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 さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
 実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホで清掃員のアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、ラブホ街ならではの遊びや、少し迷惑な客に遭遇したときのエピソードを教えてくれた。

◆幼馴染の母がラブホを経営!父はサラリーマン

 ラブホ街で育った前田さん。友人のなかには、実家がラブホ経営というケースも珍しくなかった。そんな前田さんが、幼馴染のAさんの実家が経営するラブホについて話してくれた。

「Aちゃんのところのラブホは完全なる個人経営で、お母さんがオーナーでした。ちなみに、お父さんは普通の会社員。Aちゃんのお母さんは、祖父からラブホを譲り受けたそうです。そのため、老朽化が進み、これまでに2回ほど改修工事をしていました」

 1度目の修繕工事は前田さんとAちゃんが子どものころ。前田さんは当時、子どもながらに「Aちゃんが引っ越しちゃう……会えなくなっちゃう」と不安になったというが、ラブホの敷地内にあるAちゃんの自宅は変わらず、今現在もご近所さんだ。

◆“ラブホ名”を考えるのが大学時代の暇つぶしだった

 2度目の改修工事は、前田さんがラブホでバイトをしている大学時代だった。改修が近づくラブホの一室で、前田さんはAちゃんとこんな会話をした。

「名前変えるの?」(前田さん)
「うん……この際だから、おじいちゃんがつけたホテル名も変えようかって言ってるの」(Aちゃん)

 というのも、Aちゃん家のラブホ名は、古風な平仮名の名前だったのだ。

 当時の前田さんたちは、周りに遊ぶ場所がない田舎の女子大生。遊び感覚で“ラブホ名”を考えてみることになった。

「ビバ・桃源郷(シャングリラ)」、「ホテル ナマステ」、アリバイに使えそうな「ホテル 実家」、「ホテル ラストエンペラー」、「ホテル 天国と地獄」などなど。

「どれも、悪ノリで話していたネーミングです。Aちゃんはお母さんに提案したらしいのですが、当たり前にボツになりました……」

 結局、Aちゃんの家のラブホ名は、現在も祖父が決めた名前で経営しているということだ。

◆幽霊に遭遇するほうがマシ?

「久々に遭遇したわー」

 部屋の掃除を終え、事務所に戻ってきた先輩のアルバイトが放った一言だ。

「遭遇って……まさか、“幽霊”じゃないよな……と思って尋ねると、“そっちのほうがよいかもね〜。思いっきり悲鳴をあげられるから”と返ってきました」

 このときの前田さんはまだ知らなかったのだが、後に遭遇してしまうことになる。趣味は人それぞれだが……。

「定期的に現れるんです。それは、“露出”が好きな個人のお客様、もしくは、そういうプレイが好きなカップルです」

 前田さんは2度も遭遇したことがあったという。1人目は、「お茶をこぼしてしまったので、拭く物を追加でください」という丁寧なコールだった。前田さんがバイトしていたラブホは、部屋の出入り口を開けると棚とインターフォン、下駄箱がある。通常はルームサービスや頼まれたものは、棚に置いてインターフォンで知らせて去るというかたちだ。

 つまり、従業員と客がお互いにできるだけ顔を合わせない仕組みになっている。

「二重ドアになっているのに、扉を開けると、目の前に一糸纏わぬ姿の男性が仁王立ちしていたんです……」

「ぎゃーーー!」

 前田さんは“心の中で”悲鳴をあげた。男性は「やあ、ありがとう! 早かったね」と言いながら、前田さんの手からダスターを受け取り、部屋に戻ってしまった。