「鍛え上げられたマッチョな男性でした。いや、そんなことはどうでもいいですよね……。遭遇しても悲鳴があげられないのはこれか、と思いましたね。たぶん、他人に裸を見られたい人なんでしょう」

 階段を駆け下り、事務所へ到着するなり、「出たーー! 遭遇したーー」と叫んだ前田さん。これが前田さんにとっての初遭遇だった。

◆想像以上のプレイを楽しむカップル

 2人目は、“少し迷惑だな”と感じるカップルだったそうだ。前田さんが働いていたラブホでは、客が外出するときはフロントに知らせてもらうことになっており、知らせずに外出すると、それが分かる仕組みになっている。

「あれ……408号室、部屋から出たみたい。ちょっとコールしてみるね」

 オーナーが内線電話を掛けるが反応はない。しばらく様子を見るも、フロントを通る気配もなかった。「悪いけど、見て来てくれる?」と指示された前田さんは、マスターキーを持って4階へと急いだ。すると、エレベーターの扉が開くと、誰もいない廊下に人影を発見。

「え? 開かない……やだ〜」と、ドアノブをガチャガチャしているカップルがいたという。

 前田さんが、「やっぱり締め出されたんだ……」と思いながら近づくと、全裸で首輪にリードを付けた女性と、全裸でスマホを持った男性がいた。

「私は、言葉を交わすことも目も合わすこともせず、鍵だけを開けて無言で立ち去りました。どうやら、廊下でそういうプレイにふけり、撮影をしようとしていたのでしょう」

 事務所に戻ってから「遭遇したー!」と叫んだのは言うまでもない。

「これまでラブホで“ホンモノ”の幽霊に遭遇したことはありませんが、幽霊と遭遇するほうがマシかもしれませんね……」

<取材・文/資産もとお>

―[ラブホの珍エピソード]―