パリ五輪に出場している小久保玲央ブライアン【写真:Getty Images】

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柏時代に才能を発掘した松本拓也GKコーチが見た“教え子”小久保

 パリ五輪を戦う男子サッカーのU-23日本代表はグループリーグで3連勝を飾り、D組首位で決勝トーナメントへ進出した。

 ここまで無失点の堅守を支えているのが守護神のGK小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン/ベルギー)だ。そして、ファインセーブ連発で日本を救っているこの23歳の才能を柏レイソル時代に発掘したのがGKコーチの松本拓也氏。パリ五輪で見せる教え子の活躍について「柏レイソルでずっとやってきた部分を大事にして、しっかりと実践できている」と評価した。(取材・文=石川遼)

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 千葉県出身の小久保は柏エフォートFCから柏レイソルのユースを経て、18歳となった2019年1月にポルトガルの名門ベンフィカのU-23チームへと渡った。今夏には日本代表GK鈴木彩艶(パルマ)の後釜としてベルギーのシント=トロイデンへ移籍した。

 五輪予選を兼ねた今年4〜5月のU-23アジアカップでも優勝に貢献した小久保は、パリ五輪でここまで3試合すべてに先発フル出場。7得点0失点と堂々たる戦いぶりで準々決勝へと駒を進めたチームの最後の砦として活躍している。ピンチで見せた再三の好セーブ。現地時間7月30日に行われたパリ五輪のイスラエル戦では5本のセーブを記録するなどピンチを防ぐ活躍で1-0の勝利に貢献した。

 柏レイソルで小久保を指導してきた松本氏は小久保のイスラエル戦のパフォーマンスについて「小久保選手からすると想定内のボールがきていたという印象です。難しいシュートばかりではないと感じました。ただ、ああいった大舞台で力を発揮できるのは彼の良さだと思います」と語った。

 小久保はイスラエルの選手が放った枠内シュートに対して、しっかりとポジショニングを取り、こぼれ球を詰められないように選手のいないところへとボールを弾き返していた。似た形のピンチを何度か招いたが、そのたびに同じようにセーブを繰り返し、最後まで失点を許さなかった。松本氏は「小久保選手に限らず、中村航輔選手(ポルティモネンセ)もそうですけど、育成年代でずっとやってきた部分が身体に染み付いていて、しっかりと実戦の中で技術を発揮している」と教え子のパフォーマンスを評価した。そして、身長190センチを超える恵まれた体格を持つ小久保の一番の強みは「身体の使い方」にあるとも語っていた。

「僕が小久保選手と最初に出会ったのは小学5年生で、小学6年から1年間、週1回のGK練習をするようになりました。その時からイレギュラーなボールに対する処理の練習をしていたんですが、その部分での能力に関しては僕が見てきた(歴代の選手の)なかでも一番センスがあったと感じました。

 ボールに対して一番適切に、柔軟に身体を動かす能力というのが彼の特長。あとは手足がよく伸びる。身体の使い方がうまくて、リーチの長さを最大限生かせています。やはりイスラエル戦のハイライトで言うと、単にシュートを止めたということではなく、人のいないところに工夫して弾けていたという所が良かったと個人的には思っています」

 前回の東京五輪で日本がベスト4で敗れ、さらに2年前の親善試合でも敗れた因縁のスペインが準々決勝の相手となる。小久保にはリベンジに燃える日本をさらなる勝利に導く活躍が期待される。(石川 遼 / Ryo Ishikawa)