【夏の甲子園決勝】ロースコア必至 関東一は今大会無失点の京都国際2年生左腕・西村一毅を攻略できるか?
低反発バット元年にふさわしく、投手を中心とした守りのチーム同士の対戦になった。どちらも二遊間の守備力はピカイチ。準決勝では関東一がセンター、京都国際がライトの好返球で走者を刺すなど外野守備にもスキがない。両チーム守り合いのロースコアの接戦が予想される。
そのなかで、この試合のキーポイントになりそうなのが関東一、京都国際の主力投手全員が投げるチェンジアップだ。
関東一の4番・高橋徹平(写真左)と京都国際の2年生左腕・西村一毅 photo by Ohtomo Yoshiyuki
関東一は準決勝で甲子園初登板の大後武尊が5回1失点の好投。6回から最速151キロ右腕の坂井遼につなぎ、準々決勝の東海大相模戦で8回1/3を1失点(自責点0)と好投した左腕の畠中鉄心を休ませることができた。
畠中の持ち味は110キロ台の緩いチェンジアップ。北陸戦、明徳義塾戦ではこの球が高めに抜けて苦しんだが、東海大相模戦では修正。本来の低めに集める投球に戻り、強力打線を手玉に取った。決勝でもチェンジアップを生かした投球が期待される。
対する京都国際は準決勝で青森山田の2年生右腕・下山大昂の緩い変化球を打ちあぐね、ストレートにも合わなくなってフライアウトを連発。5回まで2安打、無得点に抑えられた。
6回に速球派の関浩一郎に代わり、いつもの打撃に戻って逆転したが、畠中攻略へは緩い変化球への対応を見直す必要がある。ただ、普段の練習から変化球対応の練習はしており、技術より精神面の方が問題になるだろう。
関東一は試合の後半に必ず登板する坂井の疲労が気がかり。坂井は普段からカウント稼ぎやタイミングを外すために球速を落とした"抜き真っすぐ"を投げるが、準決勝ではこの球を投げる割合が多く、精度もイマイチだった。狙われれば棒球になりかねないだけに、使いどころに気をつけたい。
京都国際は、2試合連続完封を含む今大会無失点の2年生左腕・西村一毅の体力がどこまで持つか。西村の腕が遅れて来るフォームからのチェンジアップは右打者には難攻不落。高校通算61本塁打の高橋徹平、今大会12打数8安打と好調の越後駿祐、U−18日本代表候補の熊谷俊之介の3人でも攻略は容易ではない。飛田優悟、成井聡、坂本慎太郎と上位に3人並ぶ俊足の左打者が出塁し、塁上からプレッシャーをかけられるかがポイントになりそうだ。
【グラウンド状況を利用した打撃】京都国際は1回戦からエースの中崎琉生(るい)と交互に先発完投してきたが、準決勝で初めて継投。西村はリリーフで5回を投げた。決勝は順番的には西村先発だが、2年生であること、猛暑を考えると完投を求めるのは酷。中崎が先発でなるべく長く投げ、西村につなぎたいところだろう。
中崎はセンバツでは本来の投球とは違う力に頼った投球で持ち味を出せなかったが、今夏の甲子園では球速を落とし、コーナーを突く投球で好投している。ただ、中崎はチェンジアップで勝負するよりスライダーとの両サイドの幅を使って投球するタイプ。西村の方が攻略難易度は高いと思われるだけに、中崎が何イニング投げられるか。
チェンジアップは強振しては打てない。できるだけ引きつけて、逆方向に軽打する意識が必要だ。どちらのチームともそれができる打線。決勝でも背伸びせず、いつもどおりやれるか。気持ちよく打てない以上、心がけるべきはいかに出塁するかとアウトでもいかに進塁打を打つかになる。
今夏の甲子園は雨天中止がゼロ。雨が降ったのは神村学園と大社の試合ぐらいだ。地面が硬く、ゴロはいつも以上によく跳ねる。クリーンヒットは出なくても、グラウンド状況を利用した叩きつける打撃をすれば、内野安打や進塁打にはなりやすい。
チェンジアップを空振りせず、何とか当てられるか。準決勝では神村学園、青森山田(記録は投手ゴロだが、捕球していれば併殺)が守備のミスで決勝点を許したように、わずかな守りのミスが勝敗を分ける可能性が高い。高いゴロを転がせば、その可能性は高まる。ミスを誘えなくても進塁打にはなる。
どちらが多く、無駄なアウトを減らせるか。似たようなチームカラーだけに、泥臭くつなぐ意識のより高い方に勝利の女神は微笑むはずだ。