドを取る、というギャンブルも可能になってくる。決勝がドライだとしても、ザントフォールトは非常に抜きにくいサーキットだからだ。
「土曜は一日、雨だと聞いていますので、金曜の午後にドライセッティングの確認をしなければならないと思っています。雨は雨でセッティングも難しくなって来ますが、FP3で予選に向けて合わせ込むことになると思います。
問題は、予選のセットアップをどう合わせ込むか。決勝に合わせても、ここは抜けませんからね......。とはいえ、極端に雨のセッティングにふることもできませんし」(ホンダ・折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー)
前半戦は「7.5点」と自己採点していた角田だが、後半戦は引き続き自分の実力を磨き、コース上で結果につなげて、チームのコンストラクターズランキング6位獲得をアシストすることを最大の目標に据えている。
それがレッドブルに対して、昇格をアピールしていく唯一の術(すべ)であることはわかっている。
コンスタントに結果を残していくことも大切だが、それに加えて眩しく光るところも一発見せておきたい。そういう意味では、天候で荒れた展開になりそうな今週末は大きなチャンスだ。
マシンがサーキット特性にマッチしているなら、それはなおさらだ。豪雨にたたられた昨年のオランダGPでは、アルピーヌのピエール・ガスリーが3位表彰台を獲得している。
角田に十分な実力があることは、すでに証明済みだ。今週末のオランダではマシンのポテンシャル以上の走りで、オランダの大観衆をあっと驚かせてもらいたい。レッドブルのシートを狙うのなら、角田裕毅に求められているのはそういうことだ。